肝臓がんの治療法として行う「全身化学療法(点滴や経口の抗がん剤を使った治療)は、手術とは異なり、開腹する処置が不要です。また、治療時には麻酔も必要ありません。
他の治療法とは違って全身が対象になるため、もし抗がん剤に効果があれば、他の場所に転移したがんも治療することができることがメリットだとえいます。
いっぽう、問題点は次のとおりです。
問題点
①治療の有効性が低い
全身化学療法では、いまのところ高い治療効果が望めるのは5~10人に1人です(奏功率10~20パーセント)。
②肝機能が低下する
前述したように、化学療法によって肝機能が低下するおそれがあります。そのため、がんが転移していてほかに治療の選択肢がないときでも、肝臓の障害度が高いときには、化学療法を受けることはできません。
③副作用が強い
化学療法には副作用があります。支持療法によって、副作用をある程度抑えることはできるものの、完全になくすことは困難です。そのため、患者の体が予想される副作用に耐えられる状態でなければ、この治療を行うことはできません。
④治療期間が長い
化学療法には、少なくとも1カ月の治療期間が必要です。ふつうは半年~1年かかると考えなくてはなりません。
肝細胞がんの場合、化学療法の対象となる患者は、全身状態が悪かったり、肝機能が低下していることが少なくありません。そこで、治療期間中は、深刻な副作用が生じたらすぐに対処できるように、少なくとも最初の期間は入院する必要もあります。
以上の観点から、化学療法は患者の精神的負担が大きくなりがちです。そのため、周囲の人々の精神的な支えがたいへん重要になります。
生存率
全身化学療法を受ける患者は、もともと病期が進んでいることもあり、予後は不良です。1年生存率は20~30パーセント、2年生存率は10パーセント以下です。