子宮頸がん、子宮体がんの手術は、からだにも精神的にも大きなダメージを受けることになります。手術自体に要する時間も長時間になります(子宮全摘術だけなら1.5~2時間、子宮を広汎性に切除し、骨盤リンパ節を郭清(切除)すると5~6時間、子宮を切除し、骨盤並びに傍大動脈リンパ節を郭情すると6~8時間)。
そこで必ず手術前には全身状態を検査します。体力や年齢、体調をふまえて手術に耐えられるかどうか判断するのはもちろん、術後の合併症を予測したり、予防をするために手術に必要な検査(手術前検査)をしたりします。
具体的には肝機能、腎機能、血液検査、尿検査、感染症や炎症の有無のほか、血液型、胸部X線、心電図は必須です。このほかに、肺機能や足の「深部静脈血栓症」の有無についても必須な検査です。
足の静脈血栓症の予防
手術が決まると、"手術に向けて体力をつけなければ"と考える人が多いですが、最近の日本女性の場合は、むしろ手術に向けて体重を落とすためのウエイトコントロールが必要である場合が多いのが実情です。
欧米では、以前から手術後の足の静脈血栓が重大な術後合併症でした。欧米では婦人科のがん根治手術後、静脈血栓症は3%に起き、死亡ないし重大な後遺症を招く確率も1%(血栓が肺動脈に飛んで、重大な呼吸循環障害を起こす頻度)です。
最近の日本女性は栄養過多の傾向があり、今や手術後の足の深部静脈血栓症は1%くらいにおき、予防処置をきちんとしなければ、その約半数(全体の0.5%)には、重大な呼吸循環障害(死に至るか後遺症を残す)を招く恐れがあります。
医師からはまず摂取カロリーを減らし、体重を少しでも落とすことが勧められます。そして、あらかじめ足の静脈に血栓ができていないかを症状の有無に関わらず検査し、すでに血栓ができていれば、術前に抗凝固薬のヘパリンで治療してから手術に臨みます。
血栓ができていない場合には、手術以後に血栓ができないように、低分子へパリンを術後24時間から術後9日目まで朝夕2回皮下注射して予防します。
以上、子宮がんの検査に関する解説でした。