食道がんのステージ別5年生存率
日本食道学会の統計によると、日本における食道がん切除例全体の5年生存率は約46.6%です。これはそのステージ(進行度)によって大きく異なります。
食道がんが粘膜内にとどまっていて、リンパ節転移のないような早い段階(ステージ0)では、5年生存率は82.3%と高率です(これはがんの再発以外で亡くなった人も含まれた統計です)。
進行が進めば進むほど生存率は低くなり、ステージⅣa期の5年生存率は約16.5%で、Ⅳb期の5年生存率は0%でした。集学的治療といって複数の治療を組み合わせて行うことによって治療成績が改善しているとはいえ、食道がんはいまだに"たちの悪い"悪性度の高いがんといえるでしょう。
また、生存率を左右するのは再発の有無です。初期治療で手術や放射線治療ができた場合でも再発することで治療の選択肢も狭くなり生存率も悪化してしまいます。
食道がんの再発が起こる理由
がんが、粘膜層より食道壁の深部に浸潤していくとき、胃壁にある血管やリンパ管にも入り込みます。そして、がん細胞は、この血管やリンパ管を通って、さらに全身に広がっていきます。
がんの転移診断についてはさまざまな検査を駆使してその把握に努めます。しかし、画像診断では目に見えない細胞レベルの転移を診断することはできません。
このような治療前に診断できなかったがん細胞が、治療後に出現してくる現象を「再発」といいます。つまり、手術で肉眼的に見えるがんをすべて取り切っても、肉眼では見えなかった「がんの芽」があとから大きくなってくることがあるのです。
再発を予防するために、食道がんの手術では、がん細胞が潜んでいる可能性がある範囲のリンパ節を郭清(切除)したり、手術前後に化学療法を行って、残っている可能性のあるがん細胞を退治したりします。それでも生き残ったがん細胞がいると、それが徐々に大きくなってきて再発を起こすのです。
食道がんの再発の時期と場所
・再発のほとんどが手術後5年以内
食道がんの再発時期や再発の場所は予測できるものではありません。ただし、今までのデータを分析すると、再発の見つかりやすい時期というのがあります。
再発した食道がんの全体の傾向としては、約80%以上の人が手術後2年以内に再発していることがわかっています。また、頻度は低いですが5年以上たってから再発する人もいます。ただし、5年以降の再発は一般的には少ないため、5年を一応の目安として「5年生存率」をがんが治癒した指標としているのです。
・再発の起きやすい場所
食道がんの再発が起きやすい場所としては、局所(もとの食道がんがあったところ)やリンパ節です。また、肺や肝臓、脳、骨、皮膚などにも見られます。胸膜、腹膜には播種性再発することもあります。
再発した食道がんの治療
再発した食道がんの治療は、その再発部位や再発個数などの状況によって変わってきます。頻度は少ないのですが、再発が限られた場所にとどまっていて、手術で切除が可能な場合は手術を行うこともあります。
がんが完全に取り切れない場合や、ほかの場所にもある可能性が高い場合は、患者さんの体力を見ながら化学療法(抗がん剤治療)を行います。また、再発したがんが限られた場所で、手術ができない場合は放射線療法を行います。
また、併行して痛みを抑えたり、食事や便通の不具合を解消するために症状を和らげる治療(緩和医療)を行います。再発した食道がんの治療は病状によって取れる対策が異なるので担当医から詳しい説明を受けて計画を立てることになります。
以上、食道がんに関する解説でした。