がん治療専門のアドバイザー、本村です。
当記事では食道がん手術後の後遺症について解説します。
食道がんの手術は身体的に大きな負担を与えます。
そのため以下のような後遺症が残る可能性があります。手術する場所や範囲によってどんな後遺症が起きるかは異なるので必ず手術前に何が起きる可能性があるのか、確認するようにしましょう。
誤嚥(ごえん)性肺炎
食道がんの手術後、一時的な反回神経麻痺による嚥下の障害や、代用食道として再建された胃からの逆流が原因で、気管に食べものや消化液が入りこみ、"むせ"が起こることがあります(誤嚥・ごえん)。
肺に感染が加わると、「誤嚥性肺炎」を起こしてしまいます。誤嚥の予防対策としては、「大きな声で発声してもらい、声帯運動のトレーニングを行う」、「水やお茶などのさらさらした流動物の摂取は避ける」、「胃からの逆流を防止するために、食後30分は座位を保つ」などを行います。
誤嚥を繰り返す場合には、耳鼻咽喉科で嚥下の評価をしたあとに、必要に応じて摂取機能の訓練を行うこともあります。
逆流性食道炎
食道を切除したあと、胸焼け症状が見られることがあります。手術の際に、胃の噴門にある逆流防止機構が失われるために、食道に胃液や胆汁などの消化液の逆流が起こります。軽い症状のときは、上半身を20度ほど高くして休みます。症状に応じて、粘膜保護薬、制酸薬、消化管運動促進薬、酵素阻害薬などの薬が使われます。
吻合部狭窄
食道切除のあと、食べものの通過が悪くなることがあります。このような場合、吻合部が瘢痕(傷跡)によって狭くなり、吻合部の内腔がドーナツ状に薄い膜が張った状態になっていることが多く、内視鏡を使ってバルーン(風船のようなもの)などで食道を物理的に拡張すると、吻合部の狭窄は改善します。現在では入院はほとんど必要なく、外来で行える処置です。
ダンピング症候群
食道を切除したあとは、これまで胃の中でかきまぜられてから、少しずつ十二指腸に流れていた食べものが、一度に急速に腸に流れ込むようになります。そのために起こるさまざまな不快な症状は「ダンピング症候群」と呼ばれます。
ダンピング症候群は、胃を切除したあとにも同様に起こります。食後30分以内にこれらの症状を起こすことが多いのですが、ほかに食後2~3時間たってから起きることもあります。
これらはインスリン(膵臓から出る血糖を下げるホルモン)が大量に分泌され、低血糖となり、起こる現象です。頭痛、冷感、動悸、めまい、脱力感などが生じ、ときには意識消失が起こることもあります。
体重減少
食道の手術後、体重の減少を心配し、「もっと食べなければ」と考える人が多いです。しかし、栄養をつけようと多量の食事を摂取しても、術後1年ほどは消化吸収力が低下しているので、栄養としては身につかず、逆に食べすぎて逆流性食道炎や腸閉塞などの原因となります。
術後1年くらいは、体重はじわじわと減るのが正常であることを理解して焦らないようにしましょう。そのあとは、だんだんと体重が増えていきます。
以上、食道がんの手術についての解説でした。