大腸がんの転移は原発が直腸なのか結腸なのかで少し傾向が異なります。直腸がんでは局所再発が多く、ついで肺、肝臓への転移が多いという統計です。S状結腸がんは肝臓転移が多く過半を占め、ついで局所再発するケースが多いといえます。S状結腸以外の結腸がんでは肝臓転移、局所再発、腹腔内転移が同じくらいだといえます。
これらがどのタイミングで起きるのかというと、局所再発の85パーセントは2年以内で、肝臓・肺転移は術後3~4年経過してからでも見られます。最近では血中のCEAの測定や肝超音波エコー、CTなどによる定期的チェックを行うことで、1990年代にくらべ数ヵ月ほど早く発見されるようになりました。
大腸がん手術後の肝臓転移
大腸がんでは肝臓転移が非常に多く、死因の過半数は肝臓転移によるものです。1990年代までは肝臓転移があればもう手段がないとされていました。
しかし、近年では肝臓の外科手術のレベルが進み、肝臓転移の進行は比較的遅いことから転移した肝臓の腫瘍を切除することが標準的な治療になっています。
肝臓へ転移した腫瘍の数が3~4個以内なら(このようなケースは少なくありません)切除して、30~5Oパーセントの人は目に見えるがんを切除できます。肝臓は再生する臓器であるため、3分の2切除しても回復することができます。
ただ、肝臓転移で手術した場合も再発のリスクは当然あります。もっとも高率(40~85パーセント)に認められるのは肝臓への再再発ですが、この場合でも手術ができる場合は手術が優先されています。
肝臓転移に対する手術以外の治療
肝臓への転移の数が数個以上になると外科的には取りきれません。このときは肝動脈に細い管(カテーテル)を入れ、それをポンプに接続して抗がん剤を持続的に長期間投与する(肝動注療法)治療法が行われています。
この方法でたまにはがんが消えてしまうこともあり、あるいは極端に小さくなってその結果、切除できないとされていたものが外科的に切除が可能になることもあります。
外科的に切除不能ケースの治療として、または外科切除後の再再発の予防を目的として、さまざまな集学的治療がなされてきましたが、その成績は治療の対象となる症例の進行度などに差があるので、厳密な意味での比較はできません。
肝臓の左右にある両葉に多数転移した症例でも、原発巣が切除できれば肝動注療法は有効だとされています。これまでに、切除不能肝臓転移に対する肝動注療法後の肝切除例は、非切除例より余命は延びることが認められています。
また、術後肝臓転移予防を目的としたフルオロウラシル(5-FU)の持続門脈注入療法が、肝臓転移再発の防止や予後向上に寄与するという報告もあり、補助療法として肝臓転移の予防および切除不能ケースの肝臓転移巣に用いられることがあります。
以上、大腸がん手術後の肝臓転移についての解説でした。