脳に発生するがんを「脳腫瘍」といいます。「脳がん」とはいいません。脳の組織から発生する原発性の脳腫瘍は30種類以上ありますが、それらを総称して脳腫瘍と呼びます。発生することが多いのは脳実質から発生する神経膠腫(グリオーマ)、胚細胞腫などです。
また、肺や肝臓など他の臓器に発生したがんが脳に転移することがあります。このように脳に転移したがんを「転移性脳腫瘍」といい、転移することを「脳転移」といいます。
なお、脳腫瘍の症状は、脳が腫瘍によって圧迫されることによる頭痛、嘔吐、視力障害などがあります。また、神経に影響することもあり、この場合は感覚異常、運動異常、言動異常などが起こります。
脳腫瘍の診断・検査方法
CT、MRI、PETなどの画像検査により、脳のどこに、どんな腫瘍があるのかを診断します。臓器のがんであれば組織を採取して病理検査をし、どんなタイプのがんなのかを顕微鏡などで確認して調べることができます。
しかし、脳は組織採取が困難な部位であり見た目や発生個所によって特徴がはっきりしていることから、画像検査からほぼ正確にがんのタイプが分かります。手術をするなど脳の腫瘍を摘出した場合は、病理検査を行います。
脳腫瘍には病理的には悪性のものと良性のものがありますが、いずれも増大するため症状が重くなります。そのため、治療上はすべて悪性として取り扱います。
脳腫瘍の標準的な治療法
原発性の脳腫瘍に対する治療としては、できるかぎり切除手術が第ーに選択されます。手術をすることで腫瘍の組織が採取でき、詳細な病理組織診断を下すことができ、後々の治療指針決定に役立つことがメリットの1つです。
しかし、手術に伴う合併症、後遺症の発生リスクが高ければすべてのがんを取り除くことなく一部分の切除に終わることもあります。このような場合、放射線療法、化学療法などの他の標準治療法をもちい様々なアプローチからがんの進行を抑えることが脳腫瘍治療の基本です。
がんのタイプにより差がありますが、すべての脳腫瘍は放射線に対する感受性があります。神経膠芽腫、星細胞腫,乏突起膠腫、上衣腫、髄芽腫、悪性リンパ腫などの悪性腫瘍のみならず、再発を繰り返す髄膜腫、頭蓋咽頭腫、下垂体腫瘍、聴神経腫瘍、脊索腫などの良性腫瘍も放射線照射の対象になります。
放射線療法のデメリットには「正常組織への放射線の影響」がありますが、最近では、放射線照射障害をできるだけ避けるための照射方法が開発されています(サイバーナイフなど)。また、小さな病巣に対して、ミリ単位の精度で病巣に集中的に放射線を照射する定位放射線外科療法(ガンマナイフなど)も脳腫瘍治療の中心的な役割を担っています。
なお化学療法(薬をつかった治療)については、脳腫瘍ではあまり活用されていません。脳に化学的な薬を送り込むのは困難だからです。胚細胞腫には化学療法が使われることがあります。
以上、脳腫瘍についての解説でした。