がん治療で行われる手術(外科治療)は、それぞれ目的があります。分類としては根治(こんじ)手術と非根治手術、診断的手術に大きく分けることができます。
a)根治手術
手術が終わった時点で、身体の中に「がんが残っていない状態」を目指す手術です。がんの手術は患者さんの臓器や器官の一部または全部を切除するとてもダメージの強い手術です。ですので「まず根治的であるかどうか」が手術をするかどうかの判断基準になるといえます。
根治ができないのなら、臓器や器官を失うことによるダメージのほうが強いといえ、手術を見送ることが一般的です。遠隔転移を起こしているステージ4や末期といわれる状態で手術ができないのはこのためです。
さて、一般的ではないですが根治的手術には2つの種類があります。「肉眼的根治手術」は、手術時に摘出されたがんや切除した組織を肉眼で観察し、「がん」が患者さんの身体に残存していないと判定されるような手術をいいます。
いっぽう「病理学的根治手術」は、手術で切除した体の組織を病理学的に観察してがんが患者の身体に残存していないと判定される手術をいいます。
b)非根治手術
手術後も身体の中にがんが残っている状態になる手術です。事前に「非根治になる」と分かっていて手術をする場合と、結果的にがんを取り残し「非根治になってしまった」という場合の2種類があります。
このうち、意図的に行う非根治手術は「姑息手術」あるいは「対症的手術」と呼ばれます。
姑息手術や対処的手術は、がんの存在が患者さんの生命に深刻な影響を及ぼしている場合(例えば腫瘍から大量出血していたり、腫瘍によって腸や器官が詰まってしまう(閉塞)など)、根治性は度外視してがんを切除することにより、一時的に「がん」患者さんの状態が改善することを目的としています。
腫瘍を切り取るだけでなく、バイパスを施したり、ステントを留置して閉塞から脱するような手術もこれに当たります。
c)診断的手術
治療目的ではなく、がんの診断をつけるために行う手術です。基本的に「この腫瘍ががんなのかどうか」は画像だけでは断定できず、細胞を調べて判断します。そのため「がんかどうか調べるために腫瘍を切り取る」という手術が行われます。
針生検(腫瘍に針を刺して細胞を採取する)などは完全に診断目的・検査目的といえます。しかし、内視鏡や開胸・開腹で組織を切除するときは、がんと疑わしき腫瘍そのものを切り取ることになります。ですので診断目的でもありながら、治療の目的も備えているといえます。
このように手術には様々な目的があります。「手術ができれば治る」などと考えず、何のための手術なのかを明確に理解しておくことがとても大切です。
以上、がんの手術についての解説でした。