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07.乳がん

2025年最新 乳がん治療の最前線:ステージ別新薬と治療法のすべてを解説


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はじめに:個別化する乳がん治療の現在地

2025年、乳がん治療はかつてないほどの個別化の時代を迎えています。かつて「乳がん」という一つの病名のもとに画一的な治療が行われていた時代は終わりを告げ、現在では治療方針を決定するために二つの重要な羅針盤が用いられます。

一つは、がんがどの程度広がっているかを示す「ステージ(病期)」、もう一つは、がん細胞そのものが持つ個性、すなわち「サブタイプ」です。

この二つの要素を精密に組み合わせることで、一人ひとりの患者さんにとって最も効果が期待でき、かつ身体への負担を最小限に抑える治療戦略が標準治療に基づき選択されます。

なお標準治療とは、現時点で最も優れた効果が科学的に証明されている治療法を指し、新しい臨床試験の結果や新薬の登場によって日々更新され続けています。

特に2025年は、治療の考え方そのものが大きく転換する年といえます。進行した乳がんにおいても、目標は単に延命するだけでなく、生活の質(QOL)を高く維持しながらがんと「共存」することへとシフトしています。これを可能にしているのが、がん細胞の特定の分子だけを狙い撃ちする新薬の登場や、手術・放射線治療における低侵襲化の進展です。

しかし、この治療の高度化・複雑化は、医療者にとっては常に最新の知見を学び続けることを、そして患者さんにとってはご自身の病状と治療選択肢を深く理解することの重要性を一層高めています。

この記事では専門家の視点から、2025年現在の最新かつ包括的な情報を提供します。

第1部:あなたの乳がんを理解する ー ステージとサブタイプの基礎知識

乳がんの診断を受けると、医師から「ステージ」や「サブタイプ」といった言葉を耳にします。これらは、今後の治療方針を決定づけるための最も重要な情報です。ここでは、その基本的な意味を解説します。

1-1. 治療の地図となる「ステージ(病期)」とは?

ステージ(病期)とは、がんがどの程度進行しているかを示す分類で、いわば治療という旅路における「地図」のようなものです。がんがどこにあり、どのくらいの大きさで、どこまで広がっているのかを客観的に示すことで、治療のゴール(根治を目指すのか、がんと共存するのか)と、そこへ至るための最適なルート(治療法)が明らかになります。

乳がんのステージは、国際的に用いられている「TNM分類」に基づいて決定されます。

TNM分類の解説

  • T因子 (Tumor):原発巣である乳房のしこりの大きさや広がり具合を示します。がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっている状態を「非浸潤がん」、乳管の壁を破って外に広がっている状態を「浸潤がん」と呼びます。
  • N因子 (Node):乳房に最も近いリンパ節である、わきの下(腋窩)のリンパ節への転移の有無や、転移しているリンパ節の個数を示します。
  • M因子 (Metastasis):骨、肺、肝臓、脳など、乳房から離れた臓器への転移(遠隔転移)の有無を示します。

これらT・N・Mの3つの因子の組み合わせによって、乳がんのステージは0期からIV期までの段階に分類されます。

ステージ分類

  • ステージ0:非浸潤がん。がんが乳管や小葉の中にとどまっている、ごく早期の状態です。
  • ステージI:早期乳がんに分類され、しこりの大きさが2cm以下で、リンパ節への転移がない状態です。
  • ステージII:しこりが2cmを超え5cm以下であるか、大きさに関わらずわきの下のリンパ節に転移が見られる状態です。
  • ステージIII:がんはさらに大きくなるか、わきの下のリンパ節に広範囲に転移している状態(局所進行乳がん)です。
  • ステージIV:乳房から離れた他の臓器へ遠隔転移がある状態です。

1-2. がんの個性を見極める「サブタイプ」とは?

ステージががんの「広がり」を示す地図であるならば、サブタイプはがん細胞そのものが持つ「個性」や「性格」を示すものです。同じステージの乳がんであっても、サブタイプが異なれば、増殖する速さや再発のしやすさ、そして何より薬の効き方が全く異なります。そのため、サブタイプの診断は、薬物療法を選択する上で極めて重要です。

サブタイプは、がん細胞の表面や核にある特定のタンパク質(バイオマーカー)を調べることで分類されます。

主要なバイオマーカー

  • ホルモン受容体 (HR):がん細胞の増殖に女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を必要とするかどうかを示します。この受容体を持つがんは「ホルモン受容体陽性」と呼ばれ、ホルモンの働きを抑えるホルモン療法が有効です。
  • HER2 (ハーツー) タンパク質:細胞の増殖に関わるスイッチのようなタンパク質です。このタンパク質が異常に多い「HER2陽性」のがんは増殖が速い傾向にありますが、HER2を標的とする分子標的薬が劇的な効果を発揮します。
  • Ki67 (ケーアイろくじゅうなな):がん細胞の増殖能力の高さを示す指標です。この数値が高いほど、がんが増えるスピードが速いと判断されます。

これらのバイオマーカーの組み合わせにより、乳がんは主に以下のサブタイプに分類されます。

サブタイプ分類

  • ルミナルA型:ホルモン受容体陽性、HER2陰性で、Ki67が低いタイプ。比較的おとなしい性質で、ホルモン療法がよく効きます。
  • ルミナルB型:ルミナルA型と同じくホルモン受容体陽性、HER2陰性ですが、Ki67が高いタイプ。または、ホルモン受容体とHER2の両方が陽性のタイプ。A型より増殖が速いため、ホルモン療法に加えて化学療法(抗がん剤)が必要になることが多いです。
  • HER2陽性型:ホルモン受容体は陰性で、HER2が陽性のタイプ。増殖は速いですが、抗HER2薬という特効薬があります。
  • トリプルネガティブ型:ホルモン受容体もHER2も陰性のタイプ。ホルモン療法や抗HER2薬が効かないため、治療の主体は化学療法となります。

近年、このサブタイプ分類の境界線は、治療の進歩によって変化しつつあります。特に画期的なのは「HER2低発現」という新しい概念の登場です。

従来、HER2の発現が少ないがんは一括りに「HER2陰性」とされていました。

しかし、エンハーツという新しいタイプの抗HER2薬が、HER2の発現がわずかでもある「HER2低発現」のがんにも高い効果を示すことが証明されたのです。

HER2陰性と診断された乳がんの約6割がこのHER2低発現に該当するとされ、これまでホルモン療法や化学療法しか選択肢がなかった多くの患者さんにとって、新たな治療の道が開かれました。

さらに2025年には「HER2超低発現」という、さらに発現の少ないがんにもエンハーツの有効性が示され、適応が拡大しました。

これは、治療が単に標的の有無だけでなく、その「量」にも着目する、より精密な段階に入ったことを示しており、診断における病理医の役割の重要性を一層高めています。


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第2部:【ステージ別】2025年の標準治療と最新動向

乳がんの治療は、前述のステージとサブタイプに基づき、手術、放射線治療、薬物療法を組み合わせて行われます。ここではステージごとに、2025年現在の標準的な治療法と最新の進歩について解説します。

2-1. ステージ0〜I期(早期乳がん):根治を目指すための治療戦略

この段階の乳がんは、がんが乳房内にとどまっているか、ごくわずかにしか広がっていないため、治療の最大の目標は「根治」です。適切な治療により、5年生存率は99%を超え、非常に良好な予後が期待できます。

治療の中心は手術療法です。

手術療法

手術の選択肢は大きく二つあります。一つは、しこりとその周囲だけを切除し、乳房を残す「乳房部分切除術(温存手術)」。もう一つは、乳房をすべて切除する「乳房全切除術」です。温存手術の場合は、残した乳房内での再発を防ぐために、術後に放射線治療を行うのが標準です。全切除した場合でも、インプラントや自家組織を用いた乳房再建を同時に行うことが可能です。

手術における近年の大きな進歩は、わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)の扱い方にあります。

  • センチネルリンパ節生検 (SLNB):かつては予防的に腋窩リンパ節をすべて切除(郭清)していましたが、術後の腕のむくみ(リンパ浮腫)などの後遺症が大きな問題でした。SLNBは、がん細胞が最初にたどり着く「見張り役」のリンパ節だけを特定して摘出し、そこに転移がなければ郭清を省略する手法です。これにより、多くの患者さんがリンパ浮腫のリスクを回避できるようになりました。
  • 腋窩リンパ節郭清のさらなる省略:ACOSOG Z0011という画期的な臨床試験の結果、SLNBで1〜2個の転移が見つかった場合でも、「乳房温存手術+術後全乳房照射」などの特定の条件を満たせば、追加の郭清を省略しても生存率に差がないことが証明されました。これは、手術後の放射線治療や薬物療法が、残存する可能性のある微小ながんを十分にコントロールできることを示唆しています。
  • センチネルリンパ節生検自体の省略:そして2025年、治療の低侵襲化はさらに一歩進みました。米国臨床腫瘍学会(ASCO)は新たなガイドラインを発表し、50歳以上で閉経後、腫瘍が2cm以下のホルモン受容体陽性/HER2陰性といった、再発リスクが極めて低いと判断される特定の患者群においては、SLNBそのものを省略できる可能性があると提言しました。この流れは、治療による利益と不利益を慎重に衡量し、患者の長期的なQOLを最優先する現代の乳がん治療の思想を象徴しています。

術後補助療法

手術で目に見えるがんを取り除いた後も、画像検査では捉えきれない微小ながん細胞が体内に残っている可能性があります。これが将来の再発の原因となるため、サブタイプに応じた薬物療法(ホルモン療法、化学療法、分子標的薬など)を行い、再発のリスクを低減させます。

2-2. ステージII〜III期(局所進行乳がん):

ステージII〜III期は、がんが乳房やその近くのリンパ節に比較的大きく広がっていますが、まだ遠隔転移はない状態です。この段階でも治療目標は根治ですが、手術だけでは不十分なため、手術、放射線治療、薬物療法を組み合わせた「集学的治療」が行われます。

術前薬物療法

このステージでは、手術の前に薬物療法を行う「術前薬物療法」が標準的な選択肢の一つです。これには二つの大きな目的があります。第一に、大きなしこりを小さくすることで、乳房を温存する手術が可能になったり、より安全にがんを取り切れるようにすることです。第二に、その薬が患者さんのがんに対してどの程度効果があるかを直接確認できる点です。もし効果が不十分であれば、手術後に使用する薬を変更するなど、より効果的な治療戦略を立てるための貴重な情報が得られます。

放射線治療の進化「寡分割照射」

術後の放射線治療も重要な役割を担いますが、患者さんの負担軽減に向けた進化が見られます。それが「寡分割照射」です。

これは、1回あたりの放射線量を少し増やし、その分、照射の総回数を減らす方法です。従来の標準的な照射が約5週間(25回)かかっていたのに対し、寡分割照射では約3週間(16回)程度に短縮されます。

複数の大規模な臨床試験によって、この方法が従来の長期間の照射と同等の治療効果と安全性を保つことが証明されており、日本乳癌学会の診療ガイドラインでも標準治療の一つとして推奨されています。

これにより、患者さんの通院負担や身体的・経済的負担が大幅に軽減されるようになりました。

2-3. ステージIV期(転移・再発乳がん):

ステージIVは、がんが骨や肺、肝臓などの遠隔臓器に転移している状態を指します。この段階では、がんを完全に体からなくすこと(根治)は難しい場合が多くなります。しかし、これは治療法がないという意味ではありません。

治療の目標は「根治」から「共存」へと大きく転換します。すなわち、薬物療法を駆使してがんの進行をできるだけ長くコントロールし、転移による痛みなどの症状を和らげ、QOLを維持・向上させながら、穏やかな日常を一日でも長く続けることが最優先の目標となります。

治療の主軸は、全身に行き渡る薬物療法です。一方で、骨転移による強い痛みや、脳転移による麻痺などの症状がある場合には、その症状を緩和するために放射線治療や手術といった局所療法が重要な役割を果たします。

第3部:治療を大きく変える新薬の登場 ー 2024-2025年

2024年から2025年にかけて、乳がん治療、特に薬物療法の分野では大きな進歩がありました。その中心にあるのが「抗体薬物複合体(ADC)」と呼ばれる新しいタイプの薬剤です。

3-1. 抗体薬物複合体(ADC)が拓く新時代

ADCは、がん細胞の表面にある特定の目印(抗原)にだけ結合する「抗体」と、強力な殺細胞作用を持つ「化学療法薬(ペイロード)」を、特殊なリンカーでつないだ薬剤です。

これを「標的を狙うミサイルに強力な爆弾を搭載した薬」とイメージすると分かりやすいでしょう。抗体ががん細胞に正確にドッキングし、細胞内に取り込まれた後に化学療法薬を放出するため、正常な細胞へのダメージを最小限に抑えながら、がん細胞だけを選択的に攻撃することができます。これにより、従来の化学療法を上回る効果と、管理可能な副作用プロファイルの両立が期待されます。

HER2陽性・低発現・超低発現治療の革命:「エンハーツ」(トラスツズマブ デルクステカン)

エンハーツは、HER2を標的とするADCであり、乳がん治療の歴史を塗り替えた薬剤と言えます。

当初はHER2陽性乳がんの治療薬として開発されましたが、その真価は、これまで有効な標的治療がなかった「HER2低発現」乳がんにおいて証明されました。

2024年から2025年にかけての最も大きな進展は、DESTINY-Breast06試験の結果に基づく適応拡大です。

この試験により、エンハーツはホルモン受容体陽性で、化学療法歴のない転移・再発乳がん患者において、HER2低発現のみならず、さらに発現レベルが低い「HER2超低発現」の患者群に対しても、標準的な化学療法を上回る無増悪生存期間(PFS)の延長効果を示しました。これにより、従来はHER2陰性とされていた多くの患者が、HER2を標的とした強力な治療を受けられるようになり、治療パラダイムが根底から覆りました。2025年4月には欧州でこの適応が承認されています。

HR陽性/HER2陰性乳がんの新星:「ダトロウェイ」(ダトポタマブ デルクステカン)

ダトロウェイは、多くのがん種で発現しているTROP-2というタンパク質を標的とする新しいADCです。

この薬剤は、ホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がんの領域において、新たな標準治療となる可能性を秘めています。

2024年12月27日、日本はこの薬剤を世界で最初に承認しました。この承認は、第III相TROPION-Breast01試験の結果に基づいています。

この試験では、内分泌療法および化学療法による治療歴のある手術不能または再発の同サブタイプの患者を対象とし、ダトロウェイは医師選択の化学療法と比較して、病勢進行または死亡のリスクを37%有意に低下させ、PFSを6.9カ月(化学療法群は4.9カ月)に延長しました。

トリプルネガティブ乳がんの希望:「トロデルビ」(サシツズマブ ゴビテカン)

トロデルビもダトロウェイと同じくTROP-2を標的とするADCですが、特に治療選択肢が限られていたトリプルネガティブ乳がん(TNBC)において、その価値が証明されました。

2024年9月、日本で「手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん」を対象に承認されました。

この承認の根拠となった第III相ASCENT試験では、2種類以上の化学療法歴のあるTNBC患者において、トロデルビは医師選択の化学療法と比較して、PFS中央値を4.8カ月から1.7カ月へ、全生存期間(OS)中央値を11.8カ月から6.9カ月へと、いずれも統計学的に有意に延長しました。さらに、2025年には一次治療として化学療法と免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブとの併用療法を上回る効果を示すASCENT-04試験の結果も報告され、TNBC治療の新たな基盤となることが期待されています。

3-2. 新たな分子を標的とする治療薬

ADC以外にも、がん細胞の増殖に関わる特定のシグナル伝達経路を阻害する新しい分子標的薬が登場しています。

AKT阻害薬「トルカプ」(カピバセルチブ)

トルカプは、がんの増殖や生存に関わるAKTという酵素を阻害する薬剤です。2024年に日本で承認されたこの薬は、ホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がんの中でも、PIK3CA、AKT1、PTENといった遺伝子に特定の変異がある患者さんが対象となります。

第III相CAPItello-291試験では、内分泌療法とCDK4/6阻害薬による治療後に病勢が進行した患者を対象に、ホルモン療法薬フルベストラントとの併用で、プラセボ群と比較して病勢進行または死亡のリスクを40%低下させ、PFSを7.2カ月(プラセボ群は3.6カ月)に延長しました。これにより、ホルモン療法への耐性を獲得した患者さんに対する新たな治療選択肢が生まれました。

経口SERD薬「エラセストラント」

エラセストラントは、経口投与可能な新しいタイプのホルモン療法薬(選択的エストロゲン受容体分解薬:SERD)です。特に、ホルモン療法への耐性に関わるESR1遺伝子変異を持つ、ホルモン受容体陽性/HER2陰性の進行・再発乳がん患者さんにおいて有効性が期待されています。

第III相EMERALD試験では、CDK4/6阻害薬を含む内分泌療法後に進行した患者を対象とし、標準的な内分泌療法と比較してPFSを有意に延長しました。特にESR1遺伝子変異を有する患者群では、病勢進行または死亡のリスクを45%低下させるという顕著な効果が示されました。米国では2023年に承認されており、日本での早期導入が待たれる薬剤です。

表:【2024-2025年承認の主な乳がん新薬一覧】

薬剤名(製品名) 作用機序 対象サブタイプ/適応 主な臨床試験
ダトポタマブ デルクステカン(ダトロウェイ) 抗TROP2-ADC HR+/HER2-(化学療法歴あり) TROPION-Breast01
サシツズマブ ゴビテカン(トロデルビ) 抗TROP2-ADC トリプルネガティブ(化学療法歴あり) ASCENT
カピバセルチブ(トルカプ) AKT阻害薬 HR+/HER2-(PI3K/AKT/PTEN変異陽性) CAPItello-291
トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ) 抗HER2-ADC HR+でHER2低発現/超低発現 DESTINY-Breast06

第4部:治療と向き合うために 副作用対策

最新の治療薬は高い効果をもたらす一方で、特有の副作用も伴います。治療を安全に継続し、生活の質を保つためには、副作用を正しく理解し、適切に対処することが不可欠です。

4-1. 薬物療法の主な副作用とセルフケア

共通する副作用

多くの化学療法やADCで共通して見られる副作用には、吐き気・嘔吐、脱毛、全身の倦怠感、口内炎、骨髄抑制などがあります。

  • 吐き気・嘔吐:近年は非常に優れた制吐剤が開発されており、多くの場合コントロール可能です。
  • 脱毛:治療が終了すれば3〜6カ月で再び生えてきます。治療前に髪を短くしたり、ウィッグや帽子を準備したりすることで精神的な負担を和らげることができます。
  • 骨髄抑制:白血球、赤血球、血小板が減少し、感染しやすくなったり(好中球減少)、貧血や出血傾向が出たりします。特に37.5℃以上の発熱は「発熱性好中球減少症」という危険な状態の可能性があるため、直ちに医療機関に連絡が必要です。日常生活では、手洗いやうがい、人混みを避けるなどの感染対策が重要です。

新薬特有の副作用と注意点

  • ADC(エンハーツ、ダトロウェイ、トロデルビ)の注意点:「間質性肺疾患」
    ADCに共通する特に注意すべき重大な副作用として、間質性肺疾患が挙げられます。これは薬剤によって肺に炎症が起きるもので、時に重篤化し、死亡に至るケースも報告されています。息切れ、空咳、発熱といった初期症状を見逃さず、少しでも異変を感じたらすぐに主治医に連絡することが極めて重要です。治療中は定期的な胸部CT検査や問診で注意深く経過観察が行われます。
  • トルカプ(カピバセルチブ)の注意点:「高血糖」と「皮膚障害」
    トルカプは、その作用機序から高血糖を引き起こしやすい特徴があります。重篤な場合は糖尿病性ケトアシドーシスに至ることもあるため、治療開始前と治療中は定期的な血糖値やHbA1cの測定が必須です。口の渇き、多飲、多尿などの症状に注意し、異常があれば速やかに医療機関を受診する必要があります。また、下痢や発疹などの皮膚障害も比較的高頻度に見られます。

4-2. 手術と放射線治療のケア

  • 手術後のケア:術後の創部のケアはもちろん、腋窩リンパ節郭清を行った場合はリンパ浮腫の予防が重要です。腕を酷使しない、保湿を心がける、適度な運動を行うなどのセルフケアが推奨されます。
  • 放射線治療中のケア:照射部位の皮膚が日焼けのように赤くなったり、乾燥したりすることがあります。保湿を心がけ、刺激の少ない衣類を着用しましょう。また、照射範囲によっては食道に炎症が起き、食事がしみることもあります。その際は刺激物を避けるなどの工夫が必要です。

4-3. 治療後の生活で心がけたいこと

治療を乗り越えた後の生活も、再発予防とQOL向上のためには重要です。バランスの取れた食事、無理のない範囲での適度な運動、適切な体重管理、そして禁煙・節酒は、再発リスクを低減させることが科学的にも示されています。これらは単なる努力目標ではなく、治療の一環として捉えることが大切です。

おわりに:未来の乳がん治療への展望

2025年の乳がん治療は、ADCをはじめとする新薬の登場により、特にこれまで治療が難しかったサブタイプにおいて大きな変革を遂げました。未来の治療は、さらに個別化の精度を高める方向へと進んでいます。

その鍵を握るのが「リキッドバイオプシー」です。これは、血液などの体液を少量採取するだけで、そこに含まれるがん由来の遺伝子(ctDNA)を解析する技術です。

リキッドバイオプシーが臨床応用されれば、手術で取りきれなかった微小な残存病変の有無を術後に判定したり、薬物療法の効果をリアルタイムでモニタリングしたり、治療が効かなくなった際にその原因となる新たな遺伝子変異を迅速に特定したりすることが可能になります。これにより、より低侵襲かつダイナミックに治療戦略を最適化できる時代が到来するでしょう。

乳がん治療は、まさに日進月歩です。最も重要なことは、正確な情報に基づいてご自身の病状を理解し、主治医をはじめとする医療チームと十分に話し合い、納得のいく治療を選択することです。

 

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私(本村ユウジ)は身内をがんで亡くしてから、プロとして10年以上活動している、がん治療専門のアドバイザーです。

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