
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
肝臓がん(肝細胞がん)の治療において、薬物療法は長い間選択肢が限られていました。しかし2018年3月にレンビマ(一般名:レンバチニブメシル酸塩)が承認され、切除不能な肝細胞がんの一次治療に新たな選択肢が加わりました。
この記事では、レンビマがどのような薬なのか、効果や副作用、投与方法、費用など、患者さんが治療を考えるうえで知っておきたい情報を詳しく解説します。
肝臓がんの薬物療法とレンビマの位置付け
肝臓がん(肝細胞がん)は、他のがん種と比べて使用できる薬が少ない部位です。
肝臓内にがんが多発している場合や、肝臓外への転移がみられる場合は、肝動脈化学塞栓療法(TACE)や肝動注化学療法(TAI)といった局所治療が適応とならず、全身への薬物療法が選択されます。
2017年まで、保険で使用できる一次治療薬はネクサバール(ソラフェニブ)のみでした。2017年にスチバーガ(レゴラフェニブ)が承認されましたが、これはネクサバールを使用した後に病勢が進行した患者さん向けの二次治療薬という位置付けでした。
レンビマは2018年3月に「切除不能な肝細胞がん」の全身化学療法の一次治療薬として承認されました。ネクサバールが一次治療薬として承認されてから約9年ぶりの新たな選択肢となります。
2026年現在では、免疫チェックポイント阻害薬との併用療法なども開発が進んでおり、肝細胞がんの治療選択肢は以前と比べて広がっています。
レンビマとはどんな薬か
レンビマは「マルチキナーゼ阻害薬」と呼ばれる種類の分子標的薬です。
がん細胞は、血管内皮増殖因子(VEGF)や線維芽細胞増殖因子(FGF)などを放出することで、血管を新たに作り出し(血管新生)、栄養や酸素を取り込んで増殖します。
レンビマは、この血管新生に関わる複数の受容体(VEGFR1/2/3、FGFR1/2/3/4、PDGFRα、KIT、RETなど)を同時に阻害することで、がん細胞への栄養供給を遮断し、増殖を抑える働きがあります。
従来の抗がん剤のように直接がん細胞を攻撃するのではなく、がん細胞が増殖するための仕組みを阻害するという作用機序です。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
レンビマの対象となるがん
レンビマは肝細胞がんだけでなく、複数のがん種で承認されています。
| 対象疾患 | 投与量(1日1回) |
|---|---|
| 切除不能な肝細胞がん | 体重60kg以上:12mg 体重60kg未満:8mg |
| 根治切除不能な甲状腺がん | 24mg |
| 切除不能な胸腺がん | 24mg |
| 切除不能な子宮体がん(がん化学療法後に増悪) | 20mg(ペムブロリズマブと併用) |
| 根治切除不能または転移性の腎細胞がん | 20mg(ペムブロリズマブと併用) |
この記事では、肝細胞がんに対する使用を中心に解説します。
肝臓がんに対するレンビマの効果
レンビマの承認のきっかけとなったのは、REFLECT試験と呼ばれる国際共同第3相臨床試験です。この試験では、全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞がん患者さん954人を対象に、レンビマとネクサバール(ソラフェニブ)の有効性と安全性が比較されました。
REFLECT試験の主な結果
| 評価項目 | レンビマ群 | ネクサバール群 |
|---|---|---|
| 全生存期間(OS)中央値 | 13.6カ月 | 12.3カ月 |
| 無増悪生存期間(PFS)中央値 | 7.4カ月 | 3.7カ月 |
| 無増悪期間(TTP)中央値 | 8.9カ月 | 3.7カ月 |
| 奏効率(ORR) | 24% | 9% |
全生存期間については、レンビマはネクサバールに対して統計学的な非劣性を証明しました。つまり、生存期間においてネクサバールと同等以上の効果があることが示されました。
特に注目すべきは、無増悪生存期間と奏効率です。薬を投与してからがんが進行するまでの期間は、レンビマがネクサバールの約2倍でした。また、がんが30%以上縮小した患者さんの割合(奏効率)も、レンビマが24%に対してネクサバールは9%と、2倍以上の差がありました。
免疫チェックポイント阻害薬後の二次治療としての効果
近年の研究では、免疫チェックポイント阻害薬の効果がなくなった後の二次治療としてレンビマを使用した場合の有効性も報告されています。
近畿大学の研究チームによる臨床試験では、免疫チェックポイント阻害薬に不応となった肝細胞がん患者さん36人を対象に、二次治療としてレンビマを投与した結果、無増悪生存期間の中央値が10.03カ月、奏効率が55.6%という良好な成績が報告されました。
レンビマの投与方法とスケジュール
レンビマは経口薬(カプセル剤)で、1日1回服用します。
肝細胞がんの場合、投与量は体重によって決まります。
- 体重60kg以上の患者さん:1日1回12mg
- 体重60kg未満の患者さん:1日1回8mg
レンビマカプセルは4mgと10mgの2規格があります。体重60kg以上の場合は、4mg×3カプセルまたは10mg×1カプセル+4mg×0.5カプセル相当(実際は4mg1カプセルと10mg1カプセルを組み合わせて12mgにします)を服用します。
副作用が出た場合は、症状や重症度に応じて休薬や減量が行われます。減量する場合は、8mg、4mg、4mg隔日投与というように段階的に調整されます。
投与期間に制限はなく、病勢進行または忍容できない副作用が出現するまで継続します。
レンビマの副作用とその対策
レンビマの臨床試験(肝細胞がん患者さん476例)で報告された主な副作用は以下の通りです。
| 副作用 | 発現率 |
|---|---|
| 高血圧 | 39.7%(189例) |
| 下痢 | 30.0%(143例) |
| 手足症候群 | 26.5%(126例) |
| 食欲減退 | 25.6%(122例) |
| 尿たんぱく増加 | 23.9%(114例) |
| 疲労 | 23.3%(111例) |
| 発声障害 | 21.8%(104例) |
ネクサバールとの比較
従来の標準治療薬であったネクサバールでは、手足がしびれたり痛みが生じる手足症候群という副作用が問題となっていました。レンビマでも手足症候群は発現しますが、ネクサバールと比べると発現しにくいことが分かっています。
また、「臨床的に重要な副作用の悪化が認められるまでの期間」を比較した結果、レンビマによる下痢は4.6カ月(ネクサバール2.7カ月)、手足の痛みは2.0カ月(ネクサバール1.8カ月)と、副作用が起きるまでの期間に若干の猶予があることも示されました。
主な副作用への対応
高血圧については、定期的な血圧測定を行い、必要に応じて降圧薬による治療が行われます。収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧100mmHg以上の場合は、休薬して降圧治療を行います。
下痢や食欲減退は、特に高齢の患者さんではQOL(生活の質)の低下や治療中断につながりやすいため、早めの対症療法と適切な休薬・減量が重要です。
尿たんぱくについても定期的な検査が必要で、尿たんぱく3.5g/日以上の場合は休薬基準となります。
日常生活への影響
レンビマは経口薬のため、入院の必要はなく、外来通院で治療を継続できます。
ただし、副作用の管理が重要です。特に以下の点に注意が必要です。
食欲減退や下痢が起きやすいため、食事内容の工夫が求められます。消化の良い食事を少量ずつ頻回に摂る、辛いものや刺激物を避けるなどの対策が有効です。
高血圧のリスクがあるため、家庭での血圧測定が推奨されます。急激な血圧上昇があった場合は、すぐに医療機関に連絡する必要があります。
手足症候群による痛みやしびれが出た場合は、保湿クリームの使用や、手足への過度な圧迫を避けるなどの対策を取ります。
疲労感が強く出る場合もあるため、無理をせず適度な休息を取ることが大切です。また、軽い運動は疲労感の軽減に役立つことが報告されています。
定期的な検査(血液検査、尿検査、心機能検査など)が必要なため、通院スケジュールをしっかり守ることが重要です。
レンビマの保険適応
レンビマは2018年3月に「切除不能な肝細胞がん」の適応で承認され、保険診療で使用できます。
保険適応の条件は以下の通りです。
- 切除不能な肝細胞がんであること
- 一次治療として使用すること(全身化学療法歴がないこと)
- Child-Pugh分類でA(軽度の肝機能障害)またはB(中等度の肝機能障害)であること
Child-Pugh分類とは、肝機能の程度を評価する指標で、A(5-6点)、B(7-9点)、C(10-15点)の3段階に分類されます。肝細胞がんの患者さんは肝硬変などの背景肝疾患を持つことが多いため、肝機能の評価が治療選択において重要になります。
臨床試験では、中等度の肝機能障害を有する患者さんに対する最大耐用量は1日1回8mgであることが確認されており、肝機能に応じた慎重な投与が求められます。
レンビマの費用と自己負担額
薬価
レンビマの薬価は以下の通りです(2026年現在)。
| 製剤 | 薬価(1カプセルあたり) |
|---|---|
| レンビマカプセル4mg | 4,025.5円 |
| レンビマカプセル10mg | 9,517.6円 |
月額費用の目安
体重60kg以上の患者さん(1日12mg投与)の場合、4mgカプセルを3個服用するとして計算すると:
4,025.5円 × 3カプセル × 30日 = 約362,295円/月(薬剤費のみ)
これに診察料、検査料などが加わるため、総額では月40万円程度になります。
高額療養費制度による自己負担軽減
レンビマは高額な薬剤ですが、公的医療保険と高額療養費制度が適用されます。
高額療養費制度とは、1カ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。限度額は年齢や所得によって異なります。
| 年齢・所得区分 | 自己負担限度額(月額) |
|---|---|
| 70歳未満・年収約370万~770万円 | 約8万円+医療費の1% (4回目以降:44,400円) |
| 70歳未満・年収約770万~1,160万円 | 約16万円+医療費の1% (4回目以降:93,000円) |
| 70歳以上・年収156万~370万円 | 外来:18,000円/月 入院等:57,600円/月 (4回目以降:44,400円) |
| 70歳以上・年収370万~約770万円 | 外来:57,600円/月 入院等:80,100円+医療費の1% (4回目以降:44,400円) |
例えば、70歳未満で年収500万円の方が月40万円の医療費(3割負担で12万円)がかかる場合、自己負担限度額は約8万円となり、超えた分は払い戻されます。さらに、同じ世帯で過去12カ月以内に3回以上高額療養費に該当した場合、4回目からは多数回該当として限度額が44,400円に下がります。
限度額適用認定証の活用
事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、医療機関の窓口での支払いが自己負担限度額までで済みます。加入している健康保険に申請することで交付されます。
また、マイナンバーカードを健康保険証として利用している場合は、限度額適用認定証の申請や提示が不要になります。
治療を受けられる施設
レンビマは、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師のもとでのみ使用されます。
肝細胞がんの診療実績がある病院、がん診療連携拠点病院などで処方を受けることが一般的です。治療開始に先立ち、患者さんまたはご家族に有効性と危険性について十分な説明があり、同意を得てから投与が開始されます。
レンビマによる治療を考えるうえで
レンビマは、切除不能な肝細胞がんに対する一次治療の選択肢として、従来のネクサバールと比べて無増悪生存期間の延長と高い奏効率を示した薬です。
経口薬であるため外来通院で治療を続けられる利点がありますが、高血圧、下痢、食欲減退などの副作用には注意が必要です。これらの副作用は適切な管理により対応可能ですが、主治医や医療スタッフとよく相談しながら治療を進めることが大切です。
費用面では高額療養費制度により自己負担が軽減されますが、それでも月々数万円の負担が発生します。経済的な面も含めて、ご自身の状況に合った治療選択について、医療チームとよく話し合うことをお勧めします。
また、肝細胞がんの治療は薬物療法だけでなく、外科手術、ラジオ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓療法など複数の選択肢があり、それぞれを組み合わせて治療することもあります。
レンビマもその選択肢の一つとして、総合的な治療計画の中で位置付けを考えることが重要です。
参考文献・出典情報
- がん情報サイト「オンコロ」- レンビマとキイトルーダ併用療法に関する情報
- QLifeがん - レンビマの免疫チェックポイント阻害薬後の二次治療としての有効性
- QLifeがん - レンバチニブの肝細胞がん適応追加承認
- がん情報サイト「オンコロ」- レンビマ(レンバチニブ)薬剤情報
- 福井県済生会病院 肝疾患センター - レンバチニブの解説
- MSD Connect - レンビマ肝細胞癌 REFLECT試験
- しろぼんねっと - レンビマカプセル薬価情報
- 日経メディカル処方薬事典 - レンビマカプセル基本情報
- エーザイ株式会社 - レンビマ欧州承認プレスリリース
- HOKUTO - レンバチニブレジメン情報