がん専門アドバイザーの本村です。
当記事では肝臓がんの一次治療薬として使われるようになったレンビマ(レンバチニブ)の効果、副作用について解説しています。
肝臓がんの化学療法とレンビマの位置付け
他の部位と比べて、肝臓がん(肝細胞がん)は使用できる薬がとても少ない部位でした。
肝臓内にがんが多発していたり、肝臓外に転移がみられる場合は肝動脈化学塞栓療法(TACE)や肝動注化学療法(TAI)が使えず、全身への化学療法(薬物療法)になりますが、2017年まで利用できる保険承認薬はネクサバール(ソラフェニブ)だけでした。
2017年にはスチバーガ(レゴラフェニブ)が承認されましたが、これはあくまで「ネクサバールを一次で使った場合の二次使用の薬(治療後に進行してしまった肝細胞癌患者さん向けの薬」でした。
レンビマは「切除不能な肝細胞がん」の全身化学療法の一次治療薬として2018年3月に承認された分子標的薬です。
ネクサバールが使われるようになってから9年ぶりに、一次治療薬として承認された薬になります。
レンビマとはどんな薬か?
レンビマは、マルチキナーゼ阻害薬とよばれる種類の薬です。
難しい説明は割愛しますが、作用としてはたんぱく質をリン酸化することでキナーゼの働きを阻害し、がん細胞の増殖や血管新生(新たに血管を作ること)を起こりにくくします。
従来の「抗がん剤」のように、毒をもって毒を制す、というタイプではなく、がん細胞が増殖する作用を阻害する、ということです。
肝臓がんに対するレンビマの効果
臨床試験(薬が承認されるきっかけになったテスト)では、全生存期間(OS)がレンビマでは平均13.6カ月(ネクサバールは12.3カ月)。
無増悪生存期間(PFS)はレンビマ7.4カ月(ネクサバール3.7カ月)。
無増悪期間(TTP)はレンビマ群が8.9カ月(ネクサバール群が3.7カ月)でした。
簡単にいうと、薬を投与してからがんが進行するまでの期間がネクサバールに比べて2倍以上あるという結果でした。
奏効率(ORR、がんが30%以縮小した患者さんの割合)はレンビマ24%でネクサバールはが9%でした。
従来の主要薬であるネクサバールと比較して、レンビマのほうが延命効果があり、薬価もレンビマの方が安く、後述する副作用もさほど変わらない、という結果を受けて、一次治療薬として承認された、ということです。
肝臓がんに対するレンビマの副作用
レンビマの主な副作用は、高血圧、下痢、手足症候群、食欲減退、尿たんぱく増加、疲労、発声障害などがあります。
それぞれ臨床試験での投与476例のうち、高血圧189例(39.7%)、下痢143例(30.0%)、手足症候群126例(26.5%)、食欲減退122例(25.6%)、尿たんぱく増加114例(23.9%)、疲労111例(23.3%)、発声障害104例(21.8%)でした。
ネクサバールは手足がしびれ、痛みが生じる手足症候群という辛い副作用が強く出ましたが、レンビマではネクサールよりかは起きにくいことが分かっています。
また、ネクサバールと「臨床的に重要な悪化が認められるまでの期間」を比較したところ、レンビマによる下痢は4.6カ月(ネクサバール2.7カ月)、手足の痛みは2.0カ月(ネクサバール1.8カ月)など、比較的副作用が起きるまでの期間に猶予があることが分かっています。
まとめ
進行が顕著になると、薬の選択肢がなかった肝臓がんに新たな薬が使えるようになったことは朗報ですが、薬で治る、というものではありません。
肝臓がんと闘うには、総合的な知識が必要です。
詳しくはこちらのガイドブックで解説していますので、興味のある方は読んでみてください。