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上咽頭がんにおける放射線治療の位置づけ
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
上咽頭がんは、鼻の奥、喉の最上部に位置する上咽頭という部位に発生する悪性腫瘍です。この部位は頭蓋底に近く、重要な神経や血管が密集しているため、手術による切除が極めて困難な部位として知られています。
そのため、上咽頭がんの治療では、病期を問わず放射線治療が第一選択となります。手術が物理的に難しいという解剖学的な理由に加え、上咽頭がんの多くは低分化型や未分化型の扁平上皮がんであり、放射線に対する感受性が高いという病理学的特徴も、放射線治療が選ばれる理由です。
上咽頭がんの特徴と発見時の状態
上咽頭がんの発生には、EBウイルス(エプスタイン・バーウイルス)の感染が関与していると考えられています。このウイルスは多くの成人に潜伏感染しており、特定の地域や民族で上咽頭がんの発生率が高いことが知られています。
上咽頭がんは初期症状が乏しいため、発見時には既に進行していることが多い疾患です。耳管の閉塞による片側の耳閉感や難聴、鼻出血、頸部リンパ節の腫れなどで発見されることが一般的です。
頭蓋底に近いため、がんが進行すると頭蓋内に浸潤し、複視などの脳神経症状が現れることもあります。このような進行した状態で発見されることも少なくありません。
放射線治療が第一選択となる理由
解剖学的な制約
上咽頭は頭蓋底の直下に位置し、周囲には脳幹、脊髄、視神経、眼球、頸動脈などの重要臓器が密集しています。この部位にメスを入れることは技術的に極めて困難であり、仮に手術が可能であったとしても、重篤な後遺症を残すリスクがあります。
そのため、Ⅰ期の早期がんからⅣA期の進行がんまで、手術ではなく放射線治療を主体とした治療が標準治療として確立されています。
放射線感受性の高さ
上咽頭がんの大部分を占める低分化型や未分化型の扁平上皮がんは、放射線に対する感受性が比較的高いという特徴があります。つまり、放射線によってがん細胞が破壊されやすく、腫瘍が縮小したり消失したりする可能性が高いのです。
この生物学的特性も、放射線治療が第一選択とされる重要な根拠となっています。
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上咽頭がんの放射線治療の適応条件
病期別の治療方針
2025年版の頭頸部癌診療ガイドラインでは、以下のような治療方針が示されています。
| 病期 | 標準治療 |
|---|---|
| Ⅰ期 | 放射線治療単独 |
| Ⅱ期 | 化学放射線療法(放射線治療+抗がん剤) |
| Ⅲ期 | 化学放射線療法 |
| ⅣA期 | 化学放射線療法、場合により導入化学療法を追加 |
| ⅣB期(遠隔転移あり) | 薬物療法を検討 |
Ⅰ期の早期がんでは放射線治療単独で良好な治療成績が期待できますが、Ⅱ期以降では放射線治療に化学療法(抗がん剤治療)を併用する化学放射線療法が標準となっています。
患者さんの全身状態と適応
放射線治療は手術に比べて体への負担が少ない治療法ですが、それでも一定の体力が必要です。治療期間中は週5日、6〜7週間にわたって通院または入院が必要となるため、全身状態が良好であることが望ましいとされています。
また、化学療法を併用する場合は、腎機能、肝機能、骨髄機能などが一定の基準を満たしている必要があります。
放射線治療の具体的な方法
外部照射による治療
上咽頭がんの放射線治療では、体の外から放射線を照射する外部照射が行われます。1日1回の照射を週5日(月曜日から金曜日)行い、合計33〜35回の治療を6〜7週間かけて実施するのが一般的です。
治療中は、放射線を正確に照射するために、頭部と頸部を固定する専用の固定具(シェルやマスク)を使用します。この固定具は治療計画用のCT撮影時に患者さんごとに作成されます。
照射野と照射方法
上咽頭がんの放射線治療では、原発巣である上咽頭部分だけでなく、転移のリスクがある頸部のリンパ節領域も照射範囲に含めます。
従来は、上咽頭から上頸部にかけて左右対向2門照射が行われ、中・下頸部には前方からの1門照射が実施されていました。照射野が広範囲にわたるため、脊髄や脳幹部などの重要臓器への線量を制限するために、照射野を段階的に縮小していく方法が取られています。
強度変調放射線治療(IMRT)の推奨
2025年現在、上咽頭がんの放射線治療では強度変調放射線治療(IMRT)が強く推奨されています。IMRTは、コンピューターを用いて放射線の強度を細かく調整し、複雑な形状のがんに対しても適切な線量を照射できる高精度放射線治療技術です。
IMRTの利点は以下の通りです。
・腫瘍部位に高線量を集中させることができる
・周囲の正常組織への照射線量を低減できる
・治療後の副作用を軽減できる可能性がある
・唾液腺や聴器などの機能温存に有利である
特に上咽頭がんのように、周囲に脳幹、脊髄、視神経、眼球、耳下腺などの重要臓器が密集している部位では、IMRTによって治療の質を高めることができます。
回転型のIMRTであるVMAT(強度変調回転照射)を用いることで、治療時間の短縮も可能となっています。実際の照射時間は1回あたり15分程度で、そのうち放射線を照射している時間は数分間です。
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放射線治療における線量設定
総線量と分割照射
上咽頭がんの根治的放射線治療では、原発巣および転移リンパ節に対して総線量66〜70グレイの照射が標準的です。1回あたり2グレイずつ照射し、これを33〜35回繰り返すことで総線量に達します。
ただし、すべての部位に同じ線量を照射するわけではありません。腫瘍が存在する領域、腫瘍に隣接する転移リスクが高い領域、転移予防のために照射する領域に対して、それぞれ異なる線量を設定します。
重要臓器への線量制限
脊髄は放射線に対して非常に敏感な組織であり、過剰な照射によって重篤な神経障害を引き起こす可能性があります。そのため、脊髄への線量は40〜50グレイ以下に制限する必要があります。
化学療法を併用する化学放射線療法の場合は、脊髄への線量を40グレイ以下に抑えることが推奨されています。
また、脳幹部への過剰照射も避ける必要があります。照射野を段階的に縮小することで、これらの重要臓器への線量を制限しながら、腫瘍部位には十分な線量を照射する工夫が行われています。
化学療法との併用(化学放射線療法)
化学放射線療法の目的と効果
Ⅱ期以降の上咽頭がんでは、放射線治療に化学療法を併用する化学放射線療法が標準治療となっています。化学療法を併用する目的は以下の通りです。
・放射線治療の効果を高める(増感作用)
・遠隔転移のリスクを低減する
・治療後の再発リスクを下げる
使用される抗がん剤
上咽頭がんの化学放射線療法で最も基本的(標準的)な抗がん剤はシスプラチンです。シスプラチンは白金製剤と呼ばれる抗がん剤で、放射線との相乗効果が高いことが知られています。
代表的な投与スケジュールとしては、3週間ごとにシスプラチン100mg/m²を3回投与する方法が標準とされてきました。しかし、この方法は副作用が強いため、最近では毎週30〜40mg/m²を投与する方法も選択されています。
導入化学療法の追加
ⅣA期などの進行した上咽頭がんでは、化学放射線療法の前に導入化学療法を行うことがあります。導入化学療法で用いられる標準的な組み合わせは、ドセタキセル・シスプラチン・5-FUの3剤併用療法です。
また、ゲムシタビンとシスプラチンの組み合わせによる導入化学療法も、局所進行上咽頭がんに対する有効性が臨床試験で示されており、新たな選択肢として注目されています。
2025年の研究では、導入化学療法を追加することで、3年無再発生存率が76.5%から85.3%に改善したという報告もあります。
放射線治療の実際の流れ
治療開始前の準備
放射線治療を開始する前に、以下のような準備が必要です。
1. 治療計画用CT撮影:治療計画を立てるためのCT画像を撮影します。
2. 固定具の作成:頭部と頸部を固定するシェル(マスク)を作成します。
3. 治療計画の立案:放射線腫瘍医、診療放射線技師、医学物理士がコンピューターを用いて、照射範囲や線量分布を決定します。
4. 歯科診察と口腔ケア:放射線治療による口腔内トラブルを予防するため、治療前に歯科診察を受け、必要な処置を行います。
通院治療と入院治療
上咽頭がんの放射線治療は、通院で行われることが一般的です。週5日、6〜7週間にわたって通院することになります。
ただし、化学療法を併用する場合や、副作用が強く現れた場合、遠方から通院する場合などは、入院治療を選択することもあります。シスプラチンを投与する日は、腎機能を保護するために大量の点滴を行う必要があるため、入院または日帰り入院で対応することが多くなっています。
治療中の管理
放射線治療中は、医師、看護師、歯科医、歯科衛生士、言語聴覚士、栄養士、心理士などの多職種チームによる支持療法が行われます。
副作用のコントロール、栄養管理、口腔ケア、心理的サポートなど、さまざまな側面から患者さんをサポートする体制が整えられています。
放射線治療の副作用
早期に現れる副作用(急性期有害事象)
治療中または治療直後に現れる副作用として、以下のようなものがあります。
・口腔・咽頭粘膜炎:口や喉の粘膜に炎症が起こり、痛みや飲み込みにくさが生じます。
・皮膚炎:照射部位の皮膚に赤みや乾燥、色素沈着が現れます。
・味覚障害:味を感じにくくなったり、味が変わって感じられたりします。
・唾液分泌の低下:唾液が減少し、口の中が乾燥します。
・食欲不振、嘔気:特に化学療法を併用する場合に現れやすくなります。
・倦怠感:治療期間を通じて疲れやすさを感じることがあります。
これらの急性期の副作用は、治療終了後、数週間から数ヶ月で徐々に改善していくことが多いとされています。
晩期に現れる副作用(晩期合併症)
治療終了後、数ヶ月から数年経過してから現れる副作用として、以下のようなものがあります。
・唾液分泌障害の持続:口腔乾燥が長期間続くことがあります。
・味覚障害の持続:照射範囲が広い場合、味覚障害が残ることがあります。
・聴力障害、中耳炎:耳管や聴器への影響により、難聴や中耳炎が生じることがあります。
・嚥下障害:飲み込み機能に影響が出ることがあります。
・甲状腺機能低下:甲状腺に放射線が照射されることで機能が低下することがあります。
・開口障害:顎の筋肉や関節に影響が出て、口が開きにくくなることがあります。
IMRTの使用により、これらの晩期合併症のリスクを低減できることが報告されています。
上咽頭がんの治療成績
病期別の生存率
上咽頭がんの5年生存率は、病期によって以下のように異なります。
| 病期 | 5年生存率の目安 |
|---|---|
| Ⅰ期 | 85〜90% |
| Ⅱ〜Ⅲ期 | 60〜80% |
| Ⅳ期 | 40〜50% |
これらの数値は施設や治療方法によって変動がありますが、放射線治療と化学療法の進歩により、治療成績は向上してきています。
治療成績向上のために
治療効果を最大限に高めるためには、計画通りに治療を完遂することが重要です。副作用が強く現れた場合でも、適切な支持療法を受けながら治療を継続することが望まれます。
また、治療終了後も定期的な経過観察を受け、再発の早期発見に努めることが重要です。
放射線治療にかかる費用
保険適用と自己負担額
上咽頭がんの放射線治療は健康保険の適用対象となっています。IMRTについても、限局性のがんに対しては保険が適用されます。
実際の費用は照射方法、照射回数、併用する化学療法の内容などによって異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。
| 治療内容 | 総医療費の目安 | 3割負担の場合の自己負担額 |
|---|---|---|
| 通常の放射線治療(35回) | 約80〜100万円 | 約24〜30万円 |
| IMRT(35回) | 約140〜150万円 | 約42〜45万円 |
これに加えて、化学療法の費用、検査費用、入院費用(入院する場合)などが別途必要となります。
高額療養費制度の利用
がん治療は高額になることが多いため、高額療養費制度を利用することで、自己負担額を大幅に軽減できます。
この制度を利用すると、所得に応じた自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。例えば、一般的な所得区分(標準報酬月額28万〜50万円)の場合、月額の自己負担限度額は約8万円程度となります。
事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、医療機関の窓口での支払いが自己負担限度額までとなります。マイナンバーカードを健康保険証として利用している場合は、限度額適用認定証が不要となります。
その他の医療費
放射線治療本体の費用以外にも、以下のような費用が発生します。
・初診料、再診料
・治療計画用CT撮影費用
・血液検査などの検査費用
・化学療法の薬剤費用
・支持療法(制吐剤、口内炎治療薬など)の費用
・入院費用(入院する場合)
治療全体でかかる費用については、治療開始前に医療機関の相談窓口で確認することをおすすめします。
粒子線治療について
陽子線治療・重粒子線治療の保険適用
頭頸部がんのうち、扁平上皮がん以外のがんでは、陽子線治療や重粒子線治療が保険適用となっています。しかし、上咽頭がんの大部分は扁平上皮がんであるため、保険適用の対象となる患者さんは限られています。
扁平上皮がん以外の組織型の上咽頭がんと診断された場合は、粒子線治療の適応について主治医と相談することができます。
放射線治療を受ける際の注意点
治療施設の選択
IMRTを安全かつ効果的に実施するためには、日本放射線腫瘍学会認定の常勤専門医が在籍し、専用の機器が備わった施設であることが必要です。
上咽頭がんのような頭頸部がんの放射線治療は専門性が高いため、頭頸部がんの治療経験が豊富な施設を選ぶことが望ましいとされています。
治療前の歯科受診
放射線治療による口腔内トラブルを予防するため、治療開始前に歯科を受診し、虫歯の治療や抜歯が必要な歯の処置を済ませておくことが推奨されています。
治療中および治療後も、丁寧な口腔ケアを続けることが重要です。
禁煙と節酒
喫煙と飲酒は、放射線治療の効果を低下させ、副作用を増強させる可能性があります。治療中は禁煙・禁酒が強く推奨されます。
治療後の経過観察
定期的なフォローアップ
放射線治療終了後は、定期的な経過観察が必要です。一般的には、最初の1〜2年は1〜3ヶ月ごと、その後は3〜6ヶ月ごとに受診し、診察、内視鏡検査、画像検査などを受けます。
経過観察の目的は、再発や転移の早期発見、晩期合併症の管理、全身状態の確認などです。
晩期合併症への対応
唾液分泌障害、味覚障害、聴力障害などの晩期合併症が現れた場合は、適切な対症療法を受けることができます。
症状が気になる場合は、我慢せずに主治医や医療スタッフに相談することが大切です。
セカンドオピニオンの活用
上咽頭がんと診断された場合、治療方針について他の専門医の意見を聞くセカンドオピニオンを受けることも選択肢の一つです。
放射線治療の方法、化学療法の組み合わせ、治療施設の選択など、納得のいく治療を受けるために、複数の専門家の意見を参考にすることは有益です。
多くの医療機関でセカンドオピニオン外来が設けられており、診療情報提供書や画像データを持参することで、他の専門医から意見を聞くことができます。
おわりに
上咽頭がんの放射線治療は、技術の進歩により治療効果が向上し、副作用の軽減も図られています。特にIMRTの導入により、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えながら、腫瘍に高線量を照射することが可能となっています。
化学療法との併用、導入化学療法の追加など、治療戦略も進化しており、より良い治療成績が期待できるようになってきています。
治療を受ける際は、担当医からの説明をよく聞き、疑問点や不安な点は遠慮なく質問することが大切です。また、治療中は医療スタッフと協力しながら副作用に対処し、計画通りに治療を完遂することを目指します。
がんと診断された後、どのような治療を選び、どのように日常生活を送るかによって、その後の経過は大きく変わります。正しい知識を持ち、自分に合った治療を選択することが、納得のいく治療につながります。

