上咽頭がんは、EB(Epstein-Bar:エプスタイン・バー)ウイルスが原因の1つと考えられています。
EBウイルスはヒトに広く伝播しており、ほとんどの健常成人に潜伏感染しているといわれています。頸部リンパ節が腫れた段階で診断されることが多く、進行がんで発見されます。
上咽頭は頭蓋底に近いため、がんは比較的簡単に頭蓋底を破壊し、頭蓋内に入り込むこともあります。このような場合には外転神経麻痺が起こり、複視などの症状が現れます。
上咽頭がんは手術が難しく、放射線感受性が高いので、放射線治療が第1選択です。化学療法(抗がん剤治療)も併用されます。
放射線療法では、上咽頭から上頸部にかけた照射野には左右対向2門照射がおこなわれます。総線量は60~70グレイが照射されます。
ただし、50グレイ以上の線量が、脊髄や呼吸中枢の脳幹部に照射されないように照射野を縮小します。中・下頸部には前方からの1門照射がおこなわれます。
脊髄には、5グレイ以上の線量が照射されないように、照射野の中央部は鉛ブロックで放射線遮蔽します。
上咽頭がんの5年粗生存率はⅠ期で89パーセント、Ⅱ期で70パーセント、Ⅲ期で53パーセント、Ⅳ期で37パーセントです。
照射野が大きいので急性期の有害事象として粘膜炎や皮膚炎が起こり、晩期障害として唾液の分泌低下をきたします。抗がん剤を併用する化学放射線療法をおこなう場合には、脊髄への照射線量は40グレイを超えないよう注意が必要です。
以上、上咽頭がんへの放射線治療についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。