2022年時点で遺伝子パネル検査が保険適用の対象となるのは、標準治療では効果がないか、終了した場合、もしくは終了する見込みの固形がんの患者になります。
遺伝子パネル検査を受けられるのは、全国のがんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院のいずれかになります。
検査を受けることになった場合、患者のがん組織と血液の両方、もしくはいずれかを検
査機関に送り、対象の遺伝子を解析します。
患者が同意した場合は、国立がん研究センターの「がんゲノム情報管理センター」に検査の解析データと患者の診療情報が送られます。
管理センターは国内外の膨大なデータベースをもとに、患者にあう可能性のある薬や治験、臨床試験の情報をまとめた調査結果を、主治医ら専門家が集まる「エキスパートパネル(専門家会議)」に届けます。
エキスパートパネルには、主治医、病理医、遺伝医療やがんゲノム医療などの専門家が参加し、患者の治療歴や健康状態を踏まえて、もっとも適した治療法を検討します。
その結果をもとに、主治医と患者で治療の方針を決めます。患者が検査のための診察を受けてから、結果を受け取るまでに1~2か月程度かかります。
このとき、患者に適した治療法がみつかる場合とみつからない場合があります。
厚生労働省が2019年にがんゲノム医療に携わる病院を対象に調査したところ、遺伝子パネル検査を受けた805人のうち、治療に結びついた割合は約10%でした。
検査を受けたとしても10人にひとり程度しか治療薬が適合しないのが現状で、治療薬自体は保険外となり高額な負担を強いられることになります。
また、みつからなかった場合は、患者は主治医とそのほかの治療法を検討することになります。
なかなか適合しない理由はおもに2点あり、ひとつは、日本国内で承認されている薬や臨床試験が少ないこと、もうひとつは検査を受けられる対象が標準治療が終了、もしくは終了見込みの人に限られていることです。
日本では、分子標的薬用のコンパニオン診断が保険診療で広く実施されてきたため、後発の遺伝子パネル検査はそれらを終えたあとの「最後の手段」と位置づけられています。
標準治療による治癒の見込みがなくなった患者にとって、治療の可能性を探ることができる仕組みは重要ですが標準治療が終わった段階での検査では、症状が進行し、まにあわない状況になっていることも考えられます。