25.抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント

【2026年更新】ロズリートレク(エヌトレクチニブ)の効果・副作用・費用を分かりやすく解説。投与方法と保険適応

こんにちは。がん治療アドバイザー、本村ユウジです。

ロズリートレク(一般名:エヌトレクチニブ)は、NTRK融合遺伝子やROS1融合遺伝子を持つがん細胞に対して効果を発揮する分子標的薬です。2019年6月に日本で世界に先駆けて承認され、がんの部位を問わず使用できる「臓器横断的」な治療薬として注目されています。

この記事では、ロズリートレクがどのような薬なのか、効果や副作用、投与方法、費用など、患者さんが知っておくべき情報を詳しく解説します。


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ロズリートレクとはどんな薬か

ロズリートレクは、特定の遺伝子異常を持つがん細胞の増殖を抑える分子標的薬です。この薬が標的とするのは「NTRK融合遺伝子」と「ROS1融合遺伝子」という2種類の遺伝子異常です。

NTRK融合遺伝子とは、NTRK遺伝子(NTRK1、NTRK2、NTRK3)と他の遺伝子(ETV6、LMNA、TPM3など)が染色体転座によって融合してできる異常な遺伝子です。この融合遺伝子から作られる融合TRK(神経栄養因子受容体)タンパク質が、がん細胞の増殖を促進します。

ロズリートレクは、この融合TRKタンパク質の働きを阻害することで、がん細胞の増殖を抑えます。同様に、ROS1融合遺伝子から作られるROS1融合タンパク質に対しても強力な阻害作用を示します。

臓器横断的承認とは

これまでの抗がん剤は「肺がん用」「大腸がん用」というように、がんの部位ごとに承認されるのが一般的でした。しかしロズリートレクは、がんの部位を問わず、NTRK融合遺伝子またはROS1融合遺伝子が陽性であれば使用できる薬として承認されました。

これは免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」(MSI-High固形がん)に続いて2番目の臓器横断的承認薬であり、小児がんにおける臓器横断的承認は日本初となります。

ロズリートレクの特徴

NTRK融合遺伝子を標的とする初の薬

ロズリートレクは、NTRK融合遺伝子を標的とする世界初の治療薬として、日本で最初に承認されました。厚生労働省の「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定され、通常よりも短期間で承認されています。

経口投与が可能

ロズリートレクはカプセル剤として経口投与できるため、点滴治療と比較して通院の負担が軽減されます。自宅で服用できることから、日常生活への影響を抑えながら治療を継続できます。


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対象となるがんの種類

ロズリートレクは以下の2つの適応症で承認されています。

適応症 対象患者
NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がん 成人および小児
ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん 成人

NTRK融合遺伝子が認められるがん

NTRK融合遺伝子の出現頻度は、がんの種類によって異なります。

非小細胞肺がんや結腸・直腸がんなど患者数の多い固形がんでは、NTRK融合遺伝子が認められる確率は約1%程度とされています。つまり100人に1人程度の割合です。

一方、患者数の少ない希少がんでは、この遺伝子異常が認められる確率が高くなります。具体的には以下のようながん種で報告されています。

  • 乳児型線維肉腫
  • 神経膠腫、神経膠芽腫
  • びまん性橋グリオーマ
  • 先天性中胚葉性腎腫
  • 悪性黒色腫
  • 炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT)
  • 子宮肉腫、その他軟部腫瘍
  • 消化管間質腫瘍(GIST)
  • 乳腺分泌がん、唾液腺分泌がん
  • 原発不明がん
  • 肺がん、大腸がん、虫垂がん
  • 乳がん、胃がん、卵巣がん
  • 甲状腺がん、胆管がん、膵臓がん
  • 頭頸部がん

ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん

非小細胞肺がん患者さんの約1~2%にROS1融合遺伝子が認められます。特に腺がんでより多く発現することが知られています。

ロズリートレクが使用できるかどうかの検査方法

ロズリートレクの使用には、がん細胞にNTRK融合遺伝子またはROS1融合遺伝子があることを確認する必要があります。

この検査は「がん遺伝子パネル検査」で行うことができます。2019年6月から保険適用となった以下のパネル検査で、遺伝子変異や融合の有無を調べることが可能です。

  • 国立がん研究センターとシスメックスが開発した「NCCオンコパネル」
  • 中外製薬が開発した「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」

これらの検査では、複数のがん関連遺伝子を一括して調べることができ、ロズリートレクのコンパニオン診断として厚生労働省の承認を取得しています。


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ロズリートレクの投与方法と投与スケジュール

投与方法

ロズリートレクは1日1回、経口投与します。カプセル剤には100mgと200mgの2種類があり、必要な用量に応じて組み合わせて服用します。

用法・用量

対象 標準用量 注意点
成人 1日1回600mg 患者さんの状態により適宜減量
小児 1日1回300mg/m²(体表面積) ただし600mgを超えないこと

小児患者さんの体表面積別用量

小児患者さんの場合、体表面積に応じて以下のように用量が決まります。

体表面積 1日用量
0.43~0.50 m² 100mg
0.51~0.80 m² 200mg
0.81~1.10 m² 300mg
1.11~1.50 m² 400mg
1.51 m²以上 600mg(上限)

投与スケジュール

ロズリートレクは継続的に服用する薬です。4週間(28日)を1サイクルとして、毎日服用を続けます。副作用の程度によっては、休薬や減量が必要になる場合があります。

減量基準

副作用が発現した場合、成人患者さんでは以下のように段階的に減量します。

  • 通常用量:600mg/日
  • 1段階減量:400mg/日
  • 2段階減量:200mg/日

小児患者さんの場合も、体表面積に応じた減量基準が設定されており、週5日投与や週3日投与への変更も考慮されます。

ロズリートレクの効果(奏効率)

臨床試験での効果

ロズリートレクの効果は、複数の臨床試験で確認されています。

対象 奏効率 試験名
NTRK融合遺伝子陽性の固形がん(成人51名) 56.9% STARTRK-1、ALKA-372-001試験
NTRK融合遺伝子陽性の固形がん(小児0~4歳、5例) 80%(5例中4例が奏功) 小児試験
ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(53名) 77.4% STARTRK-2試験統合解析

これらの結果から、ロズリートレクは対象となる遺伝子異常を持つ患者さんに対して、高い奏効率を示すことが分かります。

ロズリートレクの副作用

主な副作用

ロズリートレクで報告されている主な副作用は以下の通りです。

  • 疲労
  • 便秘
  • 味覚異常
  • 浮腫(むくみ)
  • めまい
  • 下痢
  • 吐き気
  • 知覚異常
  • 呼吸困難
  • 痛み
  • 貧血
  • 認知障害
  • 体重増加
  • 嘔吐
  • 血中クレアチニン増加
  • 関節痛
  • 発熱
  • 筋肉痛

副作用の発生頻度

主要な3つの臨床試験における副作用の発生状況は以下の通りです。

項目 試験1 試験2 試験3
全有害事象 99.5% 98.7% 100%
Grade3以上の有害事象 63.6% 67.1% 47.4%
重篤な有害事象 39.3% 39.5% 42.1%
休薬に至った有害事象 45.1% 51.3% 43.9%
減量に至った有害事象 35.0% 25.0% 8.8%
投与中止に至った有害事象 10.2% 7.9% 3.5%
死亡に至った有害事象 6.3% 7.9% 1.8%

これらの数値から、ロズリートレクは効果が期待できる一方で、副作用の発生頻度が高く、約4~6割の患者さんでGrade3以上の副作用や重篤な副作用が認められることが分かります。

副作用により休薬や減量が必要になるケースも多く、約4~5割の患者さんが休薬を経験し、約1~3割の患者さんが減量を必要としています。

特に注意が必要な副作用

以下の副作用については、特に注意深い観察が必要です。

心臓障害

心不全、心室性期外収縮、心筋炎などの心臓障害が報告されています。投与開始前および投与中は、心電図や心エコーなどの心機能検査を定期的に行う必要があります。

中枢神経系の副作用

認知障害、錯乱状態、精神状態変化、記憶障害、幻覚、運動失調、構語障害などが報告されています。これらの症状が現れた場合は、すぐに医療スタッフに相談することが重要です。

日常生活への影響

服薬管理

ロズリートレクは1日1回の服用ですが、毎日決まった時間に服用することが推奨されます。飲み忘れに注意し、飲み忘れた場合は次の服用時間まで6時間以上ある場合のみ服用し、それ以外の場合は1回分を飛ばします。

食事との関係

ロズリートレクは食事の影響を受けます。空腹時投与と比較して、食後投与では血中濃度が約15%増加することが報告されています。そのため、毎日同じ条件(食前または食後)で服用することが望まれます。

日常生活での注意点

  • めまいや認知障害が起こる可能性があるため、車の運転や危険を伴う機械の操作は避ける
  • 疲労感が強い場合は、無理をせず休息を取る
  • 味覚異常により食事が楽しめなくなることがあるが、栄養管理は重要
  • 体重増加や浮腫が見られる場合は、塩分制限や水分管理について医療スタッフに相談する

保険適応と費用

保険適応

ロズリートレクは、NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がん、およびROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対して、健康保険が適用されます。

適応判定には、承認された体外診断用医薬品または医療機器による遺伝子検査が必要です。がん遺伝子パネル検査も保険適用となっています。

薬価

2025年4月時点でのロズリートレクの薬価は以下の通りです。

規格 薬価
100mg 1カプセル 5,310.8円
200mg 1カプセル 10,073円

1か月あたりの薬剤費

成人の標準用量(1日600mg)で計算した場合の薬剤費は以下の通りです。

1日あたりの薬価:約30,768円(100mg×2カプセル + 200mg×2カプセル)

1か月(30日)あたりの薬価:約923,040円

3割負担の場合の自己負担額:約276,912円/月

高額療養費制度の活用

ロズリートレクは高額な治療薬ですが、高額療養費制度を利用することで、実際の自己負担額を抑えることができます。

高額療養費制度では、1か月間の医療費が一定額を超えた場合、その超過分が払い戻されます。自己負担の上限額は、年齢と所得によって異なります。

所得区分(70歳未満) 自己負担限度額(月額) 多数回該当(4回目以降)
年収約1,160万円~ 252,600円+(医療費-842,000円)×1% 140,100円
年収約770~1,160万円 167,400円+(医療費-558,000円)×1% 93,000円
年収約370~770万円 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,400円
~年収約370万円 57,600円 44,400円
住民税非課税 35,400円 24,600円

限度額適用認定証の活用

高額な医療費が予想される場合は、事前に加入している健康保険に申請して「限度額適用認定証」を取得することをお勧めします。この認定証を医療機関の窓口に提示することで、支払額を自己負担限度額までに抑えることができ、一時的に高額な費用を立て替える必要がなくなります。

自己負担額の具体例

年収500万円の患者さんが、ロズリートレクによる治療を受けた場合を例にします。

1か月の医療費:約923,040円

3割負担額:約276,912円

高額療養費制度適用後の自己負担額:約86,660円

多数回該当(4か月目以降):44,400円

このように、高額療養費制度を活用することで、実際の負担は大幅に軽減されます。

治療を受けるにあたっての注意点

緊急時対応可能な医療機関での治療

ロズリートレクは、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとでのみ投与されます。治療開始前には、有効性と危険性について十分な説明を受け、同意が必要です。

避妊の必要性

妊娠する可能性のある女性患者さんには、投与中および最終投与後5週間、避妊する必要があります。男性患者さんには、投与中および最終投与後90日間、バリア法(コンドーム)を用いた避妊が必要です。

肝機能障害のある患者さん

肝機能障害がある患者さんでは、ロズリートレクの血中濃度が上昇し、副作用が強く現れる可能性があります。減量を考慮し、より慎重な観察が必要です。

他の薬剤との相互作用

ロズリートレクは主にCYP3A4という酵素で代謝されます。CYP3A4を阻害する薬剤や誘導する薬剤を併用すると、ロズリートレクの血中濃度に影響を与える可能性があります。現在服用している薬がある場合は、必ず医師に伝えてください。

まとめにかえて

ロズリートレクは、NTRK融合遺伝子やROS1融合遺伝子を持つがん細胞に対して効果を発揮する分子標的薬です。臓器横断的な承認を受けており、様々ながん種の患者さんに治療の選択肢を提供しています。

高い奏効率が期待できる一方で、副作用の発生頻度も高いため、医療スタッフとの密なコミュニケーションが重要です。また、高額な治療薬ですが、高額療養費制度を活用することで経済的負担を軽減できます。

治療を検討する際は、自身のがん細胞に適応となる遺伝子異常があるかを確認し、期待される効果と副作用のリスク、費用負担について、主治医とよく相談することが大切です。

参考文献・出典情報

1. 中外製薬株式会社「ロズリートレクカプセル添付文書」
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/450045_4291061M1025_1_09

2. 中外製薬株式会社「ロズリートレク適正使用ガイド」
https://www.chugai-pharm.co.jp/

3. 日本肺癌学会「肺癌診療ガイドライン2024年版」
https://www.haigan.gr.jp/

4. がん情報サイト「オンコロ」ロズリートレク(エヌトレクチニブ)
https://oncolo.jp/drugs/rozlytrek

5. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医療用医薬品情報」
https://www.pmda.go.jp/

6. 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html

7. 国立がん研究センター「がん情報サービス」
https://ganjoho.jp/

8. ファイザー株式会社「がんを学ぶ 高額療養費制度」
https://www.ganclass.jp/support/medical-cost/hight-cost

9. 今日の臨床サポート「ロズリートレクカプセル100mg」
https://clinicalsup.jp/

10. 日経メディカル処方薬事典「ロズリートレクカプセル100mg」
https://medical.nikkeibp.co.jp/

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本村ユウジ
がん治療専門のアドバイザー・本村です。

私の仕事は【がん患者さんに正しい選択を伝えること】です。

「本村さん、おかげで元気になりました」

そんな報告が届くのが嬉しくて、患者さんをサポートしています。

→200通以上の感謝の声(これまでいただいた実際のメールを掲載しています)

しかし毎日届く相談メールは、

「医師に提案された抗がん剤が怖くて、手の震えが止まらない」

「腰がすこし痛むだけで、再発か?転移か?と不安で一睡もできなくなる」

「職場の人も家族さえも、ちゃんと理解してくれない。しょせんは他人事なのかと孤独を感じる」

こんな苦しみに溢れています。

年齢を重ねると、たとえ健康であっても、つらいことはたくさんありますよね。

それに加えて「がん」は私たちから、家族との時間や、積み重ねたキャリア、将来の夢や希望を奪おうとするのです。

なんと理不尽で、容赦のないことでしょうか。

しかしあなたは、がんに勝たねばなりません。

共存(引き分け)を望んでも、相手はそれに応じてくれないからです。

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経験17年以上。プロのアドバイザーによる徹底解説。

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