
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
がんの放射線治療で使われるサイバーナイフとガンマナイフは、名前が似ているため混同されることが多い装置です。
しかし実際には治療できる部位や固定方法、照射回数など、多くの違いがあります。患者さんやご家族が治療方法を選ぶ際に役立つよう、それぞれの特徴と違いを詳しく解説します。
放射線治療の基礎となるリニアックとは
サイバーナイフとガンマナイフの違いを理解する前に、まず放射線治療の基本となるリニアックについて説明します。
リニアックは「直線加速器」と呼ばれる装置で、電子を直線状に加速してX線や電子線を発生させます。この装置は放射線治療において最も広く使われている標準的な治療機器です。
リニアックの特徴は、全身のどの部位にも対応できる汎用性の高さにあります。治療する部位や深さに応じて、エネルギーの強さを調整できるため、表在がんから深部に存在するがんまで幅広く治療できます。
治療は通常、月曜日から金曜日までの週5日間、2週間から6週間程度かけて行います。1回の照射時間は10分から20分程度で、痛みはありません。この期間を分けて照射することで、がん細胞を死滅させながら、正常細胞には回復する時間を与えることができます。
現在のリニアックは、コンピュータ技術の進歩により、がんの三次元形状に合わせた精密な照射が可能になっています。IMRT(強度変調放射線治療)やVMAT(回転型強度変調放射線治療)といった高度な技術も利用でき、より効果的な治療が実現されています。
サイバーナイフの特徴と仕組み
サイバーナイフは、産業用ロボットアームの先端に小型のリニアックを搭載した定位放射線治療装置です。1994年にアメリカのアキュレイ社が開発し、日本でも2000年代から導入が進んでいます。
サイバーナイフの構造
6つの関節を持つロボットアームが特徴で、患者さんの周囲を自由自在に動いて、あらゆる方向から放射線を照射できます。この柔軟性により、1200方向以上からの照射が可能になっています。
治療室には天井と床面に2組のX線透視装置が設置されており、治療中の患者さんの位置を常に監視しています。患者さんが動いてもロボットアームが自動的に追随して、病巣部を正確に照射し続けます。
呼吸追尾システム
サイバーナイフの大きな特徴として、呼吸追尾機能があります。肺がんや肝臓がんなど、呼吸によって動く臓器のがんに対しても、呼吸の動きを予測・補正しながら照射できます。このため、患者さんは息を止める必要がなく、普段通りの呼吸をしながら治療を受けられます。
固定方法と治療の負担
頭部の治療では、メッシュ状のプラスチックマスクで固定します。麻酔は不要で、痛みもありません。この緩やかな固定方法は、患者さんの身体的・精神的負担を大きく軽減します。
体幹部の治療では、病巣によっては金属マーカーを埋め込む必要がある場合もありますが、最新の第4世代サイバーナイフでは肺がんの約半数で金属マーカーが不要になっています。
治療期間と通院
サイバーナイフの治療は1回から5回程度で完了します。1回の治療時間は30分から1時間程度です。短期間で治療が終わるため、通院での治療が可能で、日常生活への影響を最小限に抑えられます。
治療可能な部位
サイバーナイフは、ガンマナイフとは異なり、頭部だけでなく全身の治療に対応できます。
【頭部・頸部】
脳腫瘍、転移性脳腫瘍、脳動静脈奇形、聴神経腫瘍、視神経鞘髄膜腫、頭頸部がん、脊髄腫瘍
【体幹部】
肺がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん、椎骨転移、オリゴ転移
2008年6月に厚生労働省が体幹部の病変に対する治療適用を承認したことで、肺がんや肝臓がんなどの症例数が増加しています。
ガンマナイフの特徴と仕組み
ガンマナイフは、脳腫瘍治療に特化した定位放射線治療装置です。日本では1990年に東京大学に第一号機が導入され、現在までに長期的な治療実績が蓄積されています。
ガンマナイフの構造
装置内には約200個(192個から201個)のコバルト60線源が半球状に配置されています。これらの線源から発せられるガンマ線が、虫めがねで光を集めるように1点に集中します。その焦点部に病巣を合わせて照射を行います。
この仕組みにより、1本1本のガンマ線は細いビームとなり、正常組織への影響を最小限に抑えながら、病巣部に集中的に放射線を当てることができます。
固定方法の特徴
従来のガンマナイフでは、頭部にピンでフレームを固定する必要がありました。脳外科医が局所麻酔下でピンを頭蓋骨に固定します。痛みは麻酔で抑えられますが、患者さんにとって心理的な負担は小さくありません。
ただし、このピン固定により誤差±0.5mmという高い精度での治療が可能になっています。これは定位放射線治療装置の中でも最高レベルの精度です。
最新型のガンマナイフでは、マウスピースとバキューム枕で固定するエクステンドシステムや、マスク固定による分割照射も可能になっています。この方法でも誤差1mm以内の高精度を実現しており、患者さんの負担軽減につながっています。
治療回数と入院期間
ガンマナイフは基本的に1回の照射で治療が完了します。入院期間は一般的に2泊3日で、治療を行うのは1日だけです。短期間で治療が終わるため、早期の社会復帰が可能です。
治療対象となる疾患
ガンマナイフは構造上、頭部の病変のみが治療対象となります。
【主な適応疾患】
転移性脳腫瘍、脳動静脈奇形、聴神経腫瘍、髄膜腫、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、三叉神経痛
特に転移性脳腫瘍に対しては優れた治療成績を上げています。病巣の大きさや広がりによっては治療の対象とならない場合もあるため、担当医との相談が必要です。
サイバーナイフとガンマナイフの比較
両者の違いを表にまとめると、次のようになります。
| 比較項目 | サイバーナイフ | ガンマナイフ |
|---|---|---|
| 放射線の種類 | X線(リニアック) | ガンマ線(コバルト60) |
| 治療可能部位 | 頭部、頸部、体幹部(全身) | 頭部のみ |
| 固定方法 | メッシュマスク(緩やか) | ピン固定または最新型はマスク固定 |
| 照射精度 | 誤差1mm以内 | 誤差±0.5mm |
| 照射回数 | 1回から5回程度 | 1回(分割照射も可能) |
| 1回の治療時間 | 30分から1時間 | 数時間 |
| 通院・入院 | 通院可能 | 2泊3日の入院が一般的 |
| 呼吸追尾機能 | あり | なし |
| 照射範囲 | 直径6cm以下 | 最大直径18mm |
治療効果の比較
放射線の当て方に大きな違いはなく、両者とも多方向から放射線を集中させる点では同じです。治療効果については、同等の成績が期待できると考えられています。
ただし、精度の点ではガンマナイフが一歩優れており、特に脳の深部にある小さな病変や重要な神経の近くにある病変に対しては、ガンマナイフの高い精度が有利に働くことがあります。
一方、サイバーナイフは分割照射が容易にできるため、大きめの病変や視神経・脳幹などの重要組織に近い病変に対しては、分割して照射することで安全性を高められます。
治療にかかる費用
両者とも健康保険の適用となります。
サイバーナイフの費用
定位放射線治療の保険点数は63,000点です。これは63万円に相当します。
【自己負担額】
・3割負担の場合:約19万円
・2割負担の場合:約13万円
・1割負担の場合:約6万円
高額療養費制度を利用することで、自己負担限度額を超えた分の払い戻しを受けられます。限度額適用認定証を事前に申請し、受付で提示すれば、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。
ガンマナイフの費用
ガンマナイフの費用は、治療、入院(差額室料を除く)、検査費用などを合わせて約60万円程度です。
【自己負担額】
・3割負担の場合:約18万円から20万円
・2割負担の場合:約12万円から13万円
・1割負担の場合:約6万円
サイバーナイフと同様に、高額療養費制度の適用を受けられます。
どちらを選ぶべきか
サイバーナイフとガンマナイフの選択は、治療する部位や病状によって決まります。
ガンマナイフが適している場合
・脳腫瘍、特に小さな転移性脳腫瘍
・脳動静脈奇形
・聴神経腫瘍などの良性脳腫瘍
・1回の治療で完結させたい場合
・最高精度の治療を希望する場合
サイバーナイフが適している場合
・直径2.5cm以上の脳腫瘍
・視神経や脳幹など重要組織の近くにある脳腫瘍
・頭頸部のがん
・肺がん、肝臓がん、膵臓がんなどの体幹部のがん
・前立腺がん、腎臓がん
・椎骨転移やオリゴ転移
・ピン固定に抵抗がある場合
・分割照射を希望する場合
・通院での治療を希望する場合
医師との相談が重要
実際の治療選択では、病巣の大きさ、位置、形状、患者さんの全身状態、年齢、通院の可否など、多くの要素を総合的に判断する必要があります。
主治医や放射線治療専門医と十分に相談し、それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、自分に最適な治療方法を選ぶことが大切です。
副作用と注意点
サイバーナイフもガンマナイフも、正常組織への影響を極力抑えた治療ですが、放射線を使う以上、副作用がまったくないわけではありません。
主な副作用
【頭部治療の場合】
・一時的な脱毛(照射部位)
・頭痛
・吐き気
・浮腫(むくみ)
・てんかん発作
・脳壊死(まれ)
【体幹部治療の場合】
・照射部位の皮膚炎
・倦怠感
・吐き気(肝臓や膵臓の治療時)
・呼吸困難感(肺の治療時)
・肋骨骨折(まれ)
高精度放射線治療のため、重度な副作用は比較的起こりにくいですが、治療後は定期的な経過観察が重要です。
治療を受ける際の流れ
サイバーナイフとガンマナイフの治療は、以下のような流れで進みます。
1. 診察と適応判定
主治医からの紹介状と検査データ(MRI、CT、PETなど)を持参し、放射線治療専門医の診察を受けます。病状、病巣の大きさや位置、既往歴などを総合的に判断し、治療の適応を決定します。
2. 治療計画
固定具の作成とCTやMRIの撮影を行います。これらの画像をもとに、専用コンピュータで詳細な治療計画を立てます。病巣への線量、正常組織への影響、照射方向などを綿密に計算します。
この計画には数日から1週間程度かかります。
3. 治療実施
計画通りに放射線を照射します。サイバーナイフは1回30分から1時間、ガンマナイフは数時間の治療となります。
4. 経過観察
治療後は定期的にMRIやCTで経過を観察します。治療効果の確認と副作用のチェックを行います。
最新の技術動向
2026年現在、放射線治療の技術は進化を続けています。
サイバーナイフでは、第4世代以降の装置で肺がんの腫瘍自体を認識する機能が搭載され、金属マーカーが不要なケースが増えています。これにより、治療開始までの期間短縮と患者さんの負担軽減が実現されています。
ガンマナイフでも、最新のIcon(アイコン)モデルではマスク固定による分割照射が可能になり、大型の病変にも対応できるようになっています。またトラクトグラフィーという神経線維の走行を描き出す技術を応用し、運動や視覚、言語に関わる重要な神経への影響を最小限に抑える治療が行われています。
【参考文献・出典情報】

