がん治療で用いられるサイバーナイフとガンマナイフは、名前が似ているのでよく混同されがちです。
どちらがどんな治療で使われ、どんな特徴があるのかを解説したいと思います。そのためにはまず放射線治療の基本であるリニアックのことから。
リニアック
略語でライナックやリナック、日本語で電子直線加速装置などと呼ばれています。
マイクロ電界を用いて、電子を真空の中を直線状に走らせながら加速する装置です。
リニアックはエックス線と電子線を放出し、出力が大きく、焦点が小さいことに特徴があります。表在から深部に存在するがん病巣まで照射ができます。しかも、照射時間は短く、広い照射野が得られ、ほとんどのがんの治療に用いることができます。
現在、リニアックは、コンピュータ技術の進歩により、がん病巣の三次元形状に合わせて治療計画通りの照射が可能になっています。
サイバーナイフ
サイバーナイフは、産業用ロボットに小型のリニアックを取り付けた外部照射装置です。
ロボットアームは6軸の関節をもち、自由自在な角度で病巣に向けてエックス線を照射することができます。
治療室の天井と床面には、治療中の患者の位置を監視するエックス線透視装置が2組取り付けられ、治療中の患者の動きを監視しています。
患者が動くとがん病巣も移動しますが、装置本体が三次元的にその方向に追随して病巣部を正確に照射していきます。照射する範囲は直径6センチメートル以下です。
脳腫瘍や肺がんなどの定位放射線治療に威力を発揮します。
がん病巣が不整形な形状に対しても均等な線量分布で照射できます。ロボットアームの動きはコンピュータで制御しますが、移動中の安全を確保するため、装置本体の動きが緩慢なことが欠点です。
ガンマナイフ
コバルト60線源を用いた「脳にあるがん治療」のための外部照射装置です。
頭にはピンでフレームが固定されます。頭部のピン固定は脳外科医が麻酔下で実施します。患者は、寝台上に寝て、コリメータヘルメットの中に頭を入れます。照射ヘッドは通常、遮蔽扉で寝台と区別されており、患者は治療時以外に放射線被ばくを受けることはありません。
装置本体には、小粒なコバルト60線源が半円球状に201個配置されています。放出されるガンマ線は1点の焦点で結ばれます。その焦点部に病巣を合わせて集中的に照射がおこなわれます。
ガンマナイフでは1回だけの照射で終わります。
照射野の大きさは最大直径18ミリメートルであり、線量分布の形状を思い通りに変化させることができます。しかし、患部の照射精度を0.1ミリメートル以下に抑えるために、患者の頭はへッドフレームにピンで固定されます。精神的にも頭を固定されるのは抵抗があります。これが一番のデメリットだといえます。