がん専門のアドバイザー、本村です。
リムパーザ(一般名:オラパリブ)は再発卵巣がん向けの治療薬として2018年に承認された薬です。
開発~販売元はアストラゼネカ社になります。この薬の効果や副作用について分かりやすく解説したいと思います。
どんな状況で、どんなタイプの卵巣がんに対して使われるか?
公式には、「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」に効果があるとしてリムパーザは承認されています。
つまり「再発のある卵巣がんに対して、すでにプラチナ系の抗がん剤(シスプラチン、カルボプラチンなど)を利用しており、効果がみられた患者さん」が対象だということです。
「維持療法」とは、分かりやすくいうと「これ以上進行させないための治療」です。
がんを消す、がんを殺すというよりも「これ以上の進行を止める、あるいは一定の縮小を狙う」ための薬であることが分かります。
再発卵巣がんの治療薬や組み合わせは数多くありますが、リムパーザ(一般名:オラパリブ)は今までのラインナップに新たに加わった薬だといえます。
リムパーザの特徴
卵巣がんで初めて使われる「PARP阻害剤」であることが大きな特徴です。
PARPとは何か、ということまで理解しようとすると遺伝子に関する複雑な話になりますが、簡単にいえば「損傷したDNAを修復するPARPという酵素の働きを阻害することで、がん細胞の増殖を抑制する」という作用により、がんの増殖を止めるための薬です。
患者サイドとしてはそういう作用の薬だ、ということを理解しておけばよいと思います。
リムパーザの効果(臨床試験の結果)
リムパーザが承認されるきっかけとなった試験は以下の2つです。
SOLO-2試験
BRCA遺伝子変異陽性プラチナ製剤感受性再発卵巣がん、卵管がんおよび原発性腹膜がん患者さんを対象としたリムパーザ錠の単剤維持療法としての有効性をプラセボ(偽薬。効果のない偽の薬)と比較評価することを目的とした試験です。
対象は295名で、最低2レジメン(2つの組み合わせ)のプラチナ製剤ベースの化学療法による前治療を受け、完全または部分奏効を示した生殖細胞系列のBRCA1またはBRCA2遺伝子変異が確認されている患者さんを無作為に「リムパーザ群」と「プラゼボ群」に分類し、薬を投与した場合としなかった場合の比較をしています。
結果、リムパーザ群とプラセボ群のPFS中央値において約2年の差を示しました。
PFSとは「治療中(治療後)にがんが進行せず安定した状態である期間のこと」です。一般的には「無憎悪生存期間」と呼ばれます。
つまりこの試験では、結果として「平均して2年間、進行せずに状態を維持できた」ということがいえます。
試験19
この試験は、「高悪性度再発卵巣がん患者さん」を対象としてリムパーザの有効性と安全性を比較評価することを目的とした試験です。
対象は265名で、BRCA遺伝子変異の有無を問わず、最低2レジメン(2つの組み合わせ)のプラチナ製剤ベースの化学療法による前治療を受け、かつそれが直前のレジメンであるプラチナ製剤感受性の再発卵巣がん患者さんを無作為に割り付け、「リムパーザ群」と「プラゼボ群」に分類し、薬を投与した場合としなかった場合の比較をしています。
この試験の結果、以下のことが報告されています。
・死亡までの期間がリムパーザ群は13.3か月。プラセボは6.7か月。
・全生存期間(OS)はリムパーザ群の中央値が29.8か月。プラセボは27.8か月。
・リムパーザ治療群の患者さんの13%が、5年間以上病勢進行を示さず治療を継続した。
※全生存期間とは=治療開始日から患者さんが生存した期間。
上記2つの試験の結果により、再発卵巣がんにおいてリムパーザは有効と判断されて承認されるに至りました。
リムパーザ(一般名:オラパリブ)の副作用の内容と頻度
SOLO-2試験で確認された副作用
リムパーザ群195人(日本人8人を含む)のうち、180人に副作用が認められました。
主な副作用は、悪心130例 (66.7%) 、貧血76例 (39.0%) 、疲労58例 (29.7%) 、嘔吐50例(25.6%) 、無力症47例 (24.1%) 、味覚異常45例 (23.1%) です。
試験19で確認された副作用
リムパーザ群136人中122人に副作用が認められました。
主な副作用は、悪心87例 (64.0%) 、疲労59例 (43.4%) 、嘔吐29例 (21.3%) 等でした。
なお、重大な副作用として、骨髄抑制 (貧血、好中球減少、白血球減少、血小板減少、リンパ球減少等) 、間質性肺疾患があらわれることがあります。内容と発生確率は以下のとおりです。
【重大な副作用】
1.骨髄抑制:貧血 (29.3%) 、好中球減少 (9.7%) 、白血球減少 (9.4%) 、血小板減少 (8.8%) 、リンパ球減少 (2.4%) 等があらわれることがあります。
2.間質性肺疾患:間質性肺疾患が起きる確率は0.6%です。
投与のしかた
成人には300mgを1日2回、経口投与するのが基本です。経口投与=錠剤のため口からカプセル形態の錠剤をのむということです。
なお薬の量や回数は患者の状態により減量されることがあります。