肝臓がんにおいては、2000年くらいまでは肝機能の悪い患者であっても手術が広く行われていました。しかし手術は成功しても、術後の肝不全など合併症によって亡くなるケースがありました。今日では肝機能に対して厳密になってきて、肝機能が悪い患者さんに関しては手術適応にはなりません。
肝機能が良好である、というのが手術適応条件の基本です。ですので、肝機能の悪い患者の手術ケースは減ってきているのです。
そもそも肝臓がんの大きな原因には「肝硬変」があります。肝硬変とは肝細胞が破壊され、組織が硬くなって機能が悪くなった状態をさします。それがどの程度かによって手術適応の有無や、切除範囲の大きに関わってくるのは自然な流れだといえます。手術適応と判断されるのは、以下のようなケースです。
手術適応の条件
肝機能の良し悪しから分類される「肝障害度」がA、B、CのA、Bの段階にあること。Aは「ほぼ正常な肝臓か、慢性肝炎」、Bは「軽度から中等度の肝硬変」、Cは「高度の肝硬変」という段階です。そして、肝臓以外の臓器へのがんの転移がなく、がんの個数は1個、もしくは「2、3個」まで、です。
ただし、この適応条件は基礎であり、応用があります。
肝障害度はAとBであっても肝硬変が悪化すると異常数値を示す総ビルビリンが2.0mg/dlを超えた場合は、まず手術適応にはなりません。ですので肝障害度がBでも手術適応とはなりますが、よりAに近いBでないと厳しい、と認識する必要があります。
肝機能が良く、肝臓がんが1個で3センチ以上あると手術の安全性は高まります。肝臓がんが2、3個の場合も手術の適応ではありますが、このケースでは手術を行っても治療成績がさがります。やはり、手術はできることならがんが1個の方が望ましい、とされているのです。
肝臓がんの状態は手術を判断する場合の大きなポイントとなるので、まずは自分の状態をしっかり正確に認識しておくことが大切です。
以上、肝臓がんの手術についての解説でした。