がん細胞は、その発生当初は、体の中のセキュリティシステムである免疫細胞が働いて死滅すると考えられていますが、ある段階でこの免疫の監視をかいくぐるがん細胞の集団が出現します。
それでもまだしばらくは、がん細胞が増殖できない状態にあります。しかし、遺伝子の変異が加わったり、がん細胞の周りの環境が変化したりして、免疫細胞に負けないがん細胞が増えます。そして、やがて「シコリの乳がん」になると考えられます。
がん細胞が免疫細胞に負けない理由として、①自分ががん細胞とわかるアンテナを出さないことで、免疫細胞に「がん細胞」と認識されないので攻撃されない、②インターフェロンなどのがん細胞を攻撃するものを効かないようにする、③味方のはずの免疫細胞にがん細胞が影響して味方同士闘わせるように仕向ける、など報告されています。このように巧妙な方法で、がん細胞は体の中で増え続けます。
しかし、医療行為としての免疫療法については乳がんへの効果は不確定です。乳がん細胞のタンパク質から作成したワクチン療法や、血液を採取して乳がんと闘える免疫細胞の戦士を増やして患者に戻す免疫療法などは、まだ十分に治療の成果をあげていません。