前立腺がんは、男性ホルモン(アンドロゲン)が刺激となり、分化や増殖を繰り返します。そのため、外科的去勢術(両側の精巣の外科手術による切除)やLH-RHアゴニストまたはアンタゴニストなどによるホルモン療法は、大変有効な治療法だといえます。ただし、これらのホルモン療法には限界があります。
男性ホルモンの95%は精巣(睾丸)から分泌されますが、LH-RHアゴニスト・アンタゴニストによるホルモン療法では、それを抑制する効果があります。しかし、男性ホルモンの5%は副腎からも分泌されています。
精巣由来の男性ホルモンが枯渇すれば、がん細胞は副腎由来の男性ホルモンを使って生き延びようとします。そのため、副腎由来の男性ホルモンも合わせてシャットアウトできるように、MAB(CAB)療法が取り入れられています。
しかし、がん細胞は男性ホルモンを断たれてもなお生き延びるために、男性ホルモンがなくても増殖する性質を獲得していきます。そのため、精巣からの男性ホルモンを遮断するホルモン療法が効かなくなることを、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)といいます。
ホルモン療法が効かなくなるまでの期間は個人差がありますが、短くて2年ほど、長くて約7~10年です。一般的に、グリソンスコアの数値が低い場合はホルモン療法が長く効き、高い場合は効く期間が短い傾向があります。
新しいホルモン薬や抗がん剤が登場
去勢抵抗性前立腺がんになると、当初のホルモン療法は効かなくなるのが普通です。
そのため、二次ホルモン療法として、効果がなくなったものとは別のタイプのホルモン薬やステロイド薬が使われる(二次ホルモン療法)など、いろいろなアプローチがとられていました。
そして、二次ホルモン療法のあとは、抗がん剤(ドセタキセル)を使った化学療法が行われていたのが通常の流れとなっています。
しかし、ここ数年、前立腺がんに対する新薬の開発が活発に行われており、新しいホルモン薬や抗がん剤が登場しています。それが「アビラテロン酢酸エステル(ホルモン薬)」「エンザルタミド(ホルモン薬)」「カバジタキセル(抗がん剤)」です。
薬が増えれば新たな課題も出てきますが、これまで化学療法後はあきらめるしかなかった治療に、新たな選択肢が登場したのは確かです。
去勢抵抗性前立腺がんの定義
4週間以上あけて測定したPSA値が、最低値より25%以上上がり、その幅が2.0ng/ml以上だった場合とされています。
去勢抵抗性前立腺がんの治療法4つの選択
・アビラテロン酢酸エステル(商品名:ザイティガ)によるホルモン療法
・エンザルタミド(商品名:イクスタンジ)によるホルモン療法
・ドセタキセル(商品名:タキソテール)による抗がん剤治療
・カバジタキセル(商品名:ジェブタナ)による抗がん剤治療
アビラテロン、エンザルタミド、カバジタキセルは2014年に発売された薬で、ドセタキセルは、従来の抗がん剤です。
新しい3薬に関しては、どの治療法から試したほうがよいのかといった指針は、まだ明確にはされていません。また、どのような人に向いているかということもはっきりわかっていません。
以上、前立腺がんの治療法についての解説でした。