LH-RHアゴニストは、脳の下垂体に作用して、LH(黄体化ホルモン)およびテストステロンという男性ホルモンの分泌を抑え、がんの進行を阻害する薬剤です。
通常、脳の視床下部でつくられるLH-RH(黄体化ホルモン放出ホルモン)というホルモンは、下垂体にLHをつくるよう指令を出しています。LHは、精巣にテストステロンをつくるように働きかけるので、それにより前立腺がんの細胞が増殖してしまいます。
LH-RHアゴニストは、LH-RHと構造が似ている薬で、継続的に用いると、下垂体が常に刺激された状態になり、LHを放出しつづけます。そのため、治療開始後約4日間はLHの分泌量が一時的に増えるので、テストステロンの分泌量も増加します(フレアアップ現象)。
しかし、その後はLHが枯渇したような状態になり、精巣が刺激されなくなるのです。結果、精巣でのテストステロンの生成が止まり、がん細胞の増殖が抑えられるという仕組みです。
この治療法は、定期的な通院が必要で、さらに経済的負担が大きいことがデメリットですが、外科的去勢術のような苦痛がなく、外来治療のみで簡単なことから、選択されることが多いようです。
また、最近、LH-RHアンタゴニストに分類されるフレアアップが起こらない治療薬が開発されました。
ホルモン療法によく使われるLH-RHアゴニスト
・リュープロレリン酢酸塩(商品名:リュープリン)
3.75mgを月1回注射、もしくは、11.25mgを3カ月に1回注射
・ゴセレリン酢酸塩(商品名:ゾラデックス)
3.6mgを月1回注射、もしくは、10.8mgを3カ月に1回注射
以上、前立腺がんのホルモン療法についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。