がんが食道の壁の最も内側の粘膜にとどまり、転移のない0期の段階であれば「内視鏡治療」が行われます。
その内視鏡治療には「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」と「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」があります。EMRはがん病巣を生理食塩水などで浮きあげてスネアといわれるループ状ワイヤをかけ、スネアを締めて高周波電流を流し焼き切る、という方法です。適応はがん病巣の直径が2センチ以内の小さいがんです。
いっぽう、2センチを超える0期のがんにも対応できるのがESDで、今日の内視鏡治療はESDが中心になっています。
ESDはがん病巣の周囲に高周波ナイフでマーキングをし、その後、がん病巣の下に止血薬を配合した薬液を注入、高周波ナイフでマーキングの外側を切開した後に、がん腫瘍を剥離する方法です。
剥離できる病巣の大きさに制限はありません。食道の直径は2~3センチですが、その全周を切除することも物理的には可能です。ただし、全周を切除すると狭窄が起きます。ステロイドを注入したり、バルーンによる拡張を行ったりといった対応が必要になります。このESDが行われるようになって、内視鏡治療の適応患者は増えました。
ESDは全周の切除も可能ですが、治療のガイドラインとしては、「食道の粘膜層にとどまっている」ことが条件となっており、この治療はステージⅠ期でも行われます。
ステージⅠかⅡかの判断が難しい場合、まずはESDを行います。それを病理で調べ、粘膜内にがんがとどまっていれば治療は終了です。もう少し深い粘膜下層までがんが達していると、ESDのあとに再度「手術」で対応するか、もしくは予防的な「化学放射線療法」を行います。ESDを行って病理で評価して次のステップに移ろう、というのが現在の治療の主流となっている方法です。
以上、食道がんについての解説でした。