がん専門のアドバイザー、本村です。
当記事では乳がんのサブタイプについて解説します。
ルミナルAとは、ホルモン受容体陽性かつHER2陰性のタイプのことをいいます。
ルミナルBはHER2陽性の場合とHER2陰性の場合があり、一見おとなしいのですが、悪性度が高いこともあります。
またルミナルAはホルモン療法のみで腫瘍抑制効果や再発予防を望めるのに対し、HER2陰性のルミナルBはホルモン療法に抗がん剤治療を追加、HER2陽性のルミナルBはさらに抗HER2療法を追加することが推奨されています。
その他のサイブタイプ
全体の10~15%を占める「HER2エンリッチド」は、ホルモン受容体陰性でHER2陽性の乳がんです。これは悪性度の高いがんですが、抗HER2療法がとても高い効果を示します。
「ベーサルライク」はホルモン受容体陰性、HER2陰性のタイプです。ホルモン療法も抗HER2療法も効かないので、抗がん剤治療のみ適応となりますが、抗がん剤が比較的効きやすいことも分かっています。
よく耳にする「トリプルネガティブ」は臨床的な分類名、ベーサルライクは遺伝子発現に着目した分類名で、イコールではないものの、80%程度が一致するとされています。
ルミナルAとルミナルB(HER2陰性)の区別はKi(キー)67という指標や、がんのグレード(悪性度)などから総合的に判断し、ホルモン療法に抗がん剤治療を追加するかどうかが考えられます。
サブタイプの判断方法は?
そもそもサブタイプというのは、がんの遺伝子発現のパターンによる分類です。遺伝子発現解析検査は進歩、簡便化しており、海外ではサブタイプをかなり正確に診断できる「PAM50」の臨床検査用キットが発売されています。
しかし日本では普及しておらず、日々の臨床検査で調べることができるホルモン受容体、HER2タンパクなどを指標にして、サブタイプを”分類して推測“しているのが現状です。
このため、診断が外れてしまうこともありえます。例えばHER2陽性と診断されたが本当は陰性で、抗HER2療法が効かないなどということが実際にあります。
遺伝子発現解析検査を積極的に導入しようという動きはあり、いずれ多くの先進医療などの形で普及するときが来ると想定されています。ただし遺伝子発現解析検査も絶対ではありません。どんな検査も万能ではないことを念頭に置き、薬の効果など経過をよく見ながら治療を進めていくことが重要です。
以上、乳がんのサブタイプについての解説でした。