放射線治療は、X線やガンマ線といった高エネルギーの光を患部に照射する治療法です。放射線には、細胞のDNAを破壊する作用があるので、それを利用してがん細胞を攻撃します。
がん細胞とともに正常な細胞も傷つきますが、正常な細胞は時間とともに回復します。でも、がん細胞は正常な細胞にくらべて放射線によるダメージを受けやすいため、適量の放射線をくり返し照射することによって、死滅させることができるのです。
子宮頸がんの放射線治療には「外部照射」と「膣内照射」があり、多くの場合、2つの方法が併用されます。
正常な細胞への影響を抑えながら行う
外部照射は、体の外から放射線を当てる方法。CT画像をもとに慎重に照射範囲を決め、正常な細胞にできるだけ影響を及ぼさないように行います。
1回の治療時間は10~20分です。膣内照射は、膣から子宮に小さな器具(アプリケーター)を入れ、病巣に直接、放射線を当てる方法。照射時間は10~20分ですが、準備などを含めると1~1.5時間ほどかかります。
放射線治療の回数
放射線の外部照射は、通常、5日照射したあと2日休む、というぺースで25~30回行います。膣内照射は週1回、合計3~5回行います。照射による熱さや痛みはありません。
ただし、膣内昭射の場合、膣、子宮内のアプリケーターに加え、膀胱、直腸にも放射線を測る器具をを挿入する場合があります。照射そのものの痛みはありませんが、挿入時の違和感や痛みをやわらげるため、鎮痛剤などが使われることもあります。
正常な細胞も放射線の影響を受ける
放射線は正常な細胞にもダメージを与えるため、放射線による治療中や治療後に、何らかの副作用が出ることがあります。副作用の現れ方には個人差があるので、体調の変化に気づいたときは早めに医師に相談しましょう。
だるさや皮膚炎、下痢などに注意
放射線による治療中や治療終了直後に見られる副作用には、放射線宿酔、皮膚炎、下痢などの消化器症状、白血球数の減少・貧血などがあります。
放射線宿酔は、だるさや吐き気といった「船酔い」のような症状が特徴で、つらい場合は吐き気止めなどの薬で対処します。
皮膚炎は外部照射によって肌の乾燥や変色などが起こるもの。照射部位の肌を刺激しないように注意するほか、処方された軟膏などを使うのも有効です。
下痢の場合は処方された薬による治療に加え、水分補給を心がけることも大切です。白血球数の減少は程度が軽く、薬物治療などは必要ないことがほとんど。いずれの場合も、症状が強ければ、医師の判断で放射線療法を中断することがあります。
時間をおいて現れる副作用も
治療中や治療終了直後に現れるものに加え、治療終了から数カ月以上たってから放射線療法の副作用が現れることもあります。
おもなものに、膀胱炎や排便の異状、膣の委縮による性交痛、卵巣機能の消失による更年期症状などがあります。
異状に気づいたら早めに医師の診察を受け、他の病気が原因でないことをたしかめたうえで、治療や日常生活の工夫にとり組みましょう。
放射線療法の副作用
<治療中または治療終了直後に見られるもの>
・放射線宿酔
倦怠感、食欲不振、吐き気など、「船酔い」のような症状に悩まされる。無理なく食べられるものを食べ、水分をこまめにとる。吐き気止めなどの薬が処方されることもある。
・皮膚炎
外部照射の影響で皮膚が炎症を起こす。乾燥やかゆみ、ひりひりした痛み、肌が赤くなったり黒ずんだりするなど。
治療のためクリームや軟膏、かゆみ止めの塗り薬などが処方される。照射部位をこすらない、肌に触れる衣服の生地はやわらかいものを選ぶなど、予防を心がけることも大切。
・下痢
腸の粘膜が放射線の影響を受けるために起こる。症状に応じて、下痢を抑える内服薬が処方されたり、水分・栄養補給のための点滴を行ったりする。
・白血球数の減少
血液をつくる幹細胞がダメージを受け、白血球や血小板の減少、貧血などが起こる。程度が軽く、とくに治療は必要ない場合が多い。減少の度合いがとくに大きい場合は、薬物治療を行うこともある。
<治療後、数カ月たってから見られるもの>
・膀胱炎、排便の異常
薬物治療や食事の工夫で改善する。ただし、重症の場合は手術が必要なこともある。
・膣の委縮
放射線の影響で膣が委縮し、かたくなることがある。性交痛がある場合は専用のクリームなどを使うとよい。
・卵巣機能の焼失
卵巣機能が損なわれ、閉経前でも、のぼせ、頭痛といった更年期症状が現れる。症状に応じて薬が処方される。
以上、子宮頸がん放射線治療の副作用についての解説でした。