筋層非浸潤がんと異なり「筋層浸潤がん」の予後は決してよくありません。いったん筋層に浸潤すると、膀胱を取っても、T2であれば70%、あるいは80%ぐらいの5年生存率となっていますが、T3になってもう少し筋層の奥に入ってしまうと、5年生存率は、半分ぐらいの35~40%ほどになります。
膀胱がんでは、1度転移を生じると治療法の選択肢は限定され、ほぼ「抗がん剤治療の継続」しかありません。ここについては10年以上、新しい治療法が開発されていないのが現状です。
膀胱温存療法という選択肢
筋層浸潤の膀胱がんの治療の原則は、膀胱全摘除術でした。診療ガイドラインでも、一様に筋層浸潤がんは、膀胱全摘除術とあります。
しかし、日本泌尿器科学会の診療ガイドラインを含めて海外でも、いくつかの診療ガイドラインでは、限定された症例には、膀胱温存療法が治療選択の1つとして推奨されるようになりました。
そのため筋層浸潤がんと診断され、膀胱を余儀なく全摘出しなければならない状況になったときには、セカンドオピニオンを得ることは大切です。
なお、膀胱を摘出することになった場合でも近年では様々な尿路変向術が工夫されています。
自然排尿にはなかなか近づけませんが、高度な技術によって自然な排尿に近い状態に近づける努力が続けられています。どういった方法を選ぶのか主治医とよく相談して特徴を把握しておきましょう。
以上、膀胱がんの治療法についての解説でした。