前立腺がんの手術には、従来の開腹手術や内視鏡を用いてテレビモニターを見ながら行なう腹腔鏡手術があります。最近は、欧米や韓国を中心にロボットを使った手術が急速に発展してきました。
前立腺がんの手術のメリットとは
手術のメリットは即効性だといえます。
無事に終われば1、2週間で社会復帰が可能です。放射線治療のように治療期間が長期に渡ることもありません。麻酔技術の進歩もあり、術中術後の合併症も少なくなっています。
問題は技術面です。医師の手術技術が一定の水準に達するためには、ある程度の経験が必要です。
前立腺全摘出術で最も重要な課題の1つは、神経温存が可能かどうかです。これには「神経を温存してもがんはすべて取り切れるか」というがんの進行度の要素と、「温存手術を上手にこなせるか」という医師の技術に関する要素があります。
神経を温存できれば、術後の排尿機能や性機能温存の可能性が高くなります。前立腺全摘出術の際、神経温存手術を目指すかどうかは、およそ次の3つの視点から考えることがポイントです。
1.個人的な視点:年齢、自身の希望
2.医学的な視点:がんの病期、がん病巣の位置
3.医師側の技術の視点
手術方法を選ぶときのポイント
では、開腹手術か、腹腔鏡手術か、または、最近のロボット手術かの選択はどうしたらよいのでしょうか?医学的にみれば、次のような判断要素があります。
1.治療の効果と意味:治療後の再発率/生存率
2.手術の安全性:出血量、手術創の大きさ(侵襲性)、術中術後の痛み、入院期間、手術による後遺症
3.コスト
4.その手術が受けられる施設かどうか
すべての病院でこれらの治療が何でもできるというわけではないので施設の選択も問題となります。
現時点では、治療後の再発率や生存率には、これら3種類の手術法には明らかな差がないといえます。手術時間にもあまり差がありません。出血量や手術創の大きさ、そして、入院期間は、開腹手術が不利だといえます。
ロボット手術といっても、ロボットが勝手に手術してくれるわけではありません。
現在は、医師の手先の操作が直接、機械の先の手術器具に伝わり、狭い術野でも容易に切除や縫合といった手術操作ができることがメリットです。術者は、モニターを見ながら自然な姿勢で手術操作ができるため、手術中の医師の負担は軽減されます。
このロボット手術は保険適用が認められています。ロボット補助下前立腺摘除術は、すでにアメリカでは、前立腺全摘出術の恐らく80%以上を占めており、お隣り韓国でも猛烈な勢いで増えています。日本でも、1台につき1億円ほどするこの装置を導入した施設では、ロボット手術の件数が増えています。
以上、前立腺がんの手術についての解説でした。