前立腺がんは、現在、日本で最も急速に増えているがんです。
もともとは、欧米で多く、アジアでは非常に頻度の少ないがんでした。死亡率では、欧米では10万人あたり、およそ30~40人の人が前立腺がんで亡くなっていますが、日本では1960年代は2、3人でした。
そこからずっと上昇していますが、2000年近くになっても、まだ10万人当たり10人には至っていません。つまりヨーロッパ・アメリカに比べると、まだ3分の1以下だということです。
日本の罹患率は2000年代の前半までは急激に増加しています。この増加の状況から将来を予測した報告では、さらに増加が続き2020年頃までには肺がんや胃がんについで多くなるとの予測もありましたが、最近の統計解析ではこの増加は頭打ちになってきています。
これは、PSA検診(前立腺特異抗原検査)の普及によって早期の前立腺がんが発見されはじめたことの効果だと考えられています。そのことで死亡率も減少しはじめています。
しかし、前立腺がんは病態が多様なうえに、治療法もとても多様です。そのため、それだけ患者さんが「悩む」機会の多いがんともいえます。上手につきあえば、長くコントロールすることも可能なタイプのがんです。とはいえ、一部に進行のはやいタイプもあるので、その見極めも大切です。