現在、卵巣がんの薬物療法では、プラチナ製剤とタキサン系製剤の抗がん剤を併用するのが一般的です。
プラチナ製剤については、初めはシスプラチンが使われていましたが、腎障害や強い吐き気などで入院治療が必要なため、最近ではどちらかといえば副作用が少ないカルボプラチンを使うことが増えています。
タキサン系ではパクリタキセルが最もよく使われており、術後化学療法のほか、進行・再発卵巣がんの治療にも用いられています。
そのほかでは、イリノテカン、ノギテカン、ゲムシタビンがよく用いられます。ゲムシタビンやトポテカンに関しては、少々特殊な方法である「公知申請」で健康保険による治療が認められています。
日本で用いられている薬の多くは、厚生労働省の承認がおり、健康保険が適用されていますが、適応外であっても海外で標準的に使われていて、専門家らが「必要性が高い」と判断した薬については、承認前でも保険適用を認めるようになりました。これが「公知申請」で、ゲムシタビンやノギテカンはこうした経緯で使えるようになりました。
卵巣がんによく使われる薬
<抗がん剤>
・プラチナ製剤
シスプラチン(CDDP):製品名ブリプラチン、ランダ
力ルボプラチン(CBDCA):製品名パラプラチン
ネダプラチン(NDP):製品名アクプラ
・代謝拮抗薬
ゲムシタビン(GEM):製品名ジェムザール
・植物アルカロイド
パクリタキセル(PAC):製品名タキソール
ドセタキセル(DOC):製品名タキソテール
イリノテカン(CPT-11):製品名カンプト、トポテシン
ノギテカン(NGT):製品名ハイカムチン
・アルキル化剤
シクロホスファミド(CPA):製品名エンドキサン
<分子標的薬>
ベバシズマブ(BEV):製品名アバスチン
初回治療はAC療法が基本 その後は単剤で対応する
卵巣がんの薬物療法の初回治療では、カルボプラチンとパクリタキセルを併用する「TC療法」をします。これは国内外の複数の研究で、効果が最も高く、しかも副作用は比較的少ないと認められた方法です。
2次治療以降で鍵となるのは、「プラチナ製剤抵抗性卵巣がん」です。プラチナ製剤に抵抗性(耐性)が生じて効きにくくなった状態で、1度TC療法をした後、6カ月以内に再発した状態をこう呼んでいます。。その場合、プラチナ製剤以外の抗がん剤(イリノテカン、ゲムシタビン、ノギテカンなど)を単剤で使います。
6カ月以降で再発した場合は、プラチナ製剤に対して感受性が残っている(耐性が生じていない)とみなされるため、TC療法を再開させることも可能です。
このほか、期待できる治療法としては、おなかに直接抗がん剤を投与する「腹腔内化学療法(IP療法)」やTC療法のパクリタキセルの1回の投与量を減らして回数を増やした「Dose dense TC療法」などもあります。
分子標的薬については、TC療法に分子標的薬のベバシズマブを併用する方法が2013年より用いられます。
以上、卵巣がんの薬物療法についての解説でした。