がんの「免疫療法」とは、元来人間のからだに備わっている免疫力を高める治療です。
手術、抗がん剤、放射線など「がんを攻撃して除去しようとする」従来のがん治療法とは異なり、免疫療法ではリンパ球などの免疫をつかさどる細胞を増やしたり、人工的なペプチドを注入したりして、がんと闘う自らの免疫力を増進させる点に特徴があります。
ただ、まだ研究がはじまったばかりで、手探り部分が多い治療法でもあります。肺がんについては、腫瘍の縮小効果自体がまだ確実ではありません。
肺がんに対する免疫療法の使われ方
免疫療法は、ほかの治療法をおこなうのがむずかしい進行がんや転移がん、再発がんに使用されることが多く、早期のがんや手術が可能ながんに対して活用されることは稀です。
また免疫療法は、直接的にがんを死滅させる治療法の代替とはなりませんが、そうした治療法をおこなう場合にも、免疫力はその効果に影響を及ぼすと考えられ、免疫療法と組み合わせること(集学的治療)で、より効果を高めようと考えるのが主流です。特に免疫療法は化学療法と並行して行われることが多いです。
免疫療法の流れ
免疫療法では、まず体内から血液を取り出します。注射器で採血することもありますし、アフエレーシス(成分採血)といって、血液中のりンパ球と単球のみを採る方法もあります。
つぎに、薬剤で刺激を加え、この血液中のリンパ球を増やします。そして2週間後に点滴をおこなって、リンパ球の増えた血液を体内に戻します。
通常は、これを2週間ごとに6回繰り返し、約3カ月で1クールとします。入院の必要はありません。ほかにも免疫療法はいろいろと研究が進められています。
たとえば、ベプチドワクチン療法といって、がん細胞を殺すリンパ球を誘導するペプチドを人工的に合成して、それを注射する方法もあります。この方法ではがん細胞だけを特異的に攻撃することを目的としています。
免疫療法の費用と副作用
免疫療法は基本的には保険適用外です。免疫療法の種類や病院によって治療費は異なりますが、1回数万円から高い場合には100万円以上に及ぶこともあります。
また、多くの場合、複数回治療を受けることになるため、費用はかなりの高額になります。
免疫療法は放射線療法や化学療法など、ほかの治療の副作用を和らげる効果も期待されています。しかし副作用が少ないといわれていまますが全くないわけではありません。
以上、肺がんと免疫療法についての解説でした。