手術は、全身麻酔を使っておこないます。具体的には、背中から肩甲骨の内側より前に向かって皮膚を切開し、肺がみえるようにしておこないます。肋骨を切ることはありません。
そのほか、胸腔鏡手術(VATS)という方法もあります。胸腔鏡生検と同様、胸に小さな穴をあけ、ファイバーとCCDカメラを挿し込んでおこなう方法です。
具体的な肺がん切除の方法
皮膚切開によって肺がみえる状態になると、つぎはがん病変と肺の一部を切除します。切除には、いくつかの方法があります。
1.肺葉切除法
肺葉切除は、もっとも多くおこなわれている切除術です。肺は、右肺が上葉・中葉・下葉の3葉、左肺が上葉と下葉の2葉に分かれています。肺葉切除はこのうち1つか2つの葉を切除する方法です。
2.部分切除・区域切除法
部分切除・区域切除は、がん病変部位が小さく、狭い範囲にとどまっているときにおこないます。肺のごく一部だけを切除します。ほかの切除術に比べて、切りとる部分は少なくてすみますが、がん細胞が残ってしまう確率がかなり高くなります。確実に全てのがんが切り取れると判断されたときのみ、この方法が採用されます。
3.一側肺切除(いっそくはいせつじょ)法
一側肺切除は、一方の肺を全部切りとります。これは「肺の全摘出」と同じ意味です。がんが肺の根元近くまで及んでいるときにおこなわれますが、からだへの負担が大きくなります。
周辺のリンパ節の切除
がん細胞は、しばしばリンパ節に転移します。このため、肺がん手術のときには肺門や縦隔といった周りのリンパ節も切除(リンパ節郭清。かくせい)します。切除したリンパ節は顕微鏡で観察し、リンパ節にがん細胞があるかどうかを確認します。
気管支の形成
気管や太い気管支にがんがあると、一側肺を根元からすべて切除することになります。その結果、片肺の機能はすべて失われます。このようなときは肺の機能をできるかぎり保つため、根元の一部だけを切りとって、がんに侵されていない残りの気管支をつなぐ形成術をおこないます。
肺がんの手術は肺の一部を切除するため大きなダメージに
肺がんの手術は、がんのある部分だけを対象にする局所的なものだと医師からは説明を受けますが、実際には「腫瘍だけ」を切除するわけではなく、片肺全てや葉ごと切除することになることがほとんどです。
手術では、目にみえるがん病変を余裕をもって取り除きますが、すべて取り除けたかどうかは、残念ながら断言することはできません。
そのため、術後に化学療法(抗がん剤治療)をおこなうことがあります。術後の化学療法は、扁平上皮がんや腺がんで効果があります。なお、術前に化学療法をおこなって、がんを小さくしてから手術をすることもあります。
以上、肺がんの手術についての解説でした。