病院で行われる(保険対象の)子宮頸がんの標準治療には、大きく3つの方法があります。
がんが広がった部分を切除する「手術療法」、放射線を当ててがん細胞を死滅させる「放射線療法」、抗がん剤を使ってがん細胞の増殖を抑える「化学療法」で、それぞれの特徴を生かし、単独で行われたり、組み合わせて行われたりします。
治療法を選択するときにまず考えられるのは、がんがどのような状態であるのかということです。また、その人の年齢や、合併症なども大切な要素となります。
子宮を切除するなど、治療法によっては、妊娠や出産にも大きく影響を与えます。これから妊娠・出産を考えている人は、治療法の説明をよく聞くことはもちろん、パートナーとも話し合って、自分の希望をしっかり伝えることが大切です。
手術療法と放射線療法が治療の中心
日本では、早期の子宮頸がんには手術療法を行うのが基本ですが、最近は放射線療法も増加しています。手術で切除する範囲は、がんの広がりや大きさ、妊娠の希望などで決まり、切除範囲により、入院期間や、術後の後遺症なども大きく違ってきます。
がんが骨盤壁にまで広がると、治療は放射線療法や化学療法が主体になります。化学療法は、全身に対して効果のある治療法で、放射線療法と組み合わせて行ったり、骨盤内から外に広がったがんの治療として行ったりします。
放射線療法と化学療法を同時に行う治療法は、同時化学放射線療法(CCRT)と呼ばれ、放射線療法を単独で行うより高い効果が得られるため、用いられることが多くなっています。
がんの進行期によって、基本的な治療方法がおよそ決まります。
子宮頸がんの治療法を選択するときには、年齢や妊娠の希望、合併症などが重要な判断材料となります。ただし、その土台となるのはがんの進行期(ステージ)です。進行期ごとに、多くのデータをもとにした標準的な治療方法が考えられています。
上皮内がんも含め、Ⅱ期までは多くの場合、手術を検討します。また、ⅠB期やⅡ期では、放射線療法も手術と同様に効果を得られるとされ、手術と並んで選択肢にあげられるようになっています。
手術の切除範囲はがんの状態によって異なります。また、術後の病理組織検査の結果、再発のリスクが高いと考えられれば、手術後に補助療法として、放射線療法や同時化学放射線療法を行うこともあります。
Ⅲ期、ⅣA期になると、同時化学放射線療法が標準的な治療法になります。そして、がんが小骨盤腔から遠くにまで広がっていると考えられるⅣB期では、化学療法で全身治療を行い、痛みなどの症状が強ければ、緩和するために放射線療法などを行ってQOL(生活の質)の向上を考えるのが基本です。
腺がんの場合には、扁平上皮がんとは違った治療法に
これは子宮頸がんの多くを占める扁平上皮がんの場合の考え方です。近年増えている腺がんは、初期の段階での診断が難しく、扁平上皮がんとくらべて進行も早く、予後も悪いがんです。
また、腺がんは病変が頸管の内側に起こることも多く、子宮を残すことによる再発のリスクが大きいと考えられ、上皮内腺がんであっても子宮の摘出がすすめられます。放射線療法や化学療法が効きにくく、卵巣への転移も多い傾向があり、より慎重に治療法を考える必要があります。
以上、子宮頸がんの標準治療についての解説でした。