がん専門のアドバイザー、本村です。
当記事では食道がん手術後の食事・食生活について解説します。
手術後の食事に関しては、「1.ゆっくり、2.よくかんで、3.食べすぎない」ことが重要です。
1回の食事に少なくとも30分以上はかけましょう。そして、食べたものがドロドロになるまでよくかんで、口の中で胃の仕事をする、という意識が必要になります。
食事量は物足りないくらいがちょうどよく、徐々に自分のペースで食事量を増やしていきましょう。どうしても物足りないときは間食をして少しずつ食べるようにしたほうが消化に優しいといえます。
手術後は空腹感や満腹感は手術前と同じというわけにはなかなかいきません。食事の時間を決めて定期的に食事をとるようにして、徐々に通常の食生活に戻していきましょう。
・規則正しい食生活を心がける
手術後2~3か月は手術前のような空腹感や満腹感はありません。どうしても量が足りなくなるので間食を入れて「1日5食程度」の回数を時間を決めて摂ることが理想的です。深夜の食事や食事をとってすぐ横になることは避けましょう。
・ゆっくりよくかんで食べる
早食いは消化不良による下痢やダンピング症候群を発症させる原因となります。よくかんで、今までのように機能しなくなった胃の代わりをして消化吸収を助けましょう。
また、食道と胃などの再建臓器をつなげた吻合部は、手術をする前の臓器と比べると狭くなっています。よくかまないで飲み込むと、つかえる可能性がありますので要注意です。食べたものがつかえ、水も通りにくい状態になったら、すぐに担当医に連絡してください。
・消化のよいものをバランスよくとる
唐辛子などの刺激香辛料やカフェインを含むコーヒーなどの飲料、炭酸飲料などのように胃腸を刺激するものや脂っぽいものは、排便を不規則にします。また、極端に1種類のものを大量にとるような食事は、体調を崩すもととなるので避けましょう。
・水分をしっかりとる
ほかに病気があり制限されている場合を除いて、水分はしっかりとりましょう。特に起床時の1杯の水には、腸を刺激して排便を促す働きがあります。
・アルコールはNG
食道がんの発がんには、アルコールが深くかかわっています。食道がんの手術のあと、お酒を飲むことは、残っている食道やほかの部位に発がんを起こすリスクを高めることになります。
・腸閉塞のサインに注意する
食道がんに限らず、おなかの手術をした人では、手術後の癒着などの影響で腸閉塞が起こることがあります。おなかが張ってきたり、便通がよくなかったり、おならが出なくなったり、気持ち悪くなって吐いたり、おなかが痛くなったりする症状は、腸閉塞の可能性があります。
このようなときは食事の量を控え、それでも治らなければいったん食事を休みましょう。1日食事をやめてもよくならなかったり、おなかの痛みや吐き気があれば、担当医に相談しましょう。
食道へのステント留置
がんが進行すると、食道が腫瘍でふさがる、気管に孔が開くなどで、自分の口から食事をとるのが難しくなることがあります。その場合、胃に直接食べ物を送る胃ろうや、静脈に栄養を送る静脈栄養などの方法もあります。
しかし食べることは、生活のなかの大きな楽しみです。自分で食事をすることを望むときは、ステントという管を食道に入れ、食べ物の通り道を確保する治療がおこなわれることがあります。
自分で食べられるようになり、QOL(生活の質)が向上しますが、合併症が起こることも多く、簡単にはいかないのも現状です。
早食いと食べすぎは不快な症状の原因
切除手術後は、食後にダンピング症候群が起き低血糖になって頭痛や動悸、めまいなどの不快な症状が起きます。症状が現れやすいので、旱食いと食べすぎを極力避けるようにします。
<ダンピング症候群>
健康時、食物は一度胃にたまり、ゆっくりと小腸へ送られるます。手術で胃を頸部や胸部上部まで持ち上げて再建食道にするため、食物を貯蔵できなくなります。それによって食後に起こる不調をダンピング症候群といい早期と後期があります。
・早期:食後30分以内に起こる
食べ物が一気に腸に送られると、消化のための腸液が大量に分泌される結果、腹痛、めまい、動悸、冷や汗などの症状が現れる。食後に楽な姿勢で休めば症状は自然に治まる。
・後期:食後2~3時間たってから起こる
食後は血糖値が上がり、インスリンというホルモンが分泌されて血糖値が下がる。食べる量が少なすぎると、血糖値が下がりすぎて、頭痛や冷や汗、動悸、めまいなどが現れる。症状が現れたら、砂糖水やアメ玉を口にして血糖値を上げる。
食道がん手術後の生活
退院が近づくと、担当医や看護師から、退院後の生活の注意点についての説明があります。わからないことは遠慮なく質問して、不安のない退院後の生活を送れるようにしておきましょう。開腹手術を受けた場合の一般的な注意点は以下のとおりです。
・自分の体力の回復に合わせて、徐々に活動範囲を広げる
手術のために入院生活をしていると、ずいぶんと体力が落ちた、疲れやすくなったと実感されるかもしれませんが、手術の程度により異なりますが、通常は退院後1~2か月くらいで体力は回復します。
退院後3~4日くらいから、自分の体調に合わせて、積極的に無理のない程度の軽い散歩や運動を実行しましょう。腹筋運動や重いものを運んだりする仕事は、しばらく避けたほうがよいでしょう。
・定期検査はきちんと受ける
定期検査は医師の指示通りに受けましょう。食道がんの治療は手術をしたら終了ではありません。病理検査の結果、追加的な治療が必要な場合もありますし、手術後の体力回復の具合、食事の状態、体重変化、便通の調子の変化などを外来で診ていく必要があり、再発がないかを定期的にチェックしたりします。
受診を怠ると再発の発見が遅れて、治療が手遅れになることもありうることです。定期的に診察と検査をきちんと受けましょう。
食道がん手術のあとの社会復帰
食道がんの手術後も多くの人が元の仕事に復帰しています。一般的にいうと、デスクワーク中心の仕事であれば、手術後1か月程度で復帰可能です。からだを多少使う仕事でも2~3か月をめどに復帰できます。
しかしながら、完全な社会復帰が可能となる時期については、受けた治療の内容、体力や年齢、仕事の内容などさまざま々な要因がかかわってくるため、一概にはいえません。
手術のあとにからだを動かして日常生活に早く復帰できた人は、社会復帰も早くなるはずです。とはいえ、社会復帰直後から病気になる前と同じように就労することは、不安もあり、体力的、精神的に難しいかもしれません。可能であれば軽めの仕事から始めて徐々に仕事を増やしていくのがよいといえます。
そんなとき、ご家族や職場の人たちのサポートが重要です。1人であせったり、悩んだりせずに、周りの人たちの協力を得て、手術後の回復期を乗り切りましょう。
以上、食道がんに関する解説でした。