抗がん剤治療の副作用について
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
抗がん剤治療を始める前、多くの患者さんが「副作用はいつから出るのだろう」「いつまで続くのだろう」と不安を抱えています。
副作用の現れ方や持続期間は、使用する薬の種類や患者さんの体質によって個人差がありますが、ある程度の傾向を知っておくことで、心の準備や対処がしやすくなります。
この記事では、抗がん剤の副作用がいつから始まり、いつまで続くのかについて、薬の種類別の特徴とともに分かりやすく解説します。
抗がん剤の副作用が起こる理由
抗がん剤は、がん細胞の分裂や増殖を抑える働きを持っています。しかし、がん細胞だけを狙い撃ちすることは難しく、正常な細胞にも影響を与えてしまいます。
特に影響を受けやすいのは、細胞分裂が活発な組織です。具体的には、血液をつくる骨髄細胞、消化管の粘膜細胞、毛根の細胞などが挙げられます。これらの正常細胞がダメージを受けることで、さまざまな副作用が現れます。
副作用の種類や程度は、使用する抗がん剤の種類、投与量、治療期間によって異なります。また、同じ薬を使っても、患者さんによって副作用の出方は大きく異なるため、個別の経過観察が重要になります。
抗がん剤の副作用はいつから現れるのか
抗がん剤の副作用が現れるタイミングは、副作用の種類によって異なります。一般的には、投与後数時間から数日以内に現れる「早期の副作用」と、数週間から数か月後に現れる「遅発性の副作用」に分けられます。
投与直後から24時間以内に現れる副作用
吐き気や嘔吐は、抗がん剤投与後、比較的早い段階で現れやすい副作用です。特に急性嘔吐と呼ばれる症状は、投与開始直後から24時間以内に起こることが多く、数時間で一旦消失することもあります。
また、アレルギー反応も投与直後に現れる可能性があり、医療スタッフによる慎重な観察が行われます。
投与後1週間から2週間の間に現れる副作用
骨髄抑制による白血球の減少は、一般的に抗がん剤投与後7日から10日頃に始まり、10日から14日頃に最も低い値になります。その後、3週間ほどで回復に向かうことが多いです。
吐き気についても、遅発性嘔吐と呼ばれる症状が、投与後24時間以降に現れ、数日間続くことがあります。
口内炎や下痢といった消化器系の副作用も、この時期に出やすくなります。
投与後2週間以降に現れる副作用
脱毛は、治療開始後2週間から4週間頃から始まることが一般的です。抗がん剤治療を何サイクルか繰り返すため、回復が間に合わず、他の副作用に比べて長期間続くように感じられます。
手足のしびれなどの末梢神経障害も、治療開始から数週間後に徐々に現れる場合があります。
味覚障害についても、治療開始から数週間後に出現することがあり、食事の楽しみが減少する原因になることがあります。
抗がん剤の副作用はいつまで続くのか
副作用の持続期間も、症状によって大きく異なります。多くの副作用は短期間で回復しますが、一部の副作用は治療終了後も数週間から数か月、場合によっては長期間残ることがあります。
治療中から治療終了後数日で改善する副作用
吐き気や嘔吐は、適切な吐き気止めの薬を使用することで、投与後数日以内にコントロールできることが多いです。近年、吐き気止めの薬が進歩したことで、症状の持続期間を短縮できるようになっています。
治療終了後数週間から数か月で回復する副作用
白血球や血小板の減少、貧血などの骨髄抑制は、治療終了後に徐々に回復し、一般的には数週間で正常値に戻ります。ただし、治療の内容によっては回復に時間がかかる場合もあります。
口内炎や下痢といった消化器系の副作用も、治療終了後、数週間程度で落ち着くことが多いです。
脱毛については、抗がん剤治療が全て終わってから3か月から6か月すると髪の毛が生え始め、8か月から1年程度で回復することが一般的です。
長期間続く可能性がある副作用
末梢神経障害は、特定の抗がん剤によって引き起こされ、手足のしびれや痛みとして現れます。この副作用は、治療終了後も数週間から数か月、場合によってはそれ以上続くことがあり、患者さんによっては長期間残るケースもあります。
疲労感についても、治療中および治療後も持続することがあります。十分な休息が必要で、リハビリテーションプログラムが役立つこともあります。
| 副作用の種類 | 発現時期 | 持続期間 |
|---|---|---|
| 吐き気・嘔吐(急性) | 投与後数時間~24時間以内 | 数時間~数日 |
| 吐き気・嘔吐(遅発性) | 投与後24時間以降 | 数日間 |
| 白血球減少 | 投与後7~10日頃 | 3週間程度で回復 |
| 口内炎・下痢 | 投与後1~2週間 | 治療終了後数週間 |
| 脱毛 | 投与後2~4週間 | 治療終了後8か月~1年で回復 |
| 末梢神経障害 | 投与後数週間~ | 数か月~長期間残る場合あり |
| 疲労感 | 治療中 | 治療後も持続することあり |
抗がん剤の種類別の副作用の特徴
抗がん剤は大きく分けて「細胞障害性抗がん剤」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」の3種類に分類されます。それぞれ作用の仕組みが異なるため、副作用の種類や出現時期も異なります。
細胞障害性抗がん剤の副作用
細胞障害性抗がん剤は、がん細胞の分裂や増殖を直接妨げる薬剤で、伝統的ながん治療の中心となってきました。この種類の抗がん剤は、細胞分裂が活発な細胞全般に影響を与えるため、副作用が比較的強く出る傾向にあります。
主な副作用には、以下のようなものがあります。
- 吐き気・嘔吐
- 骨髄抑制(白血球減少、貧血、血小板減少)
- 脱毛
- 口内炎
- 下痢・便秘
- 食欲不振
- 倦怠感
- 肝機能障害
- 腎臓・膀胱障害
- 末梢神経障害
細胞障害性抗がん剤の中でも、薬剤の種類によって副作用の出やすさは異なります。
例えば、アンスラサイクリン系(ドキソルビシン、エピルビシンなど)は吐き気を起こす可能性が高い薬剤として知られています。一方、プラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラチンなど)は腎機能障害や神経障害のリスクが高くなります。
微小管阻害薬(パクリタキセル、ビンクリスチンなど)は末梢神経障害を起こしやすく、手足のしびれが長期間続くことがあります。
分子標的薬の副作用
分子標的薬は、がん細胞に特有の分子や異常な信号伝達経路を狙って作用する薬剤です。正常細胞への影響を抑えながらがん細胞を攻撃することを目指しているため、従来の抗がん剤に比べて副作用が軽い傾向があります。
しかし、分子標的薬にも独自の副作用があります。
- 皮膚症状(発疹、にきびのような症状、皮膚の乾燥)
- 爪のまわりの炎症
- 手足症候群(手のひらや足底の痛み、赤く腫れる、皮膚がむける)
- 下痢
- 高血圧
- 肝機能障害
- 間質性肺炎
- 粘膜からの出血(鼻血など)
分子標的薬の副作用は、薬剤によって大きく異なります。HER2陽性乳がんに使用されるトラスツズマブ(ハーセプチン)は、心機能への影響が報告されています。また、EGFR阻害薬では皮膚症状が高頻度で現れます。
間質性肺炎は、一般的な細菌感染による肺炎とは異なり、原因不明で特効薬が存在しないため、重篤化する可能性があり、慎重な経過観察が必要です。
免疫チェックポイント阻害薬の副作用
免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫から逃れる仕組みを抑え、患者さんの免疫システムを活性化してがん細胞を攻撃する新しいタイプの薬剤です。
この薬剤の副作用は、免疫の活性化に伴うもので、「免疫関連副作用」と呼ばれます。
- 関節炎
- かゆみ
- だるさ
- 吐き気
- 下痢
- 間質性肺炎
- 重度の皮膚障害
- 肝機能障害
- 甲状腺機能障害
- 自己免疫性の臓器障害
免疫チェックポイント阻害薬による副作用は、従来の抗がん剤とは対処法が異なることがあります。多くの場合、ステロイド剤などの免疫抑制薬で対処できますが、早期発見と適切な対応が重要です。
特に間質性肺炎や重度の肝機能障害などは、重篤化する可能性があるため、慎重な経過観察が必要になります。
| 薬剤の種類 | 主な副作用 | 特徴 |
|---|---|---|
| 細胞障害性抗がん剤 | 吐き気、骨髄抑制、脱毛、口内炎、倦怠感 | 細胞分裂が活発な正常細胞にも影響 |
| 分子標的薬 | 皮膚症状、高血圧、肝機能障害、間質性肺炎 | 正常細胞への影響は比較的少ないが独自の副作用 |
| 免疫チェックポイント阻害薬 | 自己免疫性の臓器障害、甲状腺機能障害、間質性肺炎 | 免疫の活性化による副作用 |
主な副作用の詳細と対処法
吐き気・嘔吐
吐き気や嘔吐は、抗がん剤が消化管の粘膜や脳の神経を刺激することで発生します。近年、吐き気止めの薬が大きく進歩し、適切に使用することで症状をコントロールできるようになっています。
吐き気止めの薬には、NK1受容体拮抗薬、5HT3受容体拮抗薬、オランザピン、副腎皮質ステロイドホルモンなどがあり、抗がん剤の種類に応じて予防的に使用されます。
吐き気が治まらない場合は、我慢せずに医療スタッフに相談することが大切です。
骨髄抑制
骨髄抑制により、白血球、赤血球、血小板が減少します。
白血球の中でも好中球が減少すると、感染症にかかりやすくなります。この期間は、手洗いやうがいをこまめに行い、人が集まる場所をなるべく避けるなど、感染予防に気をつけることが重要です。
発熱時には、抗菌薬を投与したり、好中球を増やす薬(G-CSFなど)を使用したりすることもあります。
貧血になると、めまいや立ちくらみ、冷え、だるさ、息切れ、動悸などの症状が現れます。貧血の程度が著しい場合は、輸血を行うこともあります。
血小板が減少すると、出血しやすくなります。身に覚えのない内出血や血便、血尿、鼻血などが見られた場合は、すぐに医療スタッフに連絡する必要があります。
脱毛
毛根細胞がダメージを受けることで脱毛が起こります。脱毛は、頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、体毛にも及ぶことがあります。
治療が全て終わってから数か月で髪の毛が生え始めますが、この期間、医療用ウィッグや帽子を活用することで、外見の変化に対処できます。
近年では、頭皮を冷却することで血流を抑え、薬剤が毛根に届きにくくする「スカルプクーリング」という方法も使われており、一定の条件下では脱毛の軽減が期待されています。
口内炎
口の粘膜細胞も抗がん剤の影響を受けやすく、炎症や潰瘍ができ、口内炎が発生します。痛みや刺激に敏感になるため、食事や会話に支障をきたすことがあります。
予防として、こまめにうがいをし、やわらかい歯ブラシで丁寧に歯をみがくことが推奨されます。口腔内や唇の乾燥予防に、リップクリームを使用して保湿することも効果的です。
熱いものは冷ましてから食べる、刺激の少ない食品を選ぶなど、食事の工夫も重要です。
下痢・便秘
抗がん剤が腸の粘膜細胞に影響を与えることで、下痢や便秘が起こります。
下痢が続くと、脱水や電解質異常のリスクが高まるため、十分な水分補給が必要です。消化の良いものを食べ、食事は何回にも分けて少しずつとることが推奨されます。乳製品や香辛料、アルコール、カフェイン、食物繊維や脂肪の多い食事は避けるべきです。
便秘については、水分摂取を増やし、適度な運動を心がけることが効果的です。症状が続く場合は、医療スタッフに相談して適切な薬を使用します。
末梢神経障害
特定の抗がん剤、特にプラチナ製剤や微小管阻害薬によって引き起こされることがあり、手足のしびれや痛み、感覚異常として現れます。
症状は軽い違和感から、日常的な細かい動作が難しくなるほど強くなることもあります。持続期間は治療の種類や患者さんによって異なり、一部の患者さんには長期間続くことがあります。
対策として、血行を良くするために入浴中にマッサージをしたり、体が冷えないように手袋や靴下を身につけたりすることが推奨されます。
副作用との向き合い方
抗がん剤の副作用は、個人差が大きく、同じ薬を使っても症状の出方は人それぞれです。副作用が出なかったからといって、がんに対する効果がないわけではありませんし、副作用が強かったから効果があるというわけでもありません。
副作用への対処法は年々進歩しており、適切な薬の使用や生活の工夫によって、多くの症状をコントロールできるようになっています。
体調の異常を感じたら、我慢せずに医師や看護師、薬剤師に相談することが重要です。早期の対処により、副作用の悪化を防ぎ、治療を継続しやすくなります。
治療を始める前に、自分が受ける治療でどのような副作用がいつ起こりうるのか、医療スタッフにしっかり確認しておくことで、心の準備ができ、適切な対応がとりやすくなります。
また、家族や周囲の人々のサポートも、副作用と向き合う上で大きな助けになります。自分一人で抱え込まず、周囲に助けを求めることも大切です。

