大腸がんが進行して他の臓器に転移し、転移した臓器で進行することで機能不全に陥ります。肺なら呼吸不全、肝臓なら肝不全という状態になりこれで命を落とすことが多いといえます。
大腸がんの再発・転移など進行した状態で亡くなった方を解剖すると、一部を除いてはがんは全身的に広がっており、とくに肝臓転移、肺転移、局所再発、腹腔内転移(がん性腹膜炎)、骨転移などが見られるようです。
直腸がんの末期から最期を迎えるとき
直腸がんは、根治を目指して手術をしてもリンパ節転移や同じ部分に再発することが多いがんです。腫瘍は骨盤内で増悪し尿管を圧迫して水腎症を起こしたり、無尿、尿毒症、あるいは膀胱に感染が起きて腎盂炎になり、高熱発作を起こして衰弱する場合が多くなります。
このとき、対症的な治療、たとえば腎瘻(じんろう)などの尿路変向を行うことによって、症状を抑えることができることもあります。
腫瘍が仙骨前面に広がった場合は坐骨神経を圧迫したり、骨に浸食することで強い痛みが起きることがあります。この場合は鎮痛剤を使うなどの疼痛対策が重要になります。
結腸がんの末期から最期を迎えるとき
結腸がんは肝臓への転移が多いことが特徴です。転移が起きるときは腹腔内転移も起きやすく、がん性イレウス(腸閉塞)を引き起こすリスクが高くなります。腸閉塞が起きるような場合は対処的な治療として人工肛門造設などを行うことがあります。
肝臓は、肺と同じく転移が大きくなって過半を占めるようになるまで、無症状に近い状態が続きます。転移が小さい間は切除することが優先されますが、切除ができない状態から徐々に腫瘍が増大すると、黄疸が出現し、出血したり腹水がたまり、肝不全による命のリスクが高くなります。
また、肺転移が起きると血痰などが出るようになり、胸部X線写真を撮ると丸い転移の影が見つかることが多いです。症状がでるのはとてもゆっくりで、肺の全体に転移が広がり、X線写真で肺野が白く写るほどになるまで呼吸困難や咳がでないこともあります。
また、呼吸困難など肺の機能障害による症状が起きる前に肺から脳へ転移を起こして、頭痛や嘔吐など脳転移による症状が先に現れる場合があります。
このように、末期になれば死に対する準備も必要ですが、それ以前にどこで「治療を止める」と判断をするのも難しいことです。抗がん剤をしないのか続けるのか、などの判断はとても重要な要素です。