がんは、手術をはじめとするさまざまな治療後、ふたたび発生することがあります。
これは、がんの治療後にほんの少数のがん細胞が体内に残っていても、その細胞が増殖を始めて臓器や器官を侵すようになる可能性があるからです。
こうして残ったがん細胞からふたたびがんが生じることを「再発」と呼びます。
がんを治療するには、がんを手術で切除したり薬や放射線で殺したりします。しかし、手術で切除したがんのまわりの組織に少数のがん細胞がとり残されることがあります。
また、目に見えるがんを手術でとり除いても、すでに他の臓器に目に見えない転移(微小転移)が起こっていることもあります。
こうしたがん細胞をすべて見つけることは現実には不可能です。
そのため、通常はとり残されたがん細胞を根絶するために、手術後に抗がん剤投与や放射線照射が行われますが、それでも完全に叩くことは困難です。
わずかでもがん細胞がどこかに残っていれば、それがいずれ増殖を始めて、ふたたびがんのかたまりをつくり出す可能性があります。
がんは治療後2~3年以内に再発することが多く、最初の治療でがん細胞が完全にとり除かれていなければ、遅くとも5年以内には再発するといわれています。
そのため治療から5年後までに再発するかどうかがひとつの目安となります。
5年たっても再発しなければ、一般に完治したとみなされますがなかには、乳がんや腎臓がん、大腸がん、甲状腺がんのように、長い間再発の徴候がなく、10年以上たってから再発する例もあります。
がんの再発の種類と転移
再発がんが体のどこに出現しても、そこで増殖するがん細胞は最初のがん細胞と同じ種類です。
たとえば乳がんが肺に転移しても、肺がんとは呼ばずに「乳がんの肺転移」といいます。がんが再発した場合、その発症のしくみと部位によって、「局所再発」、「領域再発」、「遠隔再発」に分かれます。
局所再発
局所再発は、原発巣から周囲に浸潤した細胞が、手術などの初回治療の際にとり残されて局所に再発したものです。
たとえば、乳がんに対してがんとその周囲のリンパ節だけを切除する温存療法を行った後に、乳房内に再発すれば、それは局所再発です。
局所再発の場合には、乳がんや直腸がんのように再手術によって、再度完治できる場合もあります。
領域再発
領域再発は、原発巣に近いリンパ節(領域リンパ節)にがんが転移・再発したことを意味します。
たとえば乳がんにおいて、がんができた乳房と同側のわきの下のリンパ節再発は領域再発であり、手術でとり除ける可能性もあります。
領域再発は局所再発に含まれることもあります。
遠隔再発(転移)
がんの多くは、ある程度以上周囲の組織に染み出すように広がると、がん細胞がリンパ管や血管に入り込んでリンパ液や血液の流れに乗ったり、腹の中(腹腔)や胸の中(胸腔)にばらまかれ、がんができた臓器(原発巣)から離れた場所へと散らばります。
これは、火災が発生場所からとび火して、離れた場所に広がるようなもので医学的には「転移」と呼びます。
リンパ管にがん細胞が入り込んでリンパ節に転移した場合は「リンパ行性転移」、血管にがん細胞が入って肝臓、肺、脳、骨などへ転移した場合は「血行性転移」、がん細胞が腹や胸の中に飛び散った場合には「播種性転移」と呼びます。
また乳がんでは、首やがんができた乳房と反対側のわきの下のリンパ節は領域リンパ節ではないので、ここに再発すると遠隔再発となります。
遠隔再発が生じた場合、少数の例外を除いて再度根治的な治療をすることは困難になります。
なお局所再発が遠隔再発と同時に生じることもあります。このような場合には、治療方針が大きく異なることがあります。
ちなみに、初回治療でとり切れなかったがんが増大した場合は、再発ではなく、「再燃」と呼ぶことがあります。