大腸がんの骨転移に対しては、主に痛みを和らげる治療が行われます。
転移した骨に放射線をあてたり、麻薬(モルヒネ、フェンタニル)などの痛み止めを使ったりして、痛みをコントロールします。
なおかつ、骨転移用の薬(骨の破壊を防止する働きがある薬)である「ゾメタ」(一般名ゾレドロン酸)や「ランマーク」(一般名デノスマブ)などを使用して骨転移の進行を遅らせます。
大腸がんから骨転移が起きたときの症状
骨の内部には、骨に栄養を与える動脈や、不要物を運び出す静脈が通っています。
そのため骨にも、がん細胞が血流に乗って転移する血行性転移が起こることがあります。大腸がんの骨転移はあまり多くはありませんが、骨盤や脊椎、大腿骨などにみられることがあります。
疼痛がおもな症状
骨転移が進行した場合には、おもな症状として疼痛(とうつう。痛みのこと)があらわれてきます。
疼痛とは、ジンジンとうずくような痛みのことで、進行したがんに特有な症状の1つです。
骨転移でこのように痛みを感じるのは、骨を覆っている骨膜や骨髄の入っている髄腔に痛点(痛みを感じる神経)が多く分布しているためです。
さらにひどくなると、がんに侵された骨の組織は破壊されてもろくなり、骨折を起こすこともあります。
また逆に、造骨型転移といって、骨の形成が活発化して新しい骨が正常な骨を覆って肥大することもあります。ただし、大腸がんが骨転移した場合は骨がもろくなるケースがほとんどです。
そこで、痛みの緩和や骨折予防のために放射線治療を行なうことが一般的です。
大腸がん骨転移時の診断と治療
骨転移はCTやMRI、PETなどで詳しく調べ、診断します。
RI検査(シンチグラフィーと呼ばれる放射性同位元素を利用した検査)が行なわれることもあります。
大腸がんの骨転移では、骨だけに転移しているケースはほとんどなく、骨以外の臓器にも転移しています。したがって治療は全身化学療法と、転移による痛みの軽減が中心です。
放射線治療も行なわれますが、ほとんどは痛みの軽減および骨折の予防が目的です。
放射性ストロンチウムという体内投与できる放射性物質もあり、これは投与後1週間程度で痛みがやわらぐという報告があります。
骨転移は痛みが起こりやすいので、痛みを軽減する薬物治療も行なわれます。
骨転移の薬物治療には、鎮痛薬のほかビスホスホネート剤(最も強力なビスホスホネートがゾメタ、ランマーク)というカルシウムに吸着しやすい性質の薬がよく用いられます。
この薬には、骨を破壊・吸収する破骨細胞の働きを妨害する作用があります。これを用いると骨の溶解が抑えられ、血中カルシウム濃度も上がりにくいとされています。
大腸がんが骨に転移している場合の放射線治療
骨転移に対する放射線治療は、がんによる強い痛みを抑える効果があります。
一般的に30~40Gy グレイ)程度の比較的少ない量の放射線を、骨転移のある部分に2~4週程度当てます。多くの場合は通院で治療できます。
放射線治療の痛みの緩和効果は80~90%程度と考えられています。
痛みに対する緩和効果は腫瘍が小さくならなくても観察されることから、病気による骨破壊、再形成の反応を放射線が抑えることで、痛みを誘発する物質の産生を止めることが理由ではないかと考えられています。
骨転移は骨破壊による骨折、脊椎転移の場合は腫瘍の圧迫による麻痺、痺れ、神経痛などを伴うことがありますが放射線治療によりこれらの症状の進行を予防したり、改善することも期待できます。