膣は子宮頸部と外陰をつなぐ筒状の組織で、がんはその粘膜から発生します。
はじめから膣に生じる原発性膣がんは、女性性器がんの1~3%で、まれながんです。
子宮がんや絨毛がん、外陰がん、膀胱がん、直腸がんなどが転移した転移性膣がんのほうが多く、原発性と転移性との比率はおよそ3対7となっています。とくにできやすい部位は後膣壁と前膣壁です。
また膣を入口から3分の1ずつに区切った場合、入り口側と奥側(子宮側)に発生することが多く、中間部に発生することは比較的まれです。
がんは、球状または長い楕円形で、潰瘍状のかたい腫瘤(しこり)となります。
膣壁は筋組織が薄くて少ないため、早期がんでも膣壁や膀胱壁を破って容易に周辺臓器に浸潤します。
膣の入り口に発生した場合は外陰部へ、奥に発生した場合は子宮へと広がります。
また、骨盤内のリンパ節から肺などに転移しやすいことも特徴です。
肺へは血管を経て転移することもあります。発生頻度は低いものの、進行の速いやっかいながんです。
膣がんの原因は不明で原発性膣がんは、45~65歳に多く発生していますが、まれに特殊ながんが20~30歳代に発生することもあります。
膣がんの初期症状や自覚症状は?
初期症状はほとんどなく、出血などに気づいて受診したときには、がんが進行しているケースがよくあります。
膣がん発見の重要な手がかりとなる出血は、性交時に起こりがちです。はっきり出血とわかる場合と、おりものに血が混じる場合とがあります。
また、悪臭をともなう水のようなおりものが出ることもあります。
やや大きくなると、自分で膣をさわると指にしこりを感じたり、腰や下腹部が痛んだりします。
さらに進行して膀胱や尿道、直腸に浸潤すると、排尿痛などの不快な症状があらわれてきます。
膣がんの検査と診断
膣がんでは、細胞診やコルポスコープ(膣拡大鏡)診が行なわれます。
細胞診は、綿棒などで膣の細胞を軽くこすりとり、顕微鏡で調べる検査(スメアテスト)です。
これによってがん細胞が見つかり、子宮頸部や子宮頸管を調べてがんの疑いがない場合には、膣がんが疑われます。
子宮がん検診の細胞診で膣がんが偶然発見されることもあります。
コルポスコープ診は、膣の内部を10~40倍に拡大して観察する内視鏡検査です。小さながんでも発見できるので、細胞診とともに膣がんの早期発見に大きな役割を果たしています。
以上の検査で膣がんが疑われる場合には病変部の組織を切り取って顕微鏡で調べる生検が行なわれ、確定診断がくだされます。
がんの広がりはX線CTやMRIなどの画像検査で確かめられます。膣がんの病期は0期~Ⅳ期(Ⅳ期はaとb)に分類されます。
膣がんの治療方法とは
手術が行なわれるのは、膣の奥側にがんができていて、しかもがんの浸潤が浅い場合です。
膣の上部と子宮およびその周辺組織を広範囲にわたって切除するとともに、骨盤内のリンパ節を郭清します(広汎子宮全摘術)。
がんの発生部位や浸潤度、患者さんの年齢などから手術が難しい場合には、放射線療法が行なわれます。
膣腔内に放射線源を挿入して行なう腔内照射と、からだの外から骨盤に照射する外部照射の併用が一般的ですが、腔内照射だけの場合もあります。
腔内照射は病巣部に直接、放射線を照射できるので、周辺臓器への悪影響が少ないというメリットがあります。
膣がん手術後の予後と5年生存率
膣がんの予後はよくありません。
5年生存率は0期で約80%、Ⅰ期で約70%ですが、Ⅱ期以降は急激に低くなります。
膣がんは治療後3年以内に再発することが多いので、3か月ごとに内診や細胞診などの検査を受けるようにしましょう。
・膣がん手術後の生活の注意点
膣の上部を摘出した場合、退院1~2か月後から性生活は可能ですが、医師に確認しましょう。膣を全部摘出した場合は、通常の性生活はできません。