ロンサーフ(一般名:トリフルリジン)は日本で開発された大腸がん向けの抗がん剤です。
薬の効果を確認する臨床試験で全生存期間を延長すると評価され。異例の速さで承認されました。2014年5月26日に発売・現場での使用が開始されています。
このロンサーフが適応となるのは「切除不能な進行・再発した結腸がん、および直腸がん」であり「標準的な治療が困難な場合に限る」とされています。
大腸がんの標準的な治療法とは?
大腸がんの早期の場合は手術が第一選択肢として提案されます。いっぽう、切除ができない進行がん、あるいは再発がんの場合は化学療法(薬を使った治療)が適応となります。
進行大腸がんの場合、2014年時点ではFOLFOX(フォルフォックス)療法や、FOLFIRI(フォルフィリ)療法、XELOX(ゼロックス)療法にアービタックスやアバスチンなどの分子標的薬を組み合わせた化学療法が標準治療となっています。2013年に登場したスチバーガも標準治療の仲間入りをしており、4次治療法までが確立されています。
※FOLFOX=ロイコボリン、5FU、エルプラットの組み合わせ
※FOLFIRI=ロイコボリン、5FU、イリノテカンの組み合わせ
※XELOX=ゼローダ、エルプラットの組み合わせ
【大腸がんの化学療法の標準治療とその順序】
・1次治療
XELOX+アバスチン
FOLFOX+アバスチン
FOLFOX+アービタックス
FOLFIRI+アービタックス
・2次治療
FOLFIRI+アバスチン
FOLFIRI+抗EGFR抗体薬
・3次治療
イリノテカン+アービタックス
・4次治療
スチバーガ
ここまでの治療を進めても効果が現れないときの選択肢として「ロンサーフ」が期待されているということです。
ロンサーフはどんな薬か?その効果とは?
少し難しい話になりますが、ロンサーフはDNAに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮するFTDという物質と、体内でFTDの分解を阻害するTPIという物質を配合した抗がん剤です。単なる毒性の強い物質ではなく、がんへの効果をしっかり研究して開発された薬だといえます。
国内で行われたロンサーフの臨床試験は、5FU、エルプラット、イリノテカンなど進行大腸がんで使われる薬を使用してもがんが進行してしまった患者さん(169例)を対象に行われました。
この試験は、ロンサーフを投与した患者さんと、プラセボ薬(効果のない物質)を投与した患者さんの予後を比較するものでした。その結果、ブラセボを投与した場合の全生存期間は6.6か月。ロンサーフを投与した場合は9.0か月という平均値が出ました。
これによってロンサーフは進行大腸がんにおいて、既存の薬を使って効果がなかった患者にも有益であると判断され、承認に至ったのです。
ロンサーフの投与方法
ロンサーフの対象になるのは、それまでの標準治療で効果が現れない人です。つまり上記の標準治療1次~4次を受けてもがんの抑制ができなかった人だといえます。なぜこのような順序になるかというと、ロンサーフは発売から歴史が浅く、医師にも投与経験がありません。大きながん拠点病院で慎重に使いつつ、経過を見ていく必要があるのです。
なお、ロンサーフは経口薬なので口から飲んで服用します。服用のパターンは複雑なので、必ず医師から説明を受け、そのとおりに服用するようにしましょう。
ロンサーフの副作用とその対策
臨床試験の結果では、血液に対する副作用、つまり血液毒性が確認されています。具体的には好中球減少が50.4%、白血球減少が28.3%、貧血が16.8%、リンパ球の減少が9.7%です。
この副作用は投与後3週間ほどしてから多発するようです。重篤な状態になると休薬したり、中止せざるをえなくなります。そのため定期的に血液検査を行い、値を確認しながら進めることになります。
また、血液毒性のほかに下痢や悪心、嘔吐、食欲減退などもあります。これは投与直後から2週目あたりによく起きるという報告があります。しかしこれらの症状は比較的軽く、重篤な症状を起こした人は少なかったとされています。
従来の抗がん剤の副作用に比べると、比較的軽微だといえますが、まだ実証が少ないために今後の経過を慎重にみていかなければなりません。特に投与の初期段階では医師も患者も慎重に進め、何か兆候があれば報告・相談をしっかりと行うことが大切です。
ロンサーフの今後の展開
最初は効果や副作用をきちんと把握し、記録するために単独での使用になりますが、将来的にはロンサーフとイリノテカンを併用するなど、他の薬と組み合わせた使用法が検討されるようになります。さらに、ロンサーフが効きやすい特徴があるかどうかを事前に把握するためのバイオマーカーについても調査が始まっています。
以上、ロンサーフについての解説でした。
私がサポートしている患者さんでもロンサーフをつかいはじめた人はいます。従来の抗がん剤に比べると効果を発揮しやすく、副作用は少ないですが、それでも「がんを治す薬」ではありません。
「どのようにして大腸がんと闘うのか」については総合的な取り組みが必要です。