07.乳がん

【2026年更新】乳がんの脳転移について詳しく解説。検査・メカニズム・症状・最新治療法まで

乳がんの脳転移

こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。

乳がんの治療が進歩する中で、脳転移は患者さんとご家族にとって大きな関心事のひとつです。近年の研究により、脳転移の仕組みや治療法について新しい知見が蓄積されています。

この記事では、乳がんの脳転移について、検査方法、要因、メカニズム、症状、治療法まで、2026年時点の最新情報をもとに解説します。


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乳がんの脳転移とは

乳がんが他の臓器に転移する場合、骨、肺、肝臓、脳などが転移しやすい場所として知られています。

脳転移が現れる時期は患者さんによって異なります。初期治療から1年後に見つかる場合もあれば、10年以上経過してから発見されることもあります。転移巣の数も1個だけの単発性のこともあれば、小さな転移が複数個見られる多発性のこともあります。

現在治療中のがん患者さんの約9%に脳転移があるとされ、乳がんは肺がんに次いで脳転移を起こしやすいがんです。

サブタイプ別の脳転移リスク

乳がんのサブタイプによって、脳転移の起こりやすさに違いがあることが分かっています。

サブタイプ 60ヵ月時点の累積発生率 特徴
HR陰性/HER2陽性 34% 最も脳転移リスクが高い
HR陽性/HER2陽性 23% HER2陽性は全般的にリスクが高い
トリプルネガティブ 22% HER2陽性と同等のリスク
HR陽性/HER2陰性 10% 比較的リスクが低い

HER2陽性乳がんやトリプルネガティブ乳がんでは、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんよりも脳転移の頻度が高いことが明らかになっています。また、すべてのサブタイプで、治療ラインが進むごとに脳転移の発生率が上昇する傾向があります。


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脳転移が起こるメカニズム

がん細胞が脳に転移する経路には、主に2つのパターンがあります。

血行性転移

最も一般的な転移経路です。乳房のがん細胞が増殖する過程で、一部のがん細胞が血液の中に入り、血液の流れに乗って脳に到達します。脳に到達したがん細胞が増殖することで、脳の実質の中に孤立性の腫瘤を形成します。

血液は心臓から全身に運ばれるため、がん細胞が脳に到達する場合も心臓を経由します。このため、脳転移が発見された場合、脳以外の臓器にもがん細胞が転移している可能性があり、全身のチェックが必要になります。

髄膜播種性転移

骨転移、特に背骨や腰椎など脊椎に転移した場合に起こりやすいパターンです。骨髄にがん細胞が常に供給されるようになり、髄液中に浸潤します。がん細胞がその液体に乗って、種をまくように脳や脊髄の表面にばらばらと小さく広く転移します。

髄液は脊髄から脳の周辺を循環しており、これに乗って骨の転移巣からがん細胞が運ばれると、小さな腫瘤が表面にばらばらと形成される形態をとります。

多くの場合、これら両者は混在しています。播種性転移の場合、診断時の生存期間中央値は1.24年であるのに対し、血行性転移では3.57年とされており、転移のタイプによって予後が異なることが分かっています。

脳転移の検査方法

主な画像診断

脳転移の診断には、MRI検査が最も感度が高いとされています。造影剤を用いたMRIは、病変のサイズ、位置、数を正確に把握でき、治療方針の決定に不可欠です。CT検査も用いられることがありますが、MRIの方が精度が高いとされます。

定期的なスクリーニング検査について

重要な点として、症状がない場合に定期的に頭部のCTやMRI検査を行うことは推奨されていません。米国立総合がんネットワーク(NCCN)のガイドラインでは、「乳がん患者の脳MRI検査は、症状がある場合にのみ行うべきである」と明記されています。

これは、定期的なスクリーニング検査を行っても生存期間の延長につながらないことが研究で示されているためです。早期発見が必ずしもメリットをもたらさないため、症状が出た時点で検査を行うことが基本となります。


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脳転移の症状

脳は体を動かす指令を出している場所であるため、転移巣が現れた場所によって症状が異なります。

症状のカテゴリー 具体的な症状
全般的な症状 頭痛、嘔吐、ふらつき、けいれん、意識障害
運動機能の障害 手足のしびれ、麻痺、動かしにくさ
精神・認知機能の変化 性格変化、集中力低下、記憶障害

例えば、手を動かす指令を出す部位に転移巣が現れた場合は、手がしびれたり、動かしにくくなったりします。小さな転移巣でもけいれんなどの症状が出ることもあれば、相当大きくなるまで症状が出ない場合もあります。

脳は頭蓋骨に囲まれているため、転移巣が大きくなると脳全体が圧迫されて、様々な症状が現れます。

脳転移の治療法

治療は、転移巣を小さくしたり、症状を和らげたりすることを目的に行います。主な治療法には、外科治療、放射線治療、薬物療法があり、脳転移の数、他の臓器への転移の有無、全身状態などから治療法を選択します。

外科治療

以下の条件を満たす場合に外科手術が検討されます。

  • 病巣が1個で、大きさが3cm以上
  • 転移による症状がある
  • 病巣が手術しやすい場所にある
  • 他の臓器にただちに生命を脅かすような転移がない
  • 全身状態が良好

脳転移以外の他の臓器への転移がある場合は、手術は勧められないことが多いです。脳に病巣が2個以上ある場合に外科切除が有効であるかについては一定の見解はありません。

転移巣の中の部分が壊死してのう胞状になっている場合は、脳全体の圧力を下げるための特殊な手術をすることもあります。この手術によって症状を和らげる効果が認められています。

放射線治療

放射線治療には大きく分けて2つの方法があります。

定位放射線治療(定位手術的照射)

病巣のみに放射線を照射する方法です。照射する機械にはガンマナイフ、リニアックナイフ、サイバーナイフ、ノバリスなどがあります。放射線を出す方法が違うだけで、用いる機械によって治療成績に差があるわけではありません。

通常1回の照射治療で、1泊から2泊の入院で治療を行う病院が多いです。強い副作用は認められませんが、一度に多数の病巣を治療した場合は全脳照射と同じような症状が出現することがあります。

脳転移が1個で脳以外の場所に病巣がない場合には、手術または定位放射線照射を行うことで、脳転移が消失し再発しないことがあります。小さな脳転移が1個の場合では、手術で切除するのと定位放射線照射を行うのでは、どちらも同じくらいの治療効果であるとされています。

脳転移病巣が小さくて個数が少ない場合(例:4個以下)では、全脳照射に定位照射を追加することで、脳転移病巣を抑える効果や生活の質が高くなることがあります。

全脳照射

脳全体に放射線を照射する方法です。脳転移が多発している場合には、脳全体に照射することが基本です。

照射方法は複数あります:

  • 1回3Gyを10回、計30Gyを2週間(従来の標準的な方法)
  • 1回2.5Gyを15回、計37.5Gyを3週間(神経の副作用を軽減する方法)
  • その他、1回2Gyを10回の計20Gy、1回4Gyを5回の計20Gyなど

ステロイドの使用のみでも約半数の患者さんで症状改善を認められていますが、短期間に効果がなくなり、神経症状が再び悪くなります。全脳照射を行えば約7割の患者さんで症状を和らげ、ステロイドのみの場合よりも効果の持続期間は長いとされています。

放射線治療の副作用

全脳照射の副作用にはだるさ、むかつき、食欲不振があり、頭痛が生じる場合もあります。症状の出方は患者さんの状態によって差があり、副作用が出た場合でも照射が終われば、そのほとんどはなくなります。

頭皮は皮膚炎により少し赤くなり、頭髪が抜けます。再び生え揃うには数ヵ月かかります。また照射後、長期間経過してから集中力が低下したり、根気がなくなるなどの学習や記憶の障害がみられたり、脳下垂体の働きが低下することがまれにあります。

全脳照射による認知機能への影響を軽減するため、記憶をつかさどる海馬への照射を避ける海馬回避型全脳照射という方法も行われるようになっています。

薬物療法の進歩

血液脳関門(BBB)という壁

脳は他の臓器と異なり、血液脳関門(Blood-Brain Barrier: BBB)という特別な障壁によって守られています。このバリアは、血液中の細菌や毒が簡単に脳に届かないようにする重要な防御システムです。

しかし、このバリアがあるため、ほとんどの抗がん薬は脳組織と血管との間にある障壁にはばまれ、脳に十分に行き渡りません。特にトラスツズマブ(ハーセプチン)やペルツズマブ(パージェタ)などの分子標的薬は、分子量が大きいため血液脳関門を突破できず、脳転移に対して効果が限定的でした。

トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)の登場

近年、脳転移に対しても効果が期待できる薬剤が開発されています。その代表がトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)です。

この薬剤は抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれるタイプで、HER2に対する抗体と抗がん薬をリンカーで結合させた構造をしています。2024年から2025年にかけて発表された複数の臨床試験により、以下のことが明らかになっています。

対象 試験名 主な結果
HER2陽性の脳転移 DESTINY-Breast12 安定/活動性の脳転移に対して良好で持続的な抗腫瘍効果を示した
HER2低発現の脳転移 DESTINY-Breast04 化学療法と比較して頭蓋内奏効率が優れていた
HER2低発現の活動性脳転移 HALLOW試験 活動性脳転移を含む患者に有効で忍容性もある可能性

脳転移が起こっている場合には血液脳関門が壊れているため、薬物療法の効果がある程度期待できる可能性があります。トラスツズマブ デルクステカンは、従来の分子標的薬よりも脳転移に対する効果が認められており、HER2陽性乳がんやHER2低発現乳がんの脳転移治療における新たな選択肢となっています。

その他の薬物療法

症状改善の目的でステロイドなどの薬物を用いることがあります。ステロイドは脳のむくみを軽減し、症状を和らげる効果があります。

化学療法については、がんの種類により効果が認められています。特に乳がんの場合、原発がんに有効な化学療法は、脳転移巣が処置された段階では不顕性転移巣に効果を示し、生存期間を延長させる効果があるとされています。

サブタイプ別の予後

脳転移後の生存期間の中央値は、乳がんのサブタイプによって異なることが報告されています。

サブタイプ 生存期間中央値
ER陽性/HER2陽性 18.9ヵ月
ER陰性/HER2陽性 13.1ヵ月
ER陽性/HER2陰性 7.1ヵ月
トリプルネガティブ 4.4ヵ月

このほか、診断時の年齢、中枢神経症状の有無、転移個数、乳がんの診断から脳転移までの期間なども予後に影響する因子とされています。

治療における重要なポイント

脳転移に対する治療方針の決定は、乳腺専門医、放射線治療医、脳外科医を含めたチームで行うべきとされています。特に脳幹部への圧迫や水頭症などにより生命の危険が切迫する場合などには、救命目的の緊急手術も考慮されます。

単発から少数個の脳転移が切除可能な部位にある場合、手術と放射線療法により局所制御、生存期間および生活の質の改善に寄与する可能性があり、行うことを考慮してもよいとされています。

多発性脳転移では放射線療法が基本であり、外科的切除は基本的には勧められません。

治療法の選択にあたっては、脳転移巣の数と大きさ、他の臓器への転移の有無、全身の状態、患者さんの希望などを総合的に考慮することが重要です。

現在の課題と今後の展望

乳がん治療の進歩により、骨や肝臓、肺などの転移は薬物療法でコントロールできるようになってきています。しかし、脳転移だけはコントロールが難しく、生命予後を決定する要因となるケースが増えています。

HER2陽性乳がんでは、トラスツズマブ デルクステカンをはじめとする新しい分子標的薬が次々と登場し、遠隔転移があっても治癒の可能性が出てきました。そのため、これらの薬剤の効きにくい中枢神経系への転移が、残された大きな課題として注目されています。

現在、血液脳関門を突破して脳転移に効果的に作用する新しい薬剤の開発が進められています。臨床試験では薬剤開発の初期段階から頭蓋内効果を評価することの重要性が指摘されており、今後さらなる治療成績の向上が期待されています。

参考文献・出典情報

  1. 日本乳癌学会「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版 Q45 脳転移について」
    https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/gindex/006-2/q45/
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 治療」
    https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html
  3. 日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン2022年版 FRQ13 脳転移巣に対する外科的切除」
    https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/g_index/frq13/
  4. ケアネット「サブタイプ別転移乳がん患者の脳転移発生率、HER2低発現の影響」2025年4月
    https://www.carenet.com/news/general/carenet/60569
  5. 日経メディカル「HER2陽性の既治療の転移を有する乳癌の脳転移へのトラスツズマブ デルクステカンの有効性」2024年9月
    https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202409/585777.html
  6. ケアネット「脳転移を有するHER2低発現乳がん、T-DXdの頭蓋内奏効率」2024年7月
    https://www.carenet.com/news/general/carenet/58960
  7. 徳洲会グループ「脳神経外科の病気:転移性脳腫瘍」
    https://www.tokushukai.or.jp/treatment/neurosurgery/nosyuyo/tenisei-nosyuyo.php
  8. SURVIVORSHIP.JP「がんの脳への転移と日常生活 骨転移のメカニズム」
    https://survivorship.jp/brain-metastasis/mechanism/index.html
  9. 日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン2022年版 CQ28 トラスツズマブ デルクステカン」
    https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/y_index/cq28/
  10. 日経メディカル「活動性脳転移を含む脳転移を有するHER2低発現の進行乳癌にT-DXdが有効」2025年12月
    https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202512/591452.html

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本村ユウジ
がん治療専門のアドバイザー・本村です。

私の仕事は【がん患者さんに正しい選択を伝えること】です。

「本村さん、おかげで元気になりました」

そんな報告が届くのが嬉しくて、患者さんをサポートしています。

→200通以上の感謝の声(これまでいただいた実際のメールを掲載しています)

しかし毎日届く相談メールは、

「医師に提案された抗がん剤が怖くて、手の震えが止まらない」

「腰がすこし痛むだけで、再発か?転移か?と不安で一睡もできなくなる」

「職場の人も家族さえも、ちゃんと理解してくれない。しょせんは他人事なのかと孤独を感じる」

こんな苦しみに溢れています。

年齢を重ねると、たとえ健康であっても、つらいことはたくさんありますよね。

それに加えて「がん」は私たちから、家族との時間や、積み重ねたキャリア、将来の夢や希望を奪おうとするのです。

なんと理不尽で、容赦のないことでしょうか。

しかしあなたは、がんに勝たねばなりません。

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