がん闘病中に血尿が出た場合。主に泌尿科に関するがん(膀胱がんなど)が要因であるケースが多いですが、その他にも考えられる原因、理由があります。
速やかに医師に報告して診断を受けるべきですが、この記事では予備知識として「がん闘病中に起きる血尿」について、主な原因や医療機関で受けられる対処法、治療法についてまとめています。
※血尿および出血性膀胱炎とは?
血尿は、尿に赤血球が混入した状態。出血部位により腎性出血(糸球体、尿細管、腎実質など)と尿路出血(腎盂、尿管、膀胱、尿道など)に、また、肉眼的に確認できるかで、肉眼的血尿と顕微鏡的血尿に分類される。
出血性膀胱炎は、ウイルス、細菌、薬剤、放射線が原因となる「出血を伴って発症する膀胱の炎症」であり、抗がん薬使用時には注意する必要がある。
がん闘病中に血尿が出る主な原因
がん(腫瘍)による血尿
・膀胱がん、前立腺がん、腎盂尿管がん、腎細胞がん、尿路上皮がん。
・骨盤内のがん(婦人科がん、大腸がんなど)
・胃がん(ダグラス窩転移による膀胱浸潤)
手術による血尿
・術後の膀胱留置カテーテル抜去後、泌尿器科領域の手術・処置など。
化学療法(抗がん剤などの薬物療法)による血尿
・アルキル化薬(シクロホスファミド、イホスファミド)の副作用として。
放射線治療による血尿
・子宮頸がん、前立腺がんなどへの照射による晩期有害事象(後遺症)
その他の要因による血尿
・尿路感染症、外傷、尿路結石、膀胱留置カテーテル留置中など。
・血尿が起きやすいリスク要因としては、泌尿器科領域の疾患・手術、高齢、抗凝固薬使用、慢性尿路感染、神経因性膀胱、尿路結石、水腎症、長期ステロイド投与などが挙げられる。
医療機関で行われる、血尿への主な対処法
・凝血塊による尿閉予防のため、十分な水分の摂取を行い、排尿量を確保する。
・血尿が生じた場合、血尿スケールなどを用いて、尿の色調・量を観察する。
・血尿が持続する場合は、貧血やバイタルサインの変化を観察し安静の保持に努め、腹圧をかける姿勢などを避ける。
・膀胱留置カテーテル挿入中は、閉塞予防のためミルキングや膀胱洗浄が検討される。
・強い貧血がある場合は輸血も検討される。
・止血を要する場合、経尿道的に内視鏡下で行う電気焼灼、生理食塩水による膀脱持続灌流、放射線治療、塞栓療法、高気圧酸素療法などが検討される。
化学療法(抗がん剤などの投薬)によって起きる血尿の原因と対策の詳細
化学療法で血尿が出る理由
・シクロホスファミドとイホスファミドの投与により、肝臓で代謝された代謝物質であるアクロレインが尿路上皮細胞を障害することで、出血性膀胱炎を生じる可能性がある。(シクロホスファミドの場合、点滴では投与後翌日~48時間以内、内服では投与後20~30ヶ月で起きたという報告がある)。
※エピルビシンやドキソルビシン投与直後より2~3日後は薬剤の色素によって尿が赤く染まるため、血尿と間違えられることがある。
・副作用として血尿が出やすいのは高齢、抗凝固薬使用、シクロホスファミドの造血幹細胞移植前治療、イホスファミド、シクロホスファミド高用量の使用、骨盤内への放射線療法の治療歴など。
主な対応・対策・治療法
・シクロホスファミドやイホスファミドの投与時は、出血性膀胱炎の予防としてメスナの投薬を検討されることが多い。
・メスナの血中半減期は90分であるため、抗がん薬の投与中は常に膀胱内に存在するように投与される。そのため、複数回投与(3回/日)が必要となる。
・膀胱に尿を停滞させず、尿意があったらがまんせず排尿するように指導される。
・シクロホスファミドやイホスファミドを高用量で投与した場合、点滴投与後1~2日間は、水分を少なくとも1日2L摂取して、排尿を頻回に行うことで膀胱内を洗い流すことが望ましい。
・場合によっては、点滴による輸液負荷や利尿も検討される。
・肉眼的血尿が続く場合は、薬剤の投与中止が検討されることもある。
・血尿が強く出ると凝血塊による膀胱タンポナーデが生じて尿閉状態になるため、尿の性状以外にも下腹部膨満感など自覚症状を観察するよう指導される。
・血尿が続く場合、泌尿器科のコンサルトが行われ、止血に対する治療(生理食塩水による持続灌流や輸血など)が検討される。