
がん闘病中に血尿が出る主な原因
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
がん闘病中に血尿が出た場合、速やかに医師に報告して診断を受けることが重要です。この記事では、がん患者さんが経験する血尿について、主な原因や医療機関で受けられる検査、対処法について詳しくまとめています。
血尿と出血性膀胱炎の基本知識
血尿とは、尿に赤血球が混入した状態を指します。出血部位により、腎性出血(糸球体、尿細管、腎実質など)と尿路出血(腎盂、尿管、膀胱、尿道など)に分類されます。また、肉眼的に確認できる「肉眼的血尿」と、顕微鏡でのみ確認できる「顕微鏡的血尿」に分けられます。
出血性膀胱炎は、ウイルス、細菌、薬剤、放射線が原因となる「出血を伴って発症する膀胱の炎症」です。抗がん薬を使用する患者さんでは特に注意が必要な合併症となっています。
がん(腫瘍)による血尿
泌尿器系のがんは血尿の主要な原因となります。膀胱がん患者さんの約65%に肉眼的血尿が認められると報告されています。膀胱がんは男性に約3倍多く発生し、加齢とともに発生頻度が増加します。
血尿を引き起こす可能性のあるがんには、以下のようなものがあります。
- 膀胱がん、前立腺がん、腎盂尿管がん、腎細胞がん(腎がん)、尿路上皮がん
- 骨盤内のがん(子宮頸がん、卵巣がん、大腸がんなど)
- 胃がん(ダグラス窩転移による膀胱浸潤)
特に注意すべきは、痛みのない血尿です。膀胱がんや腎盂・尿管がんの特徴的な症状として、無症候性の肉眼的血尿が知られています。血尿が間欠的に出たり止まったりすることもあるため、1回でも肉眼的血尿が出た場合は、必ず泌尿器科を受診することが推奨されます。
手術による血尿
手術後の血尿は、以下のような状況で発生することがあります。
- 術後の膀胱留置カテーテル抜去後
- 泌尿器科領域の手術や処置後
- 前立腺全摘術後(手術直後から数週間)
前立腺がんの全摘術後では、手術に伴う組織の損傷により一時的な血尿が見られることがあります。また、針を刺して行う小線源治療や高線量率組織内照射では、治療後数週間の間に血尿を認めることがあります。
化学療法(抗がん剤などの薬物療法)による血尿
アルキル化薬であるシクロホスファミド(商品名:エンドキサン)やイホスファミドの使用時に、副作用として出血性膀胱炎が発生することが知られています。
これらの薬剤は体内で代謝され、肝臓で分解された代謝物質であるアクロレインが尿中に排泄されます。このアクロレインが尿路上皮細胞を障害することで、出血性膀胱炎を引き起こす可能性があります。
シクロホスファミドの場合、点滴では投与後翌日から48時間以内に、内服では投与後20から30ヶ月で出血性膀胱炎が起きたという報告があります。また、免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ)でも出血性膀胱炎が生じることが報告されており、使用後3ヶ月以上経過してから発症する症例もあるため、注意が必要です。
放射線治療による血尿
骨盤内臓器(膀胱、前立腺、子宮、直腸など)のがんに対して放射線治療を受けた場合、晩期有害事象(治療後数ヶ月以上経過してから生じる合併症)として放射線性出血性膀胱炎が発生することがあります。
一定量の放射線が照射されると、血管の内面を覆っている細胞がダメージを受け、膀胱組織に血液を届けにくくなります。その結果として膀胱粘膜の血管が拡張し破綻しやすくなることにより、出血しやすくなります。
前立腺がんに対する放射線療法では、比較的軽度の血尿を呈する出血性膀胱炎は10%程度に生じ、輸血や止血手術などを必要とする重症のものは1から2%程度に生じると報告されています。子宮頸がんの根治的放射線治療後の晩期有害事象としては、膀胱炎・膀胱出血が5%以下の頻度で発生するとされています。
放射線性膀胱炎は、治療後半年以上から数年経過して血尿を認めることが一般的です。放射線が照射された組織は治りにくくなっているため、自然に止血されないことや、いったん出血が止まっても再発を繰り返すことが少なくありません。
その他の要因による血尿
がん闘病中の血尿には、がん治療以外の原因も考えられます。
- 尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)
- 外傷
- 尿路結石
- 膀胱留置カテーテル留置中の刺激
血尿が起きやすいリスク要因としては、泌尿器科領域の疾患や手術歴、高齢、抗凝固薬の使用、慢性尿路感染、神経因性膀胱、尿路結石、水腎症、長期ステロイド投与などが挙げられます。
男女別にみる血尿の特徴
男性に多い血尿の原因
男性の場合、前立腺に関連した血尿が特徴的です。前立腺肥大症や前立腺がんは、男性特有の血尿の原因となります。また、膀胱がんは男性に約3倍多く発生することが知られています。
男性は基本的に立って排尿するため、血尿の出方を観察しやすいという特徴があります。排尿の最初に濃い場合は前立腺や尿道からの出血であることが多く、ほとんどの場合は前立腺肥大症からの出血です。排尿の最後のほうが濃い場合は、腎臓や膀胱からの出血を疑います。
尿路結石症は男性の7人に1人が生涯に経験するといわれており、女性(15人に1人)と比べて頻度が高くなっています。
女性に多い血尿の原因
女性の場合、尿路感染症(膀胱炎)が最も一般的な血尿の原因となります。また、検尿で血尿が発見される頻度は、すべての世代で女性の陽性率が高いと報告されています。
女性では採尿時に外陰部からの混入に注意が必要です。生理血の混入が心配な場合には、カテーテルでの採尿を行うこともあります。採尿の際は、外陰部を十分に清拭して拡げて採尿することが重要です。
子宮頸がんや卵巣がんなどの婦人科がんが進行した場合、膀胱への浸潤により血尿が出ることがあります。
血尿に対して行われる主な検査
尿検査
血尿の検査では、まず尿検査を行い、尿の中に血液やがん細胞が含まれているかどうかを確認します。
尿潜血検査では、尿試験紙法を用いて赤血球の有無をスクリーニングします。尿沈渣検査では、新鮮尿を遠心して沈澱した尿中の有形成分を顕微鏡下で観察し、赤血球が一視野で5個以上認められると顕微鏡的血尿と判断されます。
尿細胞診検査は、尿の中にがん細胞が混じっていないかを顕微鏡で確認する検査です。がん細胞は正常な組織と違い脆いため、簡単に崩れて尿の中に混じってきます。クラス1から5で表示され、クラス4、5はがん細胞を強く疑う所見を意味します。
血液検査
血液検査では、前立腺がんの腫瘍マーカー(PSA)、貧血の程度、腎機能を調べます。また、血尿が臓器からの出血による場合、出血量が多いと貧血になっていることがあります。
糸球体疾患を疑うときには、血清IgA値の測定を行うこともあります。
画像検査
超音波検査は、放射線を使用せず体に害がなく、痛みも伴わない簡便な検査です。腎臓の形態、膀胱病変、前立腺肥大の有無を確認できます。腎臓では水腎症や腫瘍の有無、膀胱では結石や腫瘍、残尿量を観察します。
CT検査は、尿路結石の診断に圧倒的な診断能力があります。2から3mm以下の小さい結石や、レントゲンでは映らない結石、水腎症を迅速に診断することができます。また、がんが膀胱の筋層に及んでいる可能性がある場合には、転移がないか確認するため、全身のCT検査も行います。
CT尿路造影(CTウログラフィー)では、尿路全体(腎臓、尿管、膀胱)を3次元データの画像として見ることができます。造影剤を用いるため、事前に造影剤アレルギーがないこと、腎機能に問題がないことなどを確認する必要があります。
MRI検査は、がんの存在や広がりを見たり、ほかの臓器への転移の有無を確認したりするための検査です。膀胱がんでは、がんが筋層に及んでいる可能性がある場合に小骨盤内を調べます。MRIはがんと正常組織を区別してはっきりと映し出すことができるため、がんの深達度を調べるのに有効です。
膀胱鏡検査
膀胱鏡検査は、内視鏡を尿道から膀胱へ入れて、がんがあるかどうか、その場所、大きさ、数、形などを確認する検査です。膀胱がんの診断と治療方針の決定のために必ず行う検査とされています。
現在は軟性ファイバースコープが普及しており、以前と比べると痛みや苦痛が軽減されています。検査時間は通常2から5分程度です。ほとんどの場合、外来で局所麻酔を用いて行います。
膀胱鏡検査では、膀胱内を直接観察できるため、超音波検査で指摘できないような小さながんも発見できる可能性があります。また、腎臓や尿管からの出血であれば、左右どちら側から出血しているかを特定できます。
医療機関で行われる血尿への主な対処法
基本的な対応
凝血塊による尿閉予防のため、十分な水分の摂取を行い、排尿量を確保することが重要です。1日2リットル程度の水分摂取が望ましいとされています。
血尿が生じた場合、血尿スケールなどを用いて尿の色調や量を観察します。血尿が持続する場合は、貧血やバイタルサインの変化を観察し、安静の保持に努め、腹圧をかける姿勢などを避けます。
膀胱留置カテーテル挿入中は、閉塞予防のためミルキングや膀胱洗浄が検討されます。
止血治療
強い貧血がある場合は輸血も検討されます。止血を要する場合、以下のような治療が検討されます。
| 治療法 | 内容 |
|---|---|
| 経尿道的電気焼灼 | 内視鏡下で出血部位を電気で焼灼する方法 |
| 生理食塩水による膀胱持続灌流 | 膀胱内を生理食塩水で持続的に洗浄する方法 |
| 放射線治療 | 放射線性膀胱炎などに対する治療 |
| 塞栓療法 | 血管をつめて出血を止める治療 |
| 高気圧酸素療法 | 大量の酸素を血中に取り込み、組織の治りを良くする治療 |
放射線性出血性膀胱炎に対しては、2019年に発表された診療アルゴリズムにおいて、経尿道的凝固術などで止血を得た後、地固め療法として高気圧酸素治療を行うことが推奨されています。高気圧酸素治療では、血流の悪い組織にも多くの酸素が供給され、組織の修復が促進されます。
化学療法によって起きる血尿の原因と対策の詳細
化学療法で血尿が出る仕組み
シクロホスファミドとイホスファミドは、体内で代謝される過程で、肝臓で分解された代謝物質であるアクロレインが尿中に排泄されます。このアクロレインが尿路上皮細胞を障害することで、出血性膀胱炎を生じる可能性があります。
メイヨークリニックのシクロホスファミドを投与した100例の集計では、90g以上の経口投与、あるいは18g以上の静脈注射で出血性膀胱炎が発症し、20%の症例で輸血が必要になったと報告されています。
なお、エピルビシンやドキソルビシン投与直後より2から3日後は、薬剤の色素によって尿が赤く染まるため、血尿と間違えられることがあります。これは薬剤の色によるもので、実際の血尿ではありません。
高リスク要因
副作用として血尿が出やすい要因には、以下のようなものがあります。
- 高齢
- 抗凝固薬の使用
- シクロホスファミドの造血幹細胞移植前治療
- イホスファミド、シクロホスファミド高用量の使用
- 骨盤内への放射線療法の治療歴
主な予防策と対応
シクロホスファミドやイホスファミドの投与時は、出血性膀胱炎の予防としてメスナの投薬を検討されることが多くなっています。メスナはアクロレインを無毒化する働きがあります。
メスナの血中半減期は90分であるため、抗がん薬の投与中は常に膀胱内に存在するように投与されます。そのため、複数回投与(3回/日)が必要となります。
患者さん自身による対策としては、以下のような指導が行われます。
- 膀胱に尿を停滞させず、尿意があったらがまんせず排尿する
- シクロホスファミドやイホスファミドを高用量で投与した場合、点滴投与後1から2日間は、水分を少なくとも1日2リットル摂取して、排尿を頻回に行う
- 寝る前は必ず排尿し、夜間も尿意を感じたらがまんせず排尿する
場合によっては、点滴による輸液負荷や利尿も検討されます。肉眼的血尿が続く場合は、薬剤の投与中止が検討されることもあります。
血尿が強く出ると凝血塊による膀胱タンポナーデが生じて尿閉状態になるため、尿の性状以外にも下腹部膨満感など自覚症状を観察するよう指導されます。血尿が続く場合、泌尿器科のコンサルトが行われ、止血に対する治療(生理食塩水による持続灌流や輸血など)が検討されます。
免疫チェックポイント阻害薬による出血性膀胱炎
ニボルマブ、ペムブロリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬による出血性膀胱炎では、他の免疫関連有害事象と同様に、重症の場合には休薬をしたうえで、ステロイドの投与が考慮されます。
最後に
がん闘病中の血尿は、その原因が多岐にわたるため、自己判断せず必ず医師に相談することが重要です。特に無症候性の肉眼的血尿(痛みのない目で見える血尿)は、膀胱がんなどの重大な病気のサインである可能性があります。
血尿が間欠的に出たり止まったりすることもありますが、1回でも肉眼的血尿が出た場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。早期発見、早期治療が良好な経過につながります。
参考文献・出典情報
東京科学大学大学院医歯学総合研究科 腎泌尿器外科学教室「放射線性出血性膀胱炎に対する高気圧酸素治療」
SURVIVORSHIP.JP「放射線治療の副作用(有害事象)と対策 腹部」

