がん闘病中には、しばしば頻尿(ひんにょう)が起ります。特に夜間に何度も尿意をもよおし、トイレが近くなることは睡眠不足などのストレスに繋がり、生活に多大な影響を与えます。
この記事では、がんに罹患された方に起きうる頻尿のリスクや原因、その対処法や治療法について解説しています。
※医学的な意味での「頻尿」とは?
頻尿は、排尿障害の1つで「排尿回数が異常に多い(1日5~6回)」という自覚症状。尿量が多い(多尿)ため排尿回数が増えるものと、尿量は正常だが1回の尿量が少なく排尿回数が増加しているものがある。頻尿が認められたら、まずは膀胱の異常を考える。
がん闘病中の頻尿の主な原因
がん(腫瘍)による頻尿
・膀胱がんの進行(がんによる膀胱容量の占拠)
・浸潤性の膀胱がんによる排尿筋の弛緩の妨害
手術による頻尿
・大腸がんや子宮がんの手術による神経損傷
放射線治療による頻尿
・照射の副作用(膀胱が萎縮し、膀胱容積が減少する)
その他の理由による頻尿
・炎症(膀胱炎、尿道炎、前立腺炎)
・前立腺肥大(尿を少量ずつしか出せない9
・糖尿病、尿崩症による多飲多尿
・膀胱の知覚異常(脳梗塞など)
・膀胱結石による膀胱粘膜への刺激
・心因性や薬剤性による頻尿
がん患者さんに必要な頻尿の知識
・膀胱壁に刺激があり、尿がそれほどたまっていなくても尿意をがまんできないと、頻尿が生じる。
・頻尿は、膀胱機能における排出障害と蓄尿障害、いずれの状態でも生じる可能性がある。
・下部尿路症状(蓄尿障害、排尿障害、排尿後症状)のうち、蓄尿障害の1つに類尿が含まれる。
【頻尿は、泌尿器以外の原因でも生じうる。代表的な疾患は以下のとおり】
・膀胱粘膜障害=急性膀胱炎、急性前立腺炎、膀胱結石、膀胱異物、尿管下端結石、膀胱がん、COPD、過換気症候群
・膀胱容量減少=前立腺肥大、膀胱頚部硬化症、神経因性膀胱、間質性膀胱炎、妊娠子宮、異所性尿管瘤
・糖尿病による多飲多尿
・心不全、慢性腎不全、加齢
【排尿と蓄尿のメカニズム】
・通常、膀胱に苦痛なくためられる尿量は約300mLまでとされている。膀胱炎などでは、膀胱壁の炎症による刺激の影響で、尿がたまっていないのに尿意ががまんできなくなる。
・局所的な病態(膀胱がん・結石、尿路感染症など)以外の、尿意切迫を必須とし頻尿と夜間頻尿を伴う症状症候群を過活動膀胱といい、頻度の高い病気として知られている。
・前立腺が腫れて尿を少しずつしか出せない場合など、膀胱の容積が小さくなったり、伸展ができなくなったりした場合にも、頻尿が生じる。
医療者(医師や看護師)に報告すべき状況
・排尿回数、尿量、残尿の有無と程度、夜尿などの状況を記録し報告する。
・頻尿の経過、既往歴、治療中の他の疾患があれば報告する。
・生活歴(食生活、就寝時間、睡眠時間、水分の摂取量・内容など)、嗜好品(コーヒーなど)や服用薬剤について報告する。
がん(腫瘍)による頻尿の原因と対策の詳細
腫瘍が原因で頻尿が起きる理由
・進行した膀胱がんが膀胱容量を占拠することや、浸潤性の膀胱がんによる排尿筋の弛緩の妨害などによって頻尿が生じる。
・がんの進行だけでなく、腹部への放射線照射があればリスクが高くなる。
主な対応・対策・治療法
・頻尿の原因、要因の除去、原因疾患への治療(膀胱がんに対する手術など)が検討される。
・入院中の場合はベッド配置の考慮や部屋の選定などに工夫してもらう。
・続発性に生じる尿路感染症を予防する。