腎臓がんと言われているのは、一般には腎細胞がんを意味しています。
腎細胞がんは、腎臓に発生する悪性腫療の90%以上を占めています。残りは小児期に発生するウイルムス腫瘍(腎芽腫)や腎肉腫です。
通常の腎臓がんは、腎臓の尿細管由来であり、男女比は2~3: 1と男性に多く発生します。発生頻度は、10万人あたり2~3人程度ですが、日本でも増加傾向にあります。
静脈の中に腫瘍が広がる傾向が強く、静脈内に腫瘍塞栓として浸潤したり、他臓器への転移を起こしやすいがんです。
腎臓がんの典型的な組織型は、腫瘍の割面が黄色の淡明細胞がんです。他にも、肉眼的に淡褐色の頼粒細胞がんや褐色の嫌色素細胞がんなどの組織型があります。
腎臓がんの分類と種類の詳細
病理組織の形による分類についてもう少し詳細に解説します。
これはがんの細胞組織の「顔つき」ともいうべきもので、目で見た色や形、さらに顕微鏡で見える特徴から、大きく五つの種類に分けられます。
●明細胞がん
全体の70~80%ともっとも多いタイプで、VHL遺伝子の異常が多く認められます。
乳頭状がん
全体の10~15%。予後(治療後の経過)は比較的良好ですが、その形によって2種類に分けられます。
タイプ2と判断されるものは予後が悪いとされています。
嫌色素細胞がん
全体の約5%、予後が比較的良いタイプです。
紡錘細胞がん(肉腫様がん)
全体の約5%。予後はもっとも不良です。
ほかに1%以下とわずかですが、集合管がん(ベリニ管がん)があり、これは予後は不良です。
腎臓がんの病期(ステージ)分類
腎がんの病期は、日本の腎癌取扱い規約によれば、原発腫瘍、所属リンパ節転移および遠隔転移(他臓器への転移)の3つの観点を総合して、病期を4段階に分類しています
ステージI期
腫瘍の大きさは7cm以下で腎臓に限局し、リンパ節転移や他臓器への転移を認めない。
ステージⅡ期
腫瘍の大きさは7cmをこえるが腎臓に限局し、リンパ節転移や他臓器への転移を認めない。
ステージⅢ期
腫瘍が主静脈内に進展している。あるいは、腫瘍が副腎・腎周囲に浸潤しているがゲロタ筋膜をこえていない。あるいは、所属リンパ節の1個に転移を認める。他臓器への転移を認めない。
ステージⅣ期
腫瘍がゲロタ筋膜をこえて浸潤している。あるいは、所属リンパ節の2個以上に転移を認める。あるいは、他臓器への転移を認める。なお転移しやすい部位としては主に肺と骨である。
腎臓がんのステージ別の治療方法
腎臓がんの病期別の治療法は、ステージ1から2では、根治的腎摘除術が標準治療となります。
ステージ3でリンパ節転移があった場合には、術後に、インターフェロンによる免疫療法や分子標的薬が予防的治療として行われることもあります。
ステージ4では、転移している臓器(肺、肝臓、骨、リンパ節など)の数が2臓器程度なら、根治的腎摘除術とインターフェロンやインターロイキン2などを用いた免疫療法の併用療法や分子標的薬による投薬が行われています。
3臓器以上に転移がある場合や根治的腎摘除術が困難な場合は、動脈塞栓術と免疫療法の併用療法、分子標的薬の投薬が考えられます。