米国では上皮性の卵巣がん1期には、化学療法の代わりに放射線療法を行うこともあるようです。
しかし、日本では卵巣がんの治療目的で、放射線療法が行われることはほとんどありません。
ちなみに、卵巣の腫瘍で胚細胞腫という病気は、放射線が極めて良く効きます。
過去には放射線療法が盛んに行われ、治療の成果も良好でした。
しかし、現在はこの病気も化学療法で治療されることが多く、放射線療法はほとんど行われません。
30年くらい前には、卵巣がんも子宮頚がんと同様に、骨盤部の放射線療法が行われていました。しかし、胃の周りなどに転移を起こして亡くなる患者さんも少なくありませんでした。
そのため放射線療法を行うときは、腹腔内全体に放射線を当てることになります。
腹腔内のいろいろな大切な臓器は放射線に弱いため、放射線を少ししか当てることができず、がんを攻撃するには不十分です。
また、卵巣がんの多くは腺がんという、放射線があまり効かない種類のがんです。
そのため、卵巣がんの放射線療法には大きな制限が加わり、成果がなかなか上げられませんでした。
成果が上がらない割に、腹部全体に放射線を照射すると、少ない放射線量でも重篤な副作用が出現します。
いっぽう、化学療法の進歩により卵巣がんによく効く薬が開発され、放射線療法はだんだん行われなくなってきました。
ですので卵巣がんに対して、日本では放射線治療が行われることはまずありません。
明細胞がんの再発予防に効くという発表もありましたが、その後実証されませんでした。卵巣がんには放射線治療は効果がないと考えたほうがよいでしょう。