がん闘病中の患者さんには「口の渇き(口渇。こうかつ)」が起きることがあります。口の渇きは更年期、加齢によって発生しやすくなりますが、がんに関する口の渇きや、治療に関連する口の渇きがあります。
この記事ではがん罹患中に起きる口渇についてどんなものがあるのか?原因や対処法はあるか?という点についてまとめたいと思います。
※口の渇き(口渇。こうかつ)とは?
口渇は、口腔・咽頭粘膜の乾燥や、全身組織の水分欠乏によって生じる口腔内やのどの渇きを感じる主観的な感覚のことで、水分摂取を欲する状態になります。
がん患者さんの口の渇きの原因として考えられるもの
がん(腫瘍)によるもの
・消化管閉塞や悪液質などによる水分摂取量の低下
・電解質の異常(高カルシウム血症、高血糖など)
化学療法(抗がん剤などの投与)によるもの
・悪心、嘔吐による水分摂取量の低下
・腎機能障害による水分の喪失
放射線によるもの
・唾液腺障害による唾液分泌量の低下
その他の原因によるもの
・精神的、心理的な刺激、不安や緊張の増大
・唾液分泌障害が副作用として出現する薬剤の使用
注意点
・抗うつ薬、睡眠薬、降圧薬など、唾液分泌障害を引き起こす薬剤を用いていないか確認する必要があります。
・症状の出現時期や血液検査結果などから、局所的(口腔・咽頭粘膜の乾燥)なものか、全身性のものか判別するために医師の診断が必要です。
・全身組織の水分欠乏による口渇の場合は、輸液療法を行うこともあります。唾液分泌量の低下が原因の場合は、少量ずつ水分を摂取して苦痛の時間を減らすことはもちろん、唾液による自浄作用が低下しているため、口腔衛生管理にも留意することが重要です。
がん(腫瘍)によって起きる口の渇き
・消化管閉塞や悪液質などによって水分摂取量が減少することで生じる可能性があります。
・破骨細胞による骨吸収の亢進によって、骨から多量のカルシウムが血液中に溶け出すことで生じることがあります(高カルシウム血症)。
・がんによる耐糖能異常によって高血糖となることで生じる可能性があります。
消化器の症状(悪心、嘔吐、下痢など)が出ている場合は脱す症状が起きやすく、骨転移がある場合は高カルシウム血症を生じやすいといえます。
口の渇きの基本対策
脱水と高カルシウム血症は、緊急対応が必要なので医師の指示のもと対応を行ってもらうことが重要です。
骨転移が指摘されている患者さんや終末期の人の場合は血清カルシウム値を確認することになります。消化器症状出現後に口渇が現れた場合は、脱水になっていないか、血液検査結果(ヘマトクリット値の上昇、BUN-Creの上昇など)を確認したりします。
予防
・悪心、嘔止や下痢がある場合、脱水予防のために、必要に応じて輸液による水分補給を検討することになります。
・骨転移を認める場合は定期的に血清カルシウム値を確認することが予防の第一歩です。
症状出現時の対応
・脱水が生じている場合は、必要に応じて輸液を行います。
・高カルシウム血症による口渇では、尿中へのカルシウム排泄を促進させる対応が行われます。
・口腔ケアや氷片を口に含むなど、口渇の緩和につながる看護ケアを行います。
放射線治療によって起きる口の渇き
大唾液腺や口腔への放射線照射によって唾液腺が障害され、唾液分泌量が減少することで口の渇きが起きる可能性があります。
大唾液腺や口腔が照射範囲に含まれる場合、放射線療法開始後2~3週目ごろから口渇を自覚し始め、治療経過とともに症状が悪化する可能性があります。また、放射線療法による口渇は、口内炎や味覚障害といった副作用も同時に引き起こし、それらの症状を悪化させる要因にもなります。
症状出現時の対応
口腔保湿薬(バイオティーンマウスウォッシュなど)を使って、食事前や口渇を感じた際に使用します。
唾液による自浄作用が低下しているため、日常よりも口腔衛生管理に注意することが大切になります。