肝細胞がんの90%以上は、B型およびC型肝炎ウイルス感染が原因です。
肝細胞がんの患者さんの95%が、B型、C型のどちらかの肝炎ウイルスに感染しています。
そのうちC型肝炎ウイルスに感染している患者は80%。
抗ウイルス治療をしなければ、肝炎ウイルスによって慢性肝炎を発症し、肝硬変を経て肝がんに進行するケースが多いです。
肝硬変の成因別に発がん率をみてみると、B型肝炎ウイルス由来の場合、肝硬変と診断された時点から10年後には10人中3人にがんが発生し、その後発がん率は増加しません。
しかし、C型肝炎ウイルス由来の場合、肝硬変と診断された時点から10年後には10人中5人にがんが発生し、その後も発がん率はどんどん増加していきます。
このようにB型肝炎とC型肝炎では発がんの様式が異なります。
肝炎ウイルス感染経路には、
1)妊娠分娩による母子感染、
2)感染血液製剤注射、
3)針刺し感染(麻薬・覚醒剤注射、入れ墨、医療従事者の事故)、
4)性行為などがあります
B型肝炎ウイルスと肝臓がんの関係
B型肝炎ウイルスは、血液や体液(精液、乳汁など)を介して感染します。3歳以上の場合には、感染しても急性肝炎の症状が出るのは20%ぐらいです。
極めてまれですが、B型急性肝炎から劇症肝炎に移行することがあります。
問題となるのはB型慢性肝炎です。3歳より小さい時期にB型肝炎ウイルスを持った母親からB型肝炎ウイルスが感染すると、ウイルスが排除されずに肝臓に感染した状態となります(キャリアという)。
この状態で症状が現れず、生涯をまっとうする場合を無症候性キャリアといいます。
この無症候性キャリアの10%ぐらいが症状を引き起こしB型慢性肝炎となります。
慢性肝炎が治癒せずに進行していくと、肝硬変の状態となり肝機能障害を引き起こし、黄痘、腹水などが認められます。
B型肝炎ウイルスの遺伝子は、感染した肝細胞の遺伝子の中に組み込まれ、これが原因で肝がんが発症してくることがあります。
C型肝炎と異なって、B型肝炎の場合には、肝硬変までいかなくても肝がんが出てくることがあります。
C型肝炎ウイルスと肝臓がんの関係
B型急性肝炎が慢性化することは、まれであるのに対し、C型肝炎では、急性から慢性化する頻度は60~70%です。
その後C型慢性肝炎が肝硬変となるのは20%程度だといわれています。主な原因としては輸血があげられます。
C型肝硬変にまで進行してから肝がんが出てくることがほとんどであり、C型肝硬変の50%前後に肝がんが発症します。
血小板数と肝硬変の程度、発がん率に相関があることが報告され、血小板数の把握は肝硬変の程度や発がん率の予測に有用です。
肝炎・肝硬変と肝臓がんの関係
日本人の原発性肝臓がん(肝細胞がん)の80パーセントは、肝硬変が進展して発症することが明らかになっています。
つまり肝硬変の患者さんは、非常に高い確率で肝臓がんを発症するため、肝臓がん予備軍といっても過言ではありません。
肝硬変は、さまざまな原因で肝臓をつくっている細胞(肝細胞)がくり返し損傷することによって発症するとされています。
アルコールの長期間にわたる多量摂取、肝炎ウイルスの感染、薬物や毒物の長期摂取、自己免疫、胆汁のうっ血などです。
これらのうち、肝硬変をもっとも引き起こしやすい原因は肝炎ウイルス(8型またはC型)の感染です。
肝炎ウイルスに感染すると、肝臓をつくっている細胞が炎症を起こして肝炎となり最終的には細胞が壊死して肝硬変となります。
実際に肝硬変になるまでには長い時間がかかりますが、これは肝臓が非常に大きな臓器で機能的に余力があり、また損傷しても再生する能力をもっているためです。
肝硬変がときには30~40年もかけてゆっくり進行している間、患者にはほとんど自覚症状がありません。損傷していない肝細胞が必要な機能を維持しているからです。
しかし肝硬変を起こした部分が広がっていくにつれ、疲れやすい、食欲や体力が低下したなどの症状が現れます。
そして肝硬変が広がると、腹水やむくみ、黄疸、皮膚のかゆみ、胆石、出血傾向、肝性脳症(精神・意識障害)、食道血管の出血、胸や顔の赤い斑紋(クモ状血管腫)などが現れてきます。
肝硬変に対しては治療法がないため、患者は最終的には肝臓が完全に機能を失って死に至るか、あるいは肝臓がんを発症することになります。
そうなる前に治療を始めれば、進行をある程度遅らせることができます。