喉頭がんの多くは声帯に発生します。
声帯は、声を出していないときにはV字型に開いており、空気が気管へ自由に通過します。
声帯が収縮すると、肺からの空気がぶつかって振動し、音が出ます。この振動が、舌や口蓋、唇などの働きによって言葉になります。
喉頭がんのうち70%は、この声帯に発生します。このほか、声帯よりも上方や下方に発生することもあります。
発生リスクを高めるものに、喫煙と過度の飲酒があります。そのためか女性よりも男性に多く見られるがんです。
診断:画像診断が中心
頸部の触診を行って、リンパ節の腫れを調べたり、鏡で咽頭内を観察するほか内視鏡や喉頭鏡を用いて喉頭の内部を直接観察します。
CTスキャンやMRI、食道と冒をX線で撮影する食道造影などの画像診断も行われます。
さらに、患部から組織片を採取し、顕微鏡で調べる生検を行って確定診断を下します。
治療法:早期であれば放射線で
喉頭がんの最も一般的な治療法は手術ですが早期であれば、放射線の単独治療で行います。
Ⅱ期は手術療法と放射線療法の組み合わせが基本で術前か術後の補助療法として化学療法も用いられます。
術前の化学療法で病巣を縮小させることで喉頭の温存率が高まるという報告もあります。
切除できない進行がんの場合には、放射線療法と化学療法を組み合わせた治療法が用いられます。
喉頭を全部摘出した場合には、声帯がなくなるため、声を失います。
しかし、食道発声、電気発声などの方法で声を取り戻し、話すことも可能になります。
ただし、発声法をマスターするためには訓練が必要です。
最近では、喉頭を温存する手術方法として、喉頭を一部のみ切除する喉頭部分切除術、あるいは半分のみ切除する喉頭半摘出術が増えてきており、全摘の例は減りつつあります。
喉頭(声帯)摘出後の発声法の練習
喉頭や咽頭の手術で声帯まですべて摘出すると、声が出なくなります。患者さんのショックは大きく、日常生活にも探く影響します。
声を取り戻すには、発声法を練習するか、人工喉頭を用います。
手術前と違う声になりますが、話ができない不自由さからは解放されます。
声帯を全摘出せず、一部残す手術法もありますが、その場合でも発声には練習が必要で、手術前とはだいぶ声質が変わります。
喉頭(声帯)摘出後の食道発声法
食道の入り口付近のひだを声帯の代わりに振動させる発声法です。
口や鼻で吸い込んだ空気を食道の入り口まで入れ、それを口の中に吐き出して発声します。
最初から発声するのはむずかしく音しか出ないので、あきらめてしまう人も少なくありませんが根気よく練習するとやがて発声できるようになります。
発声し、会話できるようになるまで数か月以上かかりますが、習得できるならこれが最も便利な発声法だといわれています。
特別な器具がいらないので、発声法さえマスターすれば自由に話すことができます。
長い期間、1人だけで練習するのはつらく途中であきらめてしまいがちですが、同じ目的をもった仲間と一緒なら励みになり、意欲もわいてきます。
病院で聞かれる発声教室やがんの患者の会など、この発声法の練習会を行なっているサークルが全国各地にあるので、参加してみるのもよいと思います。
人工喉頭の種類
電気人工喉頭
電気振動によって声を出す装置をのどに取りつける方法です。
食道発声法のように長期間の練習をしなくても、1~3週間程度の練習で声が出せるという利点があります。しかし声が単調になったり、装置を忘れると声が出せないという欠点もあります。
笛式人工喉頭法
振動する弁が入っている「タピアの笛」などと呼ばれる器具の一端を永久気管孔に当て、もう一端を口にくわえて発声します。
器具があれば誰にでも簡単に発声できますが、これもやはり声が単調なのと、装置がないと発声できない、装置がやや大げさに見えてしまうなどの欠点があります。
その他
気管孔に挿入・留置して発声を可能にするスピーチカニューレという器具も導入されています。