咽頭がんは、鼻の奥から食道につながる部分にできるがんです。
喉頭がんほどは放射線が効きませんが、治療の中心はやはり放射線です。
喉頭がんに比べて、放射線をかける範囲が広く、そのため、治療中には口の粘膜のただれや痛みという副作用が出て、治療後には口が渇く、味がわからないといった副作用が出ることもあります。
このうち上咽頭とは、鼻の奥からのどに通じる部分をいいます。ここにもまれにがんが発生します。
上咽頭がんは頭頸部がんのひとつですが、他のがんとは原因や治療法が大きく異なっています。
原因は飲酒や喫煙ではなくウイルスとの関連が指摘されています。
治療も、抗がん剤や放射線の効果が高いため、手術を行うことは原則ありません。
上咽頭がんの抗がん剤治療の目的
上咽頭は、脳をおさめる頭蓋の底部に接しています。そのため、この部分のがんを手術で切除することは困難です。
さらに診断時にはすでにリンパ節などに転移が始まっていることが多いことから、治療は放射線治療を中心とし、これにしばしば化学療法が併用されます。
化学療法の目的は以下の通りです。
①化学放射線療法により治癒を目指す
②がんの進行を止めて延命を図る、または痛みなどの症状を緩和する
上咽頭がんに対する基本的な抗がん剤の投与プログラム
上咽頭がんに対しては放射線治療が中心的な治療になりますが、しばしばシスプラチンなどの抗がん剤が併用されます(化学放射線療法)。
抗がん剤の組み合わせ方には、化学療法でがん病巣を縮小した後に放射線治療を行う「連続併用法」、同時期に並行して両者を行う「同時併用法」、両者を交互に行う「交替併用法」などがあります。
ほかに、まず化学療法を行い、その後も抗がん剤(おもにシスプラチン)を投与しながら放射線治療を行う治療も試みられています。
以下は化学放射線療法における代表的な併用療法です。
①フルオロウラシル+シスプラチン
もっともよく用いられる併用療法です。
放射線治療前にがん病巣を縮小する目的で行うことがあるほか、同時併用法、交替併用法でも利用されています。
②シスプラチン単剤
おもに同時併用法で用います。
③ブレオマイシン+エピルビシン+シスプラチン(BEP療法)
連続併用法として、放射線治療前に行います。
④エピルビシン+シスプラチン+フルオロウラシル
③と同様に、連続併用法として放射線治療前に行います。
上咽頭がん治療の課題
上咽頭がんでは化学放射線療法が有効でありしばしば最初の選択肢となります。
しかし副作用も放射線治療に比べて強く、神経症状や脊髄症などの後遺症が残ることがあります。今後はこのような後遺症を減らす工夫が必要と考えられます。