咽頭がんの経過と転移しやすい場所として、小さくても頸部リンパ節に転移することがよくあります。
また、重複がんといって、同様の危険因子(喫煙や飲酒)をもつ食道がんや口腔がんが同時に発生することも少なくありません。
上咽頭がんは、肺や肝臓、骨などに遠隔転移しやすく滲出性中耳炎を合併することがあります。
咽頭がんの治療と抗がん剤・放射線の活用
頸部リンパ節の治療も含めて放射線療法が中心となり、化学療法(フルオロウラシルやシスプラチンなど)を併用する場合もあります。
また、中咽頭がんの一部の小さながんには、レーザー療法や凍結療法を行なうことがあります。これらの治療でも腫瘍が残った場合は手術で切除します。
また、上咽頭がんは、放射線や抗がん薬が非常によく効き、かなり進行していても、放射線療法で治るケースが少なくありません。
中咽頭がん、下咽頭がんも、早期なら放射線療法と化学療法で治癒が期待できます。
咽頭がんの外科手術
上咽頭の近くには神経が多数あるため、基本的に手術は行ないません。
しかし、放射線療法単独、あるいは化学療法との併用で治療しても病巣が残る場合、主に頸部リンパ節転移に対しては手術が行なわれます。
中咽頭がんは、ほかの治療でがんが残った場合、扁平上皮がんの場合は、扁桃腺や舌の一部、口蓋、下顎骨などを切除します。
欠損部分には患者さん自身の皮脂や筋肉、骨などを移植する再建術を施し、できる限り機能低下を防ぎます。
下咽頭がんは、発見時にはすでに進行しているケースが多いため、多くは手術が必要となります。
可能な場合は喉頭を残すこともありますが、広く行なわれているのは下咽頭、喉頭、食道を摘出する方法です。
頸部リンパ節に転移している場合は、リンパ節も切除します。
同時に、食道の代わりに空腸を移植する再建術も行なわれます。
咽頭がんの再発と転移
頸部リンパ節への転移がなければ、7O%以上の完治が期待できますが、Ⅳ期の下咽頭がんは約30%です。
どの咽頭がんも、多数のリンパ節転移がある場合は再発の確率が高くなります。治療後も喫煙を続けていると、別の場所に新たながん(2次がん)ができやすくなります。
咽頭がんの手術後のケアと永久気管孔の造設術
咽頭は、気管と食道の上部にあります。
食べ物を飲み込むときに気管に入り込まないようにするふた(喉頭蓋)も、咽頭の一部です。
咽頭を摘出すると、気管の蓋がきちんと閉まらなくなってしまうので、この機能が失なわれないよう、再建術が行なわれます。
また、のどが乾燥しやすくなるので、マスクや加湿器を用いるなどしてのどを守ります。
咽頭がんや喉頭がんで喉頭を摘出する手術を受けた場合は、呼吸をするために、頸部に穴をあけて「永久気管孔」がつくられます。
この場合、加湿も除塵もしない空気が直接、気管に入るので、せきやたんが出やすくなります。
ふだんから加湿器を用いたり、永久気管孔にガーゼを当てるなどして、気管内の乾燥を防ぐ必要があります。また、感染症を防ぐため、永久気管孔を清潔に保ちます。
永久気管孔をつくった場合、そこから水が入ることは避けなければなりません。
入浴しても永久気管孔が水没しないよう注意し、シャワーをかけるときも水が入らないように気をつけます。
のどの手術後は食道が狭くなることがあるので、食べ物を飲み込む練習や調理の工夫も必要です。
嗅覚や味覚に影響して食事の好みが変化し、食欲が落ちることもありますが、時間をかけて慣らしていきます。