「乳がんになった場合、今の仕事を続けたいと回答した女性は半数にとどまる」というニュースに対するツイート。
治療の過酷さは数十年前から変わらず。
心身ともに、仕事に集中できる状況ではない。
職場に相談して調整できることなんて微々たるもの。患者会で相談してもどうにもならない。
対策はないに等しい。
「乳がんでも今の仕事」半数のみ…仕事量や人間関係に不安 https://t.co/5pohcv2Hyx
— 本村ユウジ (@motomurayuji) 2018年9月24日
乳がんと仕事。何が課題か?
仕事に集中できなくなる要素は何かというと、
1.乳がん自体によるもの
2.治療によるもの
上記の2つがあります。
それぞれ精神的な影響もありますが、まず「1」については、肉体的に影響があるのは進行期です。
肺や骨に転移が起きると苦痛が生じます。また乳房のがんが増悪すれば出血などを伴います。このような状況で仕事を続けるのは肉体的にも精神的にも厳しいです。
体調面で会社に行って仕事をしたり、人と会って打ち合わせをできる、という状況ではなくなります。
ただ、ここまで進行していない場合は、肉体的に仕事に支障が出るケースは少なく、日常生活や(よほどハードな仕事でなければ)一般の人と変わらず仕事ができる可能性が高いです。
問題は「2」です。
手術をするとなれば事前入院も含めて数日~数週間の休みが必要になります。
手術後も痛みや腕の違和感などが生じる可能性があるので入院~手術が終わったからといって100%前の状態に戻れるわけではありません。
放射線を受けるとなると、数回に分けて実施するためフルタイムで出勤し続けるのが困難です。遅刻、早退、有給などを取得して通院することになります。
ホルモン療法や抗がん剤の場合は、通院で可能な場合もあれば入院して実施することもあります。
術後の予防的なホルモン療法では5年以上の投薬を勧められるなど、「治療をし続ける心身への負担」が増します。
それだけでなく副作用が起きてコンディションが整わず出勤できない、脱毛などにより人前に立つ仕事を躊躇せざるを得ない、ということもあります。
乳がんそのものより、過酷な治療によって仕事に影響が出る
乳がんにおいては「ここで治療が終わり」というタイミングがまず訪れません。
手術が成功に終わっても経過観察でOKというケースは少なく、追加の投薬を勧められます。長期にわたりますが「予防目的」のため効果が分からなくても続ける、という形になります。
もし再発や転移があった場合は、このときも投薬になります。
問題の根本は「連続的に心身ともにダメージが大きい治療が続く」ことにあります。
労働時間や退勤時間を早くする、一時的に休職する、という対応は大きな会社では認めてもらうことは可能かもしれませんが、永続的に配慮してもらえることは稀です。
そのため、最初は職場の理解を得て仕事を続けられたとしても、しばらくして退職せざるを得なくなった、転職せざるを得なくなった、という人が多いのです。
早期で治療のダメージが軽いうちはよいですが、治療が長期化したりダメージが大きくなってくると仕事をすること自体が難しくなります。
抜本的な解決策がない
国が経済的な支援などをしてくれれば、仕事をせずに収入を得て日常生活+治療を受けられる、という形もありえますが、一般の乳がん(他のがん患者さんも含む)患者さんに対して国や自治体が大きな支援策を打ち出す可能性は極めて低いです。
正社員ではなくパート、アルバイトに切り替えても、収入は減り、治療を受ける経済的な土台が揺らぐ可能性が高くなります。
事前に高額ながん保険や収入保障保険に入っていたり、仕事をしないで済む資産があったりする人以外、仕事の調整と内容、収入について「自力でなんとかするしかない」という状況に置かれてしまうのです。
「国が検討すべき」などと言ってもどうにもならないので、早い段階から家族に乳がんについて今後の治療予定などを伝えて、可能な支援をお願いする、在宅でできる仕事や副業のスキルを得る、などの対応が必要になります。
病気に加えて、経済面や仕事面での負担も増すのは本当に厳しいことです。
それががんの厳しさの1つだといえます。