02.がんについて

抗がん剤以外でがん治療に使われる薬は?

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分子標的薬

がんで使われる薬=抗がん剤というイメージがあります。

しかし化学療法(薬を使った治療)で使われる薬には他のタイプもあります。

■分子標的薬

1990年代以降、分子生物学の研究が進み、がん細胞の分裂や増殖、さらには悪性化などにかかわるさまざまな分子が明らかになってきました。

たとえば、がんに増殖をうながす分子(分子=細胞に含まれる糖質・脂質・タンパク質(アミノ酸)・核酸などのこと)があります。その他、がん細胞の表面でそれを受け取る分子、がん細胞の内部で増殖信号を次々に伝達していく分子、細胞分裂にかかわる分子や細胞周期を進行させたりストップさせたりする分子、細胞に自殺をうながす分子、毒性のある物質を細胞外にくみ出すなどして細胞に薬剤耐性をもたせる分子、がんの浸潤や転移にかかわる分子、がんに向かって血管を伸長させる分子、さらにがんのみに特徴的な細胞表面の分子(がん抗原)などがあります。

分子標的薬とは、これらの分子をターゲットにし、そのはたらきを妨害する薬です。1990年代末から、イマチニブ(商品名グリベック)やゲフィチニブ(商品名イレッサ)などが臨床現場でも利用され始めました。

従来の抗がん剤も分子を標的とすることがありますが、分子標的薬は薬を作る段階からがん細胞のみで活発にはたらく分子を標的にしている点で異なっています。

また、従来の抗がん剤は正常な細胞でも活発に分裂する細胞を攻撃しましたが、分子標的薬はおもにがん細胞を攻撃するため、骨髄や胃腸の粘膜がダメージを受けることも少ないことが大きな特徴です。簡単にいえば副作用が少ないのです。

皮膚に発疹が現れたり、間質性肺炎が生じるといった副作用の問題はあるものの、分子標的薬の発展によってがん治療は新たな局面を迎えています。とはいえ、多くの分子標的薬を単独で用いた場合、生存率はそれほど高くはならず、他の抗がん剤と併用しても上乗せ効果はかぎられます。

現在、分子標的薬は非常に高価です。これは製薬会社が投じた莫大な開発費を回収するためではあるものの、患者に多大な負担を強いています。

そのため、たとえばイギリスでは費用対効果が悪いという理由で、大腸がんと乳がんに対してベバシズマブ(商品名アバスチン)の使用を認めていません。またアメリカでも、食品医薬品局(FDA)は乳がんに対してベバシズマブは効果が不十分で、副作用もあるとして、承認を取り消しています。

分子標的薬の歴史はまだ浅く、今後も発展が期待されています。

■ホルモン薬

乳がんや前立腺がんでは、がん細胞の表面に性ホルモンを受け取る分子(ホルモン受容体)が存在することがあります。このようながん細胞では、ホルモンを受け取るとがん細胞が増殖します。そこで、乳がんや前立腺がんの患者に対しては、しばしば抗ホルモン薬が治療に利用されます。

1870年代、イギリスの研究者が卵巣から分泌される何らかの物質が、乳腺を刺激することに気づきました。後に彼はこの発見をもとに、進行した乳がんの患者の治療にあたって卵巣を2つとも切除しました。すると、乳がんが消失したのです。性ホルモンの発見以前のこの治療法は、ホルモン療法の端緒となりました。

ホルモン療法は、抗がん剤のようにがん細胞に対する殺傷効果を期待したものではありません。より静的に、がん細胞の増殖を抑えるとされています。そのため、副作用も比較的軽くすみます。乳がんの場合、乳がんの表面にホルモンの受容体が多いと、患者の治療後の経過は良好です。

【抗がん剤の特徴と使われ方の整理】

1950年頃、抗がん剤がはじめて導入された頃には、耐性ができるまでは単独の抗がん剤を使うことがよいとされてきました。しかし1950年代中頃には、作用のしくみの異なる複数の抗がん剤をいっしょに使うと、効果が増強すると考えられるようになりました(多剤併用療法)。

がんは、自己複製能をもち半永久的に子孫をつくり続ける「がん幹細胞」とその子孫のがん細胞からなる不均一(ヘテロジニアス)な集団であることが明らかになってきました。

さらにがん細胞は分裂ごとにその性質を変えていくため、きわめて性質が多様です。いくつかの抗がん剤を併用すれば、多様ながん細胞に対してそれだけ幅広く対応できます。そのために併用療法は、抗がん剤に耐性をもつ細胞を出現しにくくすると推測できるのです。

多くのがんにおける多剤併用療法の原則として次の3つがあげられます。

1.患者のがんに対して有効な薬剤を使用する
2.できれば作用のしくみと毒性がそれぞれ異なる薬剤を選ぶ
3.個々の薬剤について、必要とされる血中の濃度をできるかぎり低下させない

しかし、抗がん剤の多くは、血液をつくる骨髄のはたらきを著しく低下させるという共通の副作用をもっています。

この副作用によって免疫システムにとって重要な好中球(白血球の一種)が減少するため、患者の生命を脅かすこともあります。このことは、併用療法における投与量や投与間隔を決める最大の要因になっています。

最近では、抗がん剤の効果をより増強する際には、1回の量を増やすより、投与間隔を短くするほうがより有効と考えられるようになりました。投与間隔が短ければ、がん細胞がふたたび増殖するには時間が足りないからです。

併用療法のひとつとして、増強剤(モジュレーター)を投与し、抗がん剤のがん細胞を殺す効果を高めたり、副作用を軽くする方法もあります。増強剤は抗がん剤とはかぎらず、併用する抗がん剤が体内ではたらくしくみや分解される過程などを変化させます。

たとえば、大腸がんにおいては、代表的な抗がん剤のフルオロウラシルにレボホリナートという増強剤を追加すると、がんの治療効果が高まり、患者の余命も延びることがわかっています。

以上、がんで使われる薬についての解説でした。

がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。

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「がんの研究と、患者さんのサポート」を2008年から続けています。現在まで、3,000名を超えるがん患者さんやご家族をサポートしてきました。詳しいプロフィールはこちら。

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