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ビカルタミド(カソデックス)とは
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
ビカルタミド(商品名:カソデックス)は、前立腺がんの治療に用いられる抗アンドロゲン薬です。前立腺がん細胞の増殖には男性ホルモン(アンドロゲン)が深く関わっており、この薬はアンドロゲンの働きを阻害することでがんの進行を抑制します。
前立腺がんは男性特有のがんであり、日本では罹患数が年々増加しています。
2021年の統計では男性がんの罹患数で第1位となっており、年間約10万人の新規患者さんが診断されています。ビカルタミドは、このような前立腺がんの治療において重要な役割を果たす内服薬として、1999年に日本で承認されました。
ビカルタミドの作用機序と特徴
どのように効くのか
前立腺がん細胞の増殖メカニズムを理解することで、ビカルタミドの働きを知ることができます。
男性ホルモンの一種であるテストステロンは、前立腺がん細胞内で5α-リダクターゼという酵素によってDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されます。このDHTがアンドロゲン受容体(AR)と結合すると、細胞核内へ移行してDNAと結合し、がん細胞の増殖が促進されます。
ビカルタミドは、DHTとアンドロゲン受容体の結合を競合的に阻害します。つまり、DHTよりも先にアンドロゲン受容体に結合することで、男性ホルモンによる刺激をブロックし、がん細胞の増殖を抑制するのです。
薬物動態の特徴
ビカルタミドは経口投与後、血液中で約8週間かけて定常状態に達します。血漿中濃度は投与6時間後から24時間後までほぼ一定に保たれ、消失半減期は約8.4日と長いことが特徴です。
体内では主に肝臓で代謝され、尿中(約36%)および糞中(約43%)に排泄されます。血漿蛋白結合率は約96%と高く、長期間体内に留まって効果を発揮します。
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対象となるがんと使用方法
適応となる患者さん
ビカルタミドの適応は「前立腺がん」です。具体的には以下のような状況で使用されます:
| 使用状況 | 投与方法 | 併用療法 |
|---|---|---|
| 外科的去勢術を実施した場合 | 単剤投与 | なし |
| アンドロゲン除去療法を実施する場合 | 併用投与 | LH-RHアナログまたはLH-RHアンタゴニスト |
| 放射線療法と組み合わせる場合 | 併用投与 | 外照射療法または組織内照射療法 |
MAB療法(最大アンドロゲン遮断療法)について
日本では、ビカルタミドを含むMAB療法(Maximal Androgen Blockade:最大アンドロゲン遮断療法)が広く実施されています。この治療法は、CAB療法(Combined Androgen Blockade:併用アンドロゲン遮断療法)とも呼ばれます。
男性ホルモンは約95%が精巣から分泌されますが、残りの約5%は副腎から産生されます。LH-RHアゴニストやアンタゴニストの注射薬は精巣からの男性ホルモン分泌を抑えますが、副腎由来の男性ホルモンは抑制できません。
そこで、注射薬と抗アンドロゲン薬(ビカルタミドなど)を併用することで、精巣と副腎の両方から分泌される男性ホルモンの働きを最大限に抑えます。日本人を対象にした研究では、特に骨転移のある前立腺がん患者さんへの治療として、このMAB療法の有効性が示されています。
投与方法と投与スケジュール
標準的な投与方法
ビカルタミドの投与方法は以下の通りです:
投与経路:経口(内服)
投与量:1回80mgを1日1回投与
投与のタイミング:食事の影響は受けにくいため、毎日決まった時間に服用
ビカルタミドには通常の錠剤のほか、口腔内崩壊錠(OD錠)も販売されていましたが、一部の製品は供給の安定化のため普通錠に集約されています。
投与開始から効果発現まで
ビカルタミドは投与開始後、約8週間で血中濃度が定常状態に達します。効果の判定は、投与12週後を目安に行われることが多く、PSA(前立腺特異抗原)値の推移を観察しながら継続の可否を判断します。
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効果と奏効率
臨床試験での成績
国内で実施された臨床試験における有効性は以下の通りです:
未治療進行前立腺がん(病期C/D)を対象とした試験では:
- LH-RHアゴニストとの併用療法:有効率66.6%~77.5%
- 単独療法での明確な奏効率データは添付文書に記載されていません
国内47施設で総計197例を対象に実施された二重盲検比較試験を含む臨床試験では、LH-RHアゴニストとの併用により、単独療法よりも前立腺がんの増殖を止める力が強いことが確認されています。
効果の持続期間と限界
ビカルタミドを含むホルモン療法は、がんを完全に消滅させる治療ではありません。がん細胞の増殖を抑えることで病気の進行を遅らせる治療法です。
効果の持続期間には個人差があり、前立腺がんの悪性度(グリソンスコア)が高い方、PSA値が当初から高い方、すでに転移がある方では比較的早期に効果が減弱する傾向があります。一方で、治療を継続することで10年以上も病気の進行がみられない患者さんもいます。
多くの場合、治療開始から数年以内に「去勢抵抗性前立腺がん」と呼ばれる、ホルモン療法が効きにくい状態に変化することがあります。その際には、新規ホルモン剤(エンザルタミド、アビラテロンなど)や抗がん剤(ドセタキセルなど)への変更が検討されます。
主な副作用
重大な副作用
ビカルタミドで注意すべき重大な副作用は以下の通りです:
| 副作用 | 症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 劇症肝炎・肝機能障害・黄疸 | 全身倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる) | 定期的な肝機能検査が必要。症状出現時は直ちに医療者に連絡 |
| 間質性肺炎 | 息切れ、空咳、発熱 | 症状出現時は直ちに受診 |
| 心不全・心筋梗塞 | 胸痛、息苦しさ、むくみ | 高齢者では特に注意が必要 |
| 白血球減少・血小板減少 | 発熱、出血しやすい | 定期的な血液検査でモニタリング |
よくみられる副作用
承認時までの臨床試験3,927例のうち、951例(24.2%)に副作用が認められました。主な副作用は以下の通りです:
- 乳房圧痛:14.9%(女性化乳房として軽度の痛みや腫れ)
- 乳房腫脹:5.4%
- 肝機能検査値の上昇:AST上昇4.1%、ALT上昇3.8%、γ-GTP上昇2.1%
- ほてり:2.2%
- 勃起力低下:1.1%
- 性欲減退
これらの副作用は、男性ホルモンの作用を抑えることに伴って起こる症状です。非ステロイド系の抗アンドロゲン薬であるビカルタミドは、男性ホルモンの分泌自体を完全には抑制しないため、性機能への影響は比較的軽度とされています。
LH-RHアゴニストとの併用時の副作用
LH-RHアゴニストと併用した臨床試験では、66.7%の患者さんに副作用が認められました:
- ほてり:16.7%
- 血中アルカリフォスファターゼ増加:10.8%
- 貧血:8.8%
日常生活への影響と対策
身体的な影響
ビカルタミドを含むホルモン療法を受ける患者さんが日常生活で経験する可能性のある変化には以下があります:
女性化乳房:乳房が女性のように膨らむことがあります。軽度であれば特に治療は不要ですが、痛みが強い場合は担当医に相談してください。
ほてり・のぼせ:いわゆる更年期症状のような症状が現れることがあります。症状が強い場合は漢方薬などで対応できる場合があります。
倦怠感:疲れやすくなることがあります。無理をせず、適度な休息を取ることが大切です。
心理的な影響
性機能の変化(勃起力低下、性欲減退)は、患者さんの心理的な負担となることがあります。これらの症状について、医療スタッフや家族とコミュニケーションを取ることが重要です。必要に応じてカウンセリングを受けることも検討してください。
長期使用における注意点
ホルモン療法を長期間続けると、以下のような問題が生じることがあります:
- 骨密度の低下:骨粗しょう症のリスクが高まります。必要に応じてビスホスホネート製剤などの骨粗しょう症治療薬が併用されることがあります。
- 体重増加・肥満:食事管理と適度な運動が推奨されます。
- 心血管系疾患のリスク:定期的な健康チェックが重要です。
保険適応と費用・自己負担
保険適応について
ビカルタミドは前立腺がんの治療薬として保険適用されています。医師の診断のもと、適切な使用であれば健康保険が適用され、患者さんの自己負担は通常3割です(年齢や所得により1割または2割の場合もあります)。
薬価と費用
2026年1月現在の薬価は以下の通りです:
| 製品 | 薬価(1錠あたり) | 1か月の薬剤費(30日分) |
|---|---|---|
| カソデックス錠80mg(先発品) | 150.3円 | 4,509円 |
| ビカルタミド錠80mg(後発品) | 110.9円 | 3,327円 |
※1日1回1錠(80mg)服用の場合
患者さんの実質的な自己負担額
3割負担の場合、後発品を使用すると1か月の薬剤費の自己負担は約1,000円程度となります。ただし、これに診察料や検査費用が加わります。
ビカルタミドは通常、LH-RHアゴニストなどの注射薬と併用されることが多く、その場合の注射薬の費用も考慮する必要があります。LH-RHアゴニストは1回の注射で1か月または3か月持続するタイプがあり、薬剤費は1回あたり数万円となりますが、高額療養費制度の対象となります。
高額療養費制度の活用
がん治療では医療費が高額になることがあるため、高額療養費制度を活用することで自己負担を軽減できます。所得に応じて月額の自己負担上限額が設定されており、多くの場合、月額自己負担額は数万円以内に収まります。
事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、医療機関の窓口での支払いが自己負担限度額までとなり、一時的な高額支払いを避けることができます。
使用時の注意点
慎重投与が必要な患者さん
重度の肝機能障害のある方は、ビカルタミドの消失半減期が延長する可能性があるため、慎重な投与が必要です。用量調整は推奨されていませんが、定期的な肝機能検査と慎重な経過観察が求められます。
併用注意の薬剤
ビカルタミドは、以下の薬剤との併用に注意が必要です:
- ワルファリンカリウムなどの抗凝固薬:抗凝固作用が増強する可能性
- 血糖降下剤(トルブタミドなど):血糖降下作用に影響を及ぼす可能性
- 抗てんかん剤(カルバマゼピンなど):作用に影響を及ぼす可能性
- 免疫抑制剤(シクロスポリンなど):作用に影響を及ぼす可能性
現在服用中の薬がある場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。
定期的な検査の重要性
ビカルタミドによる治療中は、以下の検査を定期的に受けることが推奨されます:
- PSA検査:治療効果の判定に最も重要です。PSA値が低下している間はがん細胞が抑えられていると考えられます。
- 肝機能検査:肝機能障害の早期発見のため、定期的な検査が必要です。
- 血液検査:白血球や血小板の減少がないか確認します。
- 画像検査:CT検査や骨シンチグラムなどで、がんの進行や転移の有無を確認します。
抗アンドロゲン薬除去症候群について
ビカルタミドを含む抗アンドロゲン薬を長期使用した後、薬が効かなくなってPSA値が上昇することがあります。この場合、逆説的ですが、抗アンドロゲン薬を中止することでPSA値が低下することがあります。これを「抗アンドロゲン薬除去症候群(AWS)」と呼びます。
PSA値が上昇した際には、担当医と相談のうえ、薬剤の変更や中止を検討することがあります。
治療継続の判断と今後の選択肢
ビカルタミドによる治療は、投与12週後を抗腫瘍効果観察の目安として、期待する効果が得られない場合や病勢の進行が認められた場合には、手術療法など他の適切な処置を考慮します。
また、ホルモン療法が効かなくなった去勢抵抗性前立腺がんに対しては、より強力な新規ホルモン剤(エンザルタミド、アビラテロンなど)や、抗がん剤(ドセタキセル、カバジタキセルなど)、PARP阻害剤などの治療選択肢があります。
前立腺がんの治療は日々進歩しており、患者さん一人ひとりの状況に応じた最適な治療法を選択することが可能です。治療方針については、担当医とよく相談し、納得のうえで決定することが大切です。
まとめ
ビカルタミド(カソデックス)は、前立腺がんの治療において重要な役割を果たす抗アンドロゲン薬です。男性ホルモンの働きを阻害することでがん細胞の増殖を抑制し、多くの患者さんで有効性が認められています。
LH-RHアゴニストなどとの併用によるMAB療法は、日本では標準的な治療法として広く実施されており、特に進行がんや転移のある前立腺がんに対して有効です。
主な副作用として肝機能障害や女性化乳房などがありますが、定期的な検査と適切な対応により、多くの患者さんが日常生活を送りながら治療を継続できます。費用面では後発品の利用や高額療養費制度の活用により、経済的負担を軽減することが可能です。
がん治療においては、医師や医療スタッフとのコミュニケーションを大切にし、疑問や不安があれば遠慮なく相談することが重要です。
参考文献・出典情報
1. 医療用医薬品:カソデックス - KEGG MEDICUS
2. 前立腺がん 治療 - 国立がん研究センター がん情報サービス
4. カソデックス錠80mgの基本情報 - 日経メディカル処方薬事典
5. 前立腺がんの薬物療法 - 順天堂大学・順天堂医院泌尿器科
6. 前立腺がんに対するホルモン療法について - 中野駅前ごんどう泌尿器科

