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乳がんホルモン療法とは
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
乳がんの治療において、ホルモン療法(内分泌療法)は重要な役割を担っています。2026年現在、乳がん患者さんの約70%がホルモン受容体陽性であり、ホルモン療法の対象となります。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、本来、女性らしい体つきを作ったり、骨を丈夫にしたりする大切な物質です。しかし、乳がん細胞の中には、このエストロゲンを栄養源として増殖するタイプが存在します。
ホルモン療法は、エストロゲンの分泌を抑えたり、エストロゲンががん細胞と結合するのを防いだりすることで、がん細胞の増殖を抑制する治療法です。抗がん剤と比較して副作用が穏やかであり、長期間にわたって継続できることが特徴です。
ホルモン療法の目的
ホルモン療法には、大きく分けて3つの目的があります。
1つ目は、手術後の再発予防です。術後補助療法として5年から10年間にわたってホルモン療法を継続することで、再発リスクを約50%減少させることができます。これは抗がん剤の再発予防効果(約20%)と比較しても効果が高いことがわかっています。
2つ目は、手術前の腫瘍縮小です。術前ホルモン療法により、腫瘍を小さくして乳房温存手術が可能になるケースや、手術による切除範囲を縮小できるケースがあります。現在、術前ホルモン療法は主に閉経後の患者さんに対して行われています。
3つ目は、進行・再発乳がんの治療です。すでに転移や再発が見つかった場合でも、ホルモン療法によってがんの進行を抑え、生存期間を延長することが期待できます。
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ホルモン療法の適応ケース
ホルモン療法が有効なのは、がん細胞にホルモン受容体が存在している「ホルモン受容体陽性」の乳がんです。
ホルモン受容体には、エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PgR)の2種類があります。針生検や手術で採取したがん組織を免疫染色して調べ、ERとPgRのどちらか一方でも陽性であれば、ホルモン療法の対象となります。
2026年現在の診断基準では、乳がん細胞全体の1%以上が染色されれば陽性と判断されます。わずか100個のがん細胞のうち1個でもホルモン受容体を持っていれば、ホルモン療法を行う意義があるということです。
ただし、ホルモン受容体陽性であっても、以下のような場合には抗がん剤治療が優先されることがあります。
| 状況 | 治療方針 |
|---|---|
| 広範な肝転移や肺転移がある | 抗がん剤を優先 |
| 臓器障害が重篤 | 抗がん剤を優先 |
| がんの増殖速度が速い | 抗がん剤を優先または併用 |
| ホルモン受容体の発現が弱い | 抗がん剤との併用を検討 |
使われるホルモン薬の種類
ホルモン療法で使用される薬剤は、閉経前と閉経後で異なります。これは、エストロゲンが体内で作られる場所と方法が、閉経の前後で変化するためです。
閉経前に使用される薬剤
閉経前の女性では、エストロゲンは主に卵巣で作られます。
抗エストロゲン薬
タモキシフェン(商品名:ノルバデックス)やトレミフェン(商品名:フェアストン)は、がん細胞のエストロゲン受容体と先に結合することで、エストロゲンの作用をブロックします。閉経前・閉経後を問わず使用できる薬剤です。
LH-RHアゴニスト製剤
ゴセレリン(商品名:ゾラデックス)やリュープロレリン(商品名:リュープリン)は、脳下垂体に働きかけて、卵巣を刺激するホルモンの分泌を抑えます。これにより卵巣からのエストロゲン産生が抑制されます。皮下注射として、4週間または12週間に1回投与します。
閉経後に使用される薬剤
閉経後は卵巣機能が低下し、副腎や脂肪組織でエストロゲンが作られます。
アロマターゼ阻害薬
レトロゾール(商品名:フェマーラ)、アナストロゾール(商品名:アリミデックス)、エキセメスタン(商品名:アロマシン)は、男性ホルモンをエストロゲンに変換する酵素「アロマターゼ」の働きを阻害します。閉経後の患者さんに対して、タモキシフェンよりも再発予防効果が数%高いことが確認されています。
進行・再発乳がんに使用される薬剤
完全エストロゲン受容体分解薬(SERD)
フルベストラント(商品名:フェソロデックス)は、エストロゲン受容体を完全に破壊することで作用します。通常、タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬の効果が不十分な場合に使用されます。筋肉注射として投与します。
CDK4/6阻害薬との併用
2026年現在、パルボシクリブ(商品名:イブランス)、アベマシクリブ(商品名:ベージニオ)、リボシクリブなどのCDK4/6阻害薬をホルモン療法と併用することで、進行・再発乳がんの治療効果が向上することが確認されています。
最新の薬剤開発
2025年から2026年にかけて、新しいタイプのホルモン療法薬の開発が進んでいます。
経口SERD(カミゼストラント、ギレデストラント)は、日本も参加する国際共同臨床試験が進行中です。PROTAC(ベプデゲストラント)は、エストロゲン受容体の分解を促進する新しい作用機序を持つ薬剤で、ESR1変異陽性の患者さんに対する有効性が示されています。
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ホルモン療法の治療期間
術後補助療法としてのホルモン療法は、長期間の継続が必要です。
従来は5年間が標準とされてきましたが、最近の研究により、術後5年以上経過してから再発する「晩期再発」が少なからず存在することがわかってきました。
| 治療期間 | 効果 | 対象 |
|---|---|---|
| 5年間 | 再発を約47%抑制 | 基本的な治療期間 |
| 7年間 | 十分な効果が得られる | 閉経後・中等度リスク |
| 10年間 | 晩期再発のリスクを低減 | リンパ節転移陽性などハイリスク |
2026年現在、日本乳癌学会のガイドラインでは、患者さんの再発リスク、副作用の程度、年齢などを総合的に判断して、5年から10年の治療期間を個別に決定することを推奨しています。
治療期間の決定には以下の要素が考慮されます。
再発リスクが高い要因として、腫瘍が大きい(2cm以上)、リンパ節転移がある、グレード(悪性度)が高い、HER2陽性、Ki-67(増殖マーカー)が高いなどがあります。これらの要因が複数ある場合は、10年間の治療が推奨されることが多くなります。
一方、高齢者や副作用が強く出ている患者さん、再発リスクが低い患者さん(腫瘍が1cm以下でリンパ節転移なしなど)では、5年間で終了することも検討されます。
LH-RHアゴニスト製剤の投与期間については、2年から5年、または閉経年齢(平均52歳)まで継続するという考え方があり、まだ定まった見解はありません。
進行・再発乳がんに対するホルモン療法では、効果がある限り継続することが原則です。耐性が生じて効果がなくなった場合は、別のホルモン療法や抗がん剤治療に切り替えます。
薬剤耐性への対応
ホルモン療法を続けていると、がん細胞が薬剤に対する耐性を獲得することがあります。これを「内分泌療法抵抗性」といいます。
耐性が生じる主な機序として、以下が明らかになっています。
ESR1遺伝子変異により、エストロゲン受容体自体が変異して、ホルモン療法薬が効きにくくなります。PI3K/AKT/mTOR経路の活性化により、エストロゲン以外の経路でがん細胞が増殖するようになります。CDK4/6の活性化により、細胞周期が制御できなくなり、がん細胞が増殖し続けます。
これらの耐性機序に対応するため、2026年現在、以下のような治療戦略が用いられています。
二次治療の選択
初回治療(CDK4/6阻害薬+ホルモン療法)の効果がなくなった場合、遺伝子変異の有無や初回治療の効果、がんの大きさや増殖速度、副作用の程度を考慮して次の治療を選択します。
ESR1変異陽性の場合は、経口SERDやPROTACなどの新薬が有望視されています。PI3K/AKT/mTOR経路が活性化している場合は、PI3K阻害薬やAKT阻害薬(トルカプ)、mTOR阻害薬(アフィニトール)をホルモン療法と併用します。
遺伝子変異が陰性で、初回治療の効果があった場合は、CDK4/6阻害薬の継続使用や別のホルモン療法への変更を検討します。
新薬の開発状況
2025年7月の日本乳癌学会では、ベプデゲストラント(PROTAC)がESR1変異陽性において従来のフルベストラントよりも有効であることが報告されました。
イムルネストラント(経口SERD)+ベージニオの併用療法は、ESR1変異の有無にかかわらず高い効果を示し、2026年以降の承認が期待されています。
ホルモン療法の費用と保険適用
ホルモン療法は全て保険適用となっており、3割負担で治療を受けることができます。
薬剤別の費用目安
| 薬剤 | 5年間の総医療費 | 3割自己負担額 |
|---|---|---|
| タモキシフェン単剤 | 約85万円 | 約30万円 |
| アロマターゼ阻害薬単剤 | 約100万円 | 約30万円 |
| LH-RHアゴニスト(2年間) | 約130万円 | 約40万円 |
CDK4/6阻害薬(ベージニオなど)を併用する場合、薬剤費だけで月額約15万円(3割負担で約4.5万円)かかりますが、高額療養費制度を利用することで、月々の自己負担を抑えることができます。
高額療養費制度の活用
高額療養費制度は、1ヵ月間(1日から末日まで)の医療費が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。自己負担限度額は年齢と所得によって異なります。
70歳未満で年収約370万円から770万円の世帯では、自己負担限度額は月額約8万円(多数該当の場合は約4.4万円)となります。ただし、2025年8月から制度改定により、段階的に自己負担額が引き上げられます。
2026年8月からは、年収600万円の世帯で月額約8.8万円(多数該当約4.9万円)となり、2027年8月からはさらに引き上げられる予定です。
高額療養費制度を利用する際のポイントとして、事前に「限度額適用認定証」を取得し、医療機関の窓口に提示することで、支払い時点から限度額までの支払いで済みます。同一世帯で複数の医療費がある場合、合算して計算できます(70歳未満は各21,000円以上)。過去12ヵ月で3回以上限度額に達した場合、4回目から「多数回該当」として限度額が下がります。
その他の経済的支援
医療費控除として、年間の医療費が10万円(所得200万円未満の場合はその5%)を超えた場合、確定申告で所得控除を受けられます。傷病手当金として、会社員の方が治療のため仕事を休む場合、最長1年6ヵ月間、給料の約3分の2の手当を受けられます。
ホルモン療法の副作用
ホルモン療法の副作用は、抗がん剤とは性質が異なり、長期的な影響が特徴です。
主な副作用と対策
| 副作用 | 症状 | 対策 |
|---|---|---|
| 更年期様症状 | ホットフラッシュ、発汗、不眠 | 漢方薬、適度な運動、環境調整 |
| 関節痛・筋肉痛 | 関節のこわばり、痛み | 鎮痛剤、適度な運動、温熱療法 |
| 骨密度低下 | 骨粗鬆症、骨折リスク | カルシウム・ビタミンD摂取、運動、デノスマブ投与 |
| 倦怠感 | 体のだるさ、疲労感 | 適度な休息、軽い運動 |
| 子宮内膜への影響 | 不正出血(タモキシフェン) | 定期的な婦人科検診 |
骨密度の管理について、アロマターゼ阻害薬を服用する場合、治療開始前と年1回の骨密度検査が推奨されます。Tスコアが-2.5以下になったら、デノスマブ注(商品名:プラリア)を6ヵ月に1回投与することで、骨折リスクを軽減できます。
副作用との付き合い方として、ホルモン療法は年単位で継続する治療なので、副作用を我慢しすぎないことが大切です。つらい症状があれば、医師、看護師、薬剤師に遠慮なく相談してください。
治療の中断は再発リスクを高めることが研究で示されていますので、副作用への対処法を見つけながら、できる限り治療を継続することが推奨されます。
まとめ
乳がんのホルモン療法は、ホルモン受容体陽性の患者さんにとって、再発予防や進行抑制に大きな効果がある治療法です。
2026年現在、治療の選択肢は大きく広がっており、CDK4/6阻害薬の登場により進行・再発乳がんの予後が改善しています。また、経口SERDやPROTACなどの新薬も近い将来、日本で使用できるようになる見込みです。
治療期間は個々の患者さんの状況に応じて5年から10年と幅がありますが、継続することが何より重要です。副作用への適切な対処と高額療養費制度などの経済的支援を活用しながら治療を進めていきましょう。

