06.食道がん

食道がんの内視鏡治療(内視鏡による手術)とは

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食道がんの内視鏡治療

こく早期の食道がんには、「内視鏡的切除術(内視鏡を使った切除手術)」が適応となります。内視鏡的切除術には、病変部を把持(しっかりつかむこと)もしくは吸引し、スネアと呼ばれるワイヤーにより切除を行う「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」とITナイフやフッキングナイフなどを用いて、広い病変部の一括切除が可能な「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」の2つの方法があります。

内視鏡的切除で粘膜が持ち上がらない場合や、出血傾向のある患者さんに対しては、そのほかの内視鏡治療として、光線力学的治療(PDT)やアルゴンプラズマ凝固療法(APC)などが行われます。

■内視鏡的切除術の進め方

「食道癌診断・治療ガイドライン」に従うと、内視鏡治療に適している食道がんは次のような条件にあてはまるものになります。

・がんの深さが粘膜固有層にとどまるもの(リンパ節転移の可能性がほとんどない病変)
・切除後の瘢痕狭窄を回避するため、食道壁の周在性3分の2周以下のもの

しかし、内視鏡による診断や超音波内視鏡検査などを駆使しても、がんの深さや脈管侵襲(リンパ管や血管へのがんの浸潤)の有無などを、治療前に100%診断するのは不可能です。そのため内視鏡を使って切除した病変部は、顕微鏡の検査(病理検査)で詳しく調べ、その後の治療方針を再度、検討することになります。

・内視鏡的粘膜切除術(EMR)とは?

まず、内視鏡で「ルゴール液(ヨード液)」を散布し、がんの広がりをきちんと確認します。次に、がんの近くの粘膜下層に生理食塩水などを注射して病変部を持ち上げます。持ち上がった病変部を把持もしくは吸引し、スネアと呼ばれるワイヤーをかけます。そのまま、病変部を締め上げたあとに高周波電流で止血しながら病変部を焼き切ります。

・内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

内視鏡治療の技術は年々進歩しており、従来の内視鏡的粘膜切除術(EMR)できれいに取り切れなかった大きさのがんも、新しい技術(ESD)で切除ができるようになってきています。

EMRでは1度に切除できる範囲が、スネアの大きさ(直径約2cm)に限られますので、2cmより大きながんだった場合には、数回に分けて切除することになります(分割切除)。

その場合、切除したものは細切れになってしまうので、がんがきちんと取り切れているか、また、どの程度の深さまでがんが浸潤しているかを病理検査で正確に調べることはやや難しくなります。

この問題を解決する方法としてESDが開発されました。ESDでは、まず、内視鏡でがんの切除範囲を決めるために、電気メスで、がんの周囲にマーキングを行います。EMRと同じように粘膜下層へ生理食塩水やヒアルロン酸などを注射して、がんやその周囲を盛り上げます。マーキングした外周をナイフのような器具(ITナイフやフッキングナイフなど)で、ぐるりと切開します。

カメラの先端に装着した透明フードで持ち上げながら粘膜下に挿入したナイフで、粘膜下の組織ごとがんを剥ぎ取ります。多くの場合、ひとまとまりでがんを切り取るため、より正確にがんの浸潤の程度を調べられます。

ただし、ESDは高い技術を必要とする新しい治療法であり、一部の医療機関でのみ行われています。切除にかかる時間も長く、粘膜を剥がす範囲も大きくなるため、出血や穿孔(穴があく)などの危険性が高くなります。また、食道がんのESDは胃がんなどに比べ、より技術的な習熟を要します。

食道がんのESDによる治療を希望する場合は、確実な技術を持った内視鏡専門医を紹介してもらうのがよいでしょう。

■内視鏡治療と病理検査

内視鏡で切り取ったがんを回収して、顕微鏡で詳しく調べることを「病理検査」といいます。この病理検査では、

・がんの深さ
・がんが残っていないか
・がん細胞がリンパ管や血管の中に進入(脈管侵襲)していないか

などを調べます。がんが粘膜固有層までにとどまっていれば、リンパ節転移の可能性はほとんどないため、治療は終了します。しかし、がんが残っている場合や脈管侵襲がある場合は、追加治療が提案されます。

また、がんが粘膜下層まで達している場合は、リンパ節に転移している可能性が50~60%ほどあります。浸潤がごく浅ければ経過観察で済むことがありますが、もう少し深い場合には追加治療が行われます。

追加治療としては放射線療法や化学放射線療法、あるいは手術療法などがあげられます。どのような追加治療を行うかは、患者の年齢や体力を含めた全身状態などを総合的に判断したうえで決めることになります。

■食道がん内視鏡治療の合併症

内視鏡治療の際に出血、穿孔(食道に穴があく)、狭窄などの合併症の起こる頻度は2%ほどです。

・出血
がんの周りには、がんに栄養や酸素を運ぶ細かい血管が発達しています。そのため、がんのEMRは出血しやすいといえます。通常、電気メス(高周波電流によって発生する熱で凝固して止血)や、クリップ(血管を挟んで止血)や止血鉗子などを用いて、止血しながら切除を行います。それでも、2%ほどの患者さんで治療後に出血が見られます。そのときには、再度、内視鏡を使って止血を行います。

・穿孔
穿孔とは、食道の壁に穴があいてしまうことです。EMRでは、高周波電流でがんの部分を焼き切ります。食道の壁は薄いため、がんの大きさや深さによっては、切除のときの"やけど"によって、食道の壁に穴があくことがあります。

あいた穴から食道や気管の周りや皮膚の下に空気がもれ出します(縦隔気腫と皮下気腫)。あいた穴は多くの場合にはクリップによって閉じることができます。小さな穴があいて発熱がある場合は、絶食と点滴、抗生剤投与などの治療によって3~4日間で改善します。

しかし、発熱が改善しないで、食道の周りに膿がたまる場合は、生命にかかわる状態になる可能性があります。そのような場合には、ドレナージ(膿をからだの外に排出すること)や手術が必要になります。

・狭窄
EMRにより広い範囲(周在性4分の3周以上)で粘膜の欠損が生じた場合は、食道の狭窄が起こりやすくなります。狭窄が起こると、食べものが食道を通りにくくなります。そのような場合は治療後、1週間後ぐらいに内視鏡を使ってバルーン(風船のようなもの)などで食道を拡張することがあります。

以上、食道がんの内視鏡治療に関する解説でした。

がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。

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本村ユウジ

「がんの研究と、患者さんのサポート」を2008年から続けています。現在まで、3,000名を超えるがん患者さんやご家族をサポートしてきました。詳しいプロフィールはこちら。

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